旧暦の作り方〜元になる数字


数字がたくさん出てきますが、あまり怖がる必要はありませぬ…


(1)まず、1年の長さを知る

 1年の長さが実は365日よりちょっと長いことは、かなり古くから判明していました。地面に棒を立て、正午の影の長さを測ると、1年周期で影が伸びたり縮んだりします。一番影が長くなる日(冬至)から、次にまた一番長くなる日までの日数・時間を計ればよいので、原始的手法でも比較的正確に割り出せます。太陽の周りを地球が1周するのと同じこの長さは「1太陽年」と呼ばれます。1太陽年は約365日と4分の1、もっと正確に言うと365.2422日となります。太陽暦では、この数字がすべての起点になります。


(2)そして1月の長さを知る

「月」という言葉は、地球の周りを周回する衛星の名であると同時に、一定時間をあらわす時間用語でもあります。その由来は、月の満ち缺けが約30日程度の周期で繰り返すことから来ています。古代人にとって365日という周期は生活の上では長すぎ、約30日で出たり消えたりを繰り返す月の方が身近なサイクルでした。これも完全に月が消えた状態から月が現れる瞬間から、次にまた月が現れる瞬間までを計測すればよいので、簡単です。一回死んだ月がまた新しく生まれ変わるため新月と呼ばれ、月が新たに立つことから「つきたち」→「ついたち(朔日)」という言葉が生まれました。一方、月が満ちた状態は「もちづき(望月)」と呼ばれます。そこで、これらの一周期のことを「1朔望月(さくぼうげつ)」と呼びます。1朔望月の長さは29.530589日になります。太陰暦ではこの数字がすべての起点になります。


(3)年と月のどっちが大事?

 以上の、1太陽年と1朔望月の長さは、どの文明でもだいたい正確に計測されていました。問題はどちらを重視するかです。12朔望月の長さは29.5306×12で約354日になり、1太陽年とは誤差11日と近くなるため、「1年は12ヶ月である」という認識も、だいたいどの文明でもありました。しかし、ずれた11日を放っておけば、どんどん狂っていってしまいます。

 そこで、月を重視するか、年を重視するかで暦が変わってくるのです。

 月を重視する太陰暦では、話は簡単です。朔望月の方を優先します。1朔望月は約29日半ですから、30日の大の月と29日の小の月をだいたい交互においていけば完成です。1年の長さは30×6+29×6=354日となります。しかし、この暦では1年が11日づつずれていき、やがて17年もたてば夏と冬が逆転します。よって、この暦は季節がない熱帯地方などでしか残りませんでした。

 年を重視する太陽暦では季節はずれません。しかし、1年365日を12で割ると30日強。31日の大の月と30日の小の月を適当に配置することになりますが、この場合は「月」という名にもかかわらず朔望月とは何の関係もなく、月齢(月の満ち缺け具合)と日にちがずれていきます。約30日という便利なサイクルの目安として月齢が使えないというのも不便な話だったのです(現代人はあまり気にしませんが。15日に十五夜でなくても…)。


(4)そこで太陰太陽暦

 そこで、太陰暦の月のサイクルを保ちつつ、季節がずれないように太陽暦で補正する、折衷案が生まれました。それが「太陰太陽暦」です。太陰太陽暦の最大の特徴は「閏月(うるうづき)」の導入です。

 さて、現在の暦では「閏年(うるうどし)」というものがあります。皆さんご存じでしょう。1太陽年は365.2422日ですから、1年を365日とすると0.2422日余ってしまいます。これが4年経つと0.2422×4=0.9688日。つまりほぼ一日狂ってしまいます。そこで4年に1回、366日の年を設けて、これを調整するのです(ただし、これだとまだ0.0312日ずれるので400年に3回は365日に戻しますが)。この場合、1日追加するだけなので、正確には「閏日(うるうび)」と言うべきなのですが、慣習的に閏年と呼んでいます。

 これに対して閏月は、月そのものを追加します。つまり閏月がある年(これを閏年という)は、1年が13ヶ月となります。そのため、太陰太陽暦の1年は最短で353日、最長で384日などと30日以上の開きがあることになります。

 上記のように、12朔望月の長さは約354日であり、1太陽年は365.2422日なので、その差は約11日となります。よってほぼ3年経つと、差が1ヶ月くらいになりますね。約3年に1回は閏月があるということになります。

 実際には、もうちょっとだけ正確に把握されていました。1朔望月(29.5306)と1太陽年(365.2422)の最小公倍数を探っていくと、235朔望月=6939.6884と、19太陽年=6939.6018日がほぼ同じこと(誤差は0.08日=約2時間しかありません!)が分かります。19太陽年というのは、標準の1年=12ヶ月で考えると、19×12=228ヶ月となり、上の235ヶ月とは7ヶ月分違うということになります。つまり、19年ごとに7回の閏月を置けば、季節と月がずれずにすむということが見つけられました。

 閏月は、置かれた場所によって呼び名が変わります。例えば三月と四月の間に挿入された場合、「閏三月」と呼ばれ、九月と十月の間に置かれれば「閏九月」となります。問題は、この「閏月」をどうやって配置するかです。でたらめに挟み込むわけにはいきません。世界各地の文明で、この閏月の置き方(「置閏法」といいます)こそが太陰太陽暦のもっとも重要な要素となりました。


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