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| 4人の人物が困惑した顔で額を突き合わせていた。いや、一人に関しては本当に困惑してるかどうかは分からない。表情が見えないからだ。その小柄な人物はベッドから無理やり引きはがしたらしいシーツを頭からすっぽり被っている。他の三人の困惑顔の原因はそのシーツを被った人物にあるようだった。 「しかし、そうは言われてもなぁ・・・・・・」 初老の男が表情そのままの困惑した声を出した。この村の村長だ。 「それは、村長さんも急にこんなことを聞かれても困るとは思うんですが・・・・・・」 困惑顔の三人の一人、ジョウイがやはり困ったような声を出した。 「他に思い当たることがないんです。」 「しかし・・・・・・そのシーツの下は具体的にはどんな風になってるのかね?」 「あ、それ、私も知りたい。」 村長の声とナナミの声が重なった。 「フーロン、どうなっちゃったの?どうして私には見せてくれないの?」 ナナミの心配と苛立ちの入り交じった声にジョウイはフーロンの方を見た。シーツを頭から被って目だけを覗かせたフーロンは首を思いっきり左右に振った。 「そんなに醜い姿なのかの・・・・・・」 「え?そうなの?・・・・・・だ、大丈夫だよ、お姉ちゃんはそんなの何とも思わないからね!!」 その言葉に思わずジョウイは片手で口を押さえ横を向いた。肩が小刻みに震えている。それを見てナナミはさらに慌てたように声を上げた。 「大丈夫、大丈夫!ちゃんと治してあげるから! 」 ジョウイの肩の震えがさらに激しくなる。くぐもった声が漏れてきた。 「・・・・・かわいそうに・・・・・・男とはいえそんなに酷い姿になっちまうとは・・・・・・」 ジョウイが嗚咽を堪えていると勘違いした村長が実際はどんな風か知りもしないのに痛ましそうに言った。ただ一人ジョウイが実は笑いを堪えていることに気がついているフーロンはシーツの下から恨めしげな目でジョウイを睨みつけた。 ナナミが部屋に戻ったあと、ジョウイはごねるフーロンを説き伏せてナナミの部屋に行った。もっとも一緒に行った訳ではない。着替える時にフーロンから部屋から蹴りだされたジョウイがナナミのいる部屋で待っていると、暫くして下手くそな幽霊の扮装のような格好をしたフーロンが部屋に顔を出した。勿論ナナミは大騒ぎをしてシーツを引っぺがそうとしたが、フーロンが全身で抵抗したために挫折した。ジョウイもその必死になってナナミに見られまいとするフーロンの様子に思わず同情して、むくれるナナミを宥めてそのまま3人で少し話しあった。 そして一つだけ「もしかしてこれが原因かな? 」と言うのを思い付いた。 前の日のモンスターとの戦いの時、あの今際の際にモンスターが吐き出し、フーロンの頬を傷つけた何か。あれが原因ではないのか? 最初にこれを言い出したのは勿論フーロンでナナミなどは何故ここであのモンスターの話が出てくるのか全く分からないと言った顔をしていたが、フーロンの「猫耳」と「尻尾」を見ているジョウイはすぐにその意見に同意した。 あのモンスターのことなら村長が詳しく知っているのではないかと言い出したのはナナミで、この村では数年周期であのモンスターの害に悩まされているらしい。 フーロンもジョウイも初対面の人間と話すのは案外苦手で、社交辞令以外のことはあまり喋らないのだが、人懐っこいナナミは気さくにこの村の人間とも色々話していたらしく、あの猫型モンスターがこの地方特有のものだというのも知っていた。言われてみればフーロンもジョウイもあのモンスターを見るのはこの地が初めてだった。 それならば村長に直接聞いてみようと言うことになり冒頭のシーンのような状況になった訳である。 なにせ肝心のフーロンが頑なに自分の姿を見せるのも知られるのも拒むので、聞く方はどこか奥歯にものが挟まったような質問になり、聞かれる方は何が何だか分からないといったことになってしまった。 それでも何処か的外れな同情をした村長が必死になって考えた揚げ句、そう言ったことなら村外れに住む自分の母親が詳しいと思い出した。そこに案内して欲しいと頼んだジョウイに村長は苦笑交じりにそれは勘弁して欲しいといい、簡単な地図を描いてくれた。どうやら母親が苦手らしい。それでも母親届けて欲しいと暖かそうなひざ掛けを三人に預けた。苦手なだけで離れて暮らしている母親を心配はしているらしい。そのことをほほ笑ましく思いながら村外れに向かったのだがその途中ジョウイとナナミはえらく恥ずかしい思いをすることになった。 三人の先頭をすたすたと歩くフーロンの後ろをジョウイとナナミがなんとも恥ずかしそうに歩く。そんな三人を村人は唖然として見ている。ついに耐えかねてジョウイがフーロンに声をかけた。 「・・・・・・フーロン・・・・・・」 「何? 」 「どうしてもその格好じゃなきゃ駄目なのかい? 」 「ジョウイ、そっとしといてあげなよ。一番辛いのはフーロンだよ?」 「そうかもしれないけどさ・・・・・・」 ナナミに小声で言われてジョウイは前を歩くフーロンを見た。フーロンは村長の家で被っていたシーツをそのまま被って村の中を歩いているのだ。ナナミはフーロンの変化を知らないので「止めて欲しいなー」と思いつつも黙っていられるようだが、ジョウイは違う。あのシーツの下で人に見られたくないのは耳と尻尾だけだと知っている。小さく溜息をついてもう一度フーロンの方に目をやったジョウイは一瞬固まった。次の瞬間駆け出してフーロンに並ぶ。 「フーロンっ! 」 「だから何? 」 「尻尾!尻尾が動いて出てる! 」 小声で言うジョウイに思わずフーロンが立ち止まった。しばらくじっとしてシーツの中で何かやっている。 「フーロンどうしたの?! 」 ナナミが駆け寄ってきた。 「ん、何でもない。」 どうやらシーツの下で動く尻尾を押さえるのに成功したらしいフーロンがナナミに目だけを向けた。そのまますたすたと歩き出す。 「ねぇ、ジョウイ。今のなぁに? 」 「今のって? 」 「シーツの下からのぞいてた金茶の毛むくじゃらの。」 「えっと・・・・・・」 「それにフーロン、どんな姿になってるの?そんなに酷いの?」 小声で畳みかけるように聞いてくるナナミにジョウイが困っていると急にフーロンが振り返った。 「ばらしたら酷いよ?ジョウイ? 」 「酷いって・・・・・・」 「元の姿に戻るまで毎晩今朝みたいに苛めてやる。」 その言葉にジョウイは思わず赤面した。 「フーロン!何てこと言うんだ!それに何でこの距離で聞こえたんだよ?!」 「どうやら聴覚が鋭くなってるみたいだねぇ、この姿になって。ヒソヒソ話し、全部聞こえてるからねっ!」 「ねぇねぇ」 赤面したままでいるジョウイをナナミがつついた。 「今朝何があったの?フーロン凄く拗ねてるみたいだけど、どうして?」 「ナナミ・・・・・・お願いだよ・・・・・・これ以上は聞かないでくれ・・・・・・」 ぐったりとして言うジョウイをナナミはキョトンと見た。そして三人は村人の好奇の目に晒されながら村外れに向かったのだった。 村外れの村長の母親が住んでいる小屋は小さいけれどしっかりした造りで、部屋の中にはハーブの良い香りが満ちていた。三人からひざ掛けを受け取り、事情を聞いた後この老婆が最初に吐いた言葉は「あの馬鹿もんがぁ!」と言う怒声だった。びっくりしてる三人に慌てて「あんたらを怒った訳じゃない」と言った後例の猫型モンスターに付いて教えてくれた。 何でもあのモンスターは必ず自分を倒した相手に祟るらしい。だからこの村では猫型モンスターの被害が出始めると必ず弓使いを数人雇っていたそうだ。祟るといっても一人が限界でしかもトドメをさした相手だけらしい。だから弓で離れた場所から同時に何人かで射ぬくのだ。そうすれば誰がとどめを刺したか分からないから祟られることもない。どうしても弓使いが見つからないときは数人で同時に殴りかかっていたらしい。そうすればやはり誰がとどめを刺したか分からず、祟られることもない。 この言葉にジョウイの目が動いた。フーロンの目も動いた。視線の先でナナミが冷汗を垂らしている。 「ナナミ・・・・・・」 「えっとぉ・・・・・・知ってたらちゃんとやったもん! 」 二人同時の低い声に思わずナナミが言い返した。 「何を言っておるのかね?まったく、弓使いが見つからん時は必ず雇った人間をこの婆の所に一度寄越せとあれほど言っておいたのに、あのうつけ者がぁ!」 三人のやり取りに全く気付かすに老婆は怒っている。 「あ、あのぅ。それで、呪いを解く方法、あるんですか?」 ナナミが二人の視線に押されるように老婆に聞いた。この言葉に老婆はシーツを被ったフーロンの方に目をやった。 「おう、おう、可哀想に。この坊やが何も知らずトドメを刺してしまったのだね?」 そう言ってマジマジとフーロンを見る。 「・・・・・・どうやら坊やはとても強いようだね。祟りの何割かをはねのけておるようだ。もしかしたら呪いが解けるかもしれん。」 「本当ですか?! 」 「ほんとに?! 」 ジョウイとナナミの声が重なった。フーロン自身は黙って老婆をみている。 「普通やつに呪われた奴は完全に姿が変わって人のように歩くことは出来ないんのじゃが、坊やはどうやら人の姿をかろうじて保っておるようじゃ。どの位の変化が起きておるのかね?」 「・・・・・・え? 」 「どの位呪われておるか分からんのではそれを解く方法も分からんではないか。ちぃっとそのシーツの下を見せてごらん。」 その言葉に何故かジョウイが慌てた。 「そ、それはちょっと・・・・・・」 「何故かね? 」 「いや、だってフーロン、服着てないし・・・・・・」 「ジョウイの馬鹿っ!何考えてんだ!!服くらいちゃんと着てるっ!」 「え?そうなの?だってじゃあしっ・・・・・」 尻尾は?と言いかけたところで気がつくと目の前にシーツから覗いたフーロンの目があった。 「それ以上言ったら酷いよ? 今ここで今朝みたいに苛めてやろうか?」 次の瞬間ジョウイはフーロンから離れて壁に張り付いていた。 「ナナミを連れて部屋から出るっ! 」 びっと扉の方を指さして言うフーロンに思わず従ってしまうジョウイ。 「ねぇねぇ、今朝ホントに何があったの?フーロン、どうなってるの?」 「頼む、ナナミ・・・・・・・本当に聞かないでくれ・・・・・・」 部屋から出され、扉が閉まった途端に聞き始めたナナミにジョウイは疲れた声で言った。 (それでなくても拗ねたフーロンは扱いにくいんだから・・・・・・) 心の中で呟いたジョウイに老婆の大爆笑が聞こえてきた。 「何、何? 」 鍵穴から中を覗き込もうとしたナナミをジョウイが慌てて引き戻す。少しして老婆の笑い交じりの声が聞こえて来た。 「わしも何人か奴に祟られた奴を見たがお前さんほど似合っとる奴は初めてじゃ。」 「・・・・・・全然嬉しくありません・・・・・・」 フーロンの不機嫌な声が聞こえてくる。 「・・・・・・ねぇ、ジョウイ?フーロン、どんな姿なの?」 「ジョウイ!言ったら酷いからね!! 」 扉のこちらで言ったナナミの声が聞こえたのかフーロンが大声でジョウイに言った。 「ナナミ!お婆さん!お願いです!これ以上フーロンを刺激しないでくださいっ!」 ついにジョウイは悲鳴を上げた。 少しして憮然としたフーロンとまだ目に涙を溜めている老婆に部屋に招き入れられた二人は、フーロンにかけられた呪いは案外簡単に解けると言われた。何でも「祟り」の9割りをフーロンは跳ね返しているらしい。村で簡単に手に入るもので元に戻れるという。 「何がいるんですか? 」 勢いこんで聞くナナミとジョウイに老婆はまだ笑いを含んだ目をまたシーツを被ってしまったフーロンに向けた。 「この坊やは外には出たくないだろうからお前さん達、お使いをしておくれ。あとの準備はこの婆がしてやろう。」 そう言って何か書きつけた紙を二人に渡した。それを見て二人は怪訝そうな顔になる。 「村の魚屋に売っとるわ。今は旬だから安いじゃろ。必ず生きたまま買ってくるんじゃよ。」 「魚屋・・・・・・? 」 フーロンが不安そうな目になった。 「ほれ、日が暮れる前に行ってくる!ついでに川魚の活きのいいのを4匹買ってきておくれ。婆の手料理を御馳走してやるから。」 そのまま質問をする間もなくナナミとジョウイは外にやられ、老婆は鼻歌を歌いながら台所にはいってしまった。ひとり残されたフーロンはひしひしと感じる嫌な予感に冷汗を流していた。 言われたものを買ってナナミとジョウイが戻ったとき小屋からは良い匂いが漂っていた。 「お婆さん、買ってきたよ! 」 「おう、おう、ちょうどよい頃合いじゃ。」 老婆が台所から顔を出した。ナナミが手に持っていた小さなお椀の中を覗き込む。 「おお、活きが良いのが手に入ったの。上々じゃ。」 そう言うと台所にもどりなにやら小さな鍋を持ってくる。 「あ、良い匂い・・・・・・」 「そうじゃろ?婆は料理上手で評判だからの」 そのやり取りをじりじりした面持ちで聞いていたフーロンが口を挟んだ。 「あの・・・・・・その魚、どうするんですか? 」 「お前さんに食ってもらう。」 フーロンがすぅーっと青ざめたのがジョウイには見えた。 「あの、ずいぶん綺麗な魚ですけど・・・・・・食べるんですか? 」 お椀の中の魚は透き通っていてジョウイやフーロンの小指よりも小さい。ガラス細工のような身体に黒い大きな目が愛らしい。 「これは玻璃魚と言っての。この湖の名産じゃ。普通この辺じゃ卵でとじて食べる。」 フーロンがちょっとほっとした顔になった。 「お前さんには生きたまま食ってもらうがの。」 あっさりと言った老婆の言葉にフーロンがまた青ざめた。この言葉にはナナミとジョウイも慌てた。 「生きたままって・・・・・・」 「あぁ、知らんかの?踊り食いとかいうそうじゃが・・・・・・」 「踊り食いって・・・・・・」 「通は好んでそうやって食べるらしいぞ?それに呪いを解くためには必要なことじゃ。」 「踊り食いが?! 」 ナナミとジョウイの声が重なった。 「そうじゃ、あのモンスターはもともと猫の分際で人になりたがった奴が変じたものでの」 だから変なこだわりがあり、生の魚は食べないらしい。盗んだ魚もちゃんと火で焼くという。だから生の魚を食べると言う行為、特にこの愛らしい魚の生きたまま食べる「踊り食い」という行為を嫌う。だからもしあの猫型モンスターに祟られて人の意識が強く残っているのなら、あえて「踊り食い」をして身体にのこったモンスターの怨念が嫌がって逃げるようにするのだという。 筋が通っているのだか何だかよく分からない老婆の説明に三人は思わず沈黙した。最初に口を開いたのはナナミである。 「えっと、薬だと思えば平気だよね? 」 「そ、そうだね!ナナミの料理が平気なんだからどんなのでも大丈夫だよね!」 「どういう意味よ? 」 思わず続けて言ったジョウイにナナミが突っ込む。 「まぁ、このままじゃ生臭いから、ほれこうしてこの汁に潜らして」 そう言って老婆は小さな網の付いたお玉で魚を少しすくって見せ、老婆が作ったらしい出し汁に潜らせて飲み込んだ。 「まぁ、最初は気色悪いかもしれんが慣れれば旨いぞ?」 「だって!フーロン。これで元に戻れるんだから! 」 ナナミが元気よく言ったが肝心のフーロンは黙って魚の入った椀を見つめている。 「どうした?どうしても駄目だったら嬢ちゃんの言う通り薬だと思って目を瞑って一息にぐっと。」 それでもフーロンは微動だにせず椀の中を見つめている。どうやら涙ぐんでいるようだ。 「・・・・・・そう言えば前にもフーロン魚食べなかったことがあったっけ・・・・・・」 「なんじゃ、坊主、魚は嫌いか?好き嫌いはいかんぞ。」 「え?そうだっけ?嘘、嘘。フーロンちゃんとお魚食べてたよ?」 三人の視線がフーロンに集まった。フーロンは相変わらず固まっている。少しして老婆がボソリと言った。 「もしかして坊主。魚と目が合うと食べられなくなるクチか?」 思わずジョウイは片手で口を押さえた。傍目にもシーツの下のフーロンの耳が情けなさそうに伏せられたのが分かった。 「・・・・・・もしかして・・・・・・図星・・・・・・」 笑いを堪えて呟いたジョウイの方をフーロンはチラっと恨みがましい目で見た。 「え?え?」 その呟きはナナミにも聞こえたらしく、ジョウイとフーロンを交互に見比べた。それから少し考えた後「フーロン、ごめん!」と呟くといきなりフーロンが被っているシーツを引っ張った。 シーツの下から情けなさそうに猫耳を伏せたフーロンが現れた。尻尾もへたりと身体に巻き付いている。思わず笑いを堪えて横を向いたジョウイの耳にナナミの能天気な声が聞こえた。 「なんだぁ。必死で隠すからどんなかと思った。食べられないならいいじゃない、無理しなくたって。似合ってるもん。可愛いじゃない!」 「ナナミ!それを言っちゃ駄目だ!」 慌ててジョウイが叫ぶのとフーロンがお椀をガシッと掴むのは同時だった。そのまま一息にお椀の中身を飲み込むと両手で口を押さえた。喉仏がごくりと動く。 痛いような沈黙が流れた。 ポトリとフーロンの両わきに何かが落ちた。皆の目がそれに集中する。猫の耳の形をした毛皮が落ちている。フーロンが片手で自分の耳に触れた。そのときそれまで情けなさそうにフーロンに巻き付いていた尻尾が力を失ってへにゃりと落ちた。フーロンは耳に触れていた手を背後に回してはたはたと腰の辺りを叩いている。 「呪いが解けたようじゃの・・・・・・」 その言葉を聞いた途端フーロンは片手で口を押さえたまま仰向けにひっくり返った。 夜、そのまま気絶してしまったフーロンは少しして気がついたが、動く気力がないらしく老婆の小屋に三人で泊まることになった。 「大丈夫かい? 」 寝床に横たわったまま腕を目に当てているフーロンにジョウイが心配そうに聞いた。 「・・・・・・生きてる・・・・・・」 「生きてるって・・・・・・」 思わずジョウイは苦笑した。 「お婆さんが作ってくれた食事が残ってるけど食べる気力、あるかい?」 「・・・・・・食べ物の話しはしないでくれ・・・・・・」 「だろうね・・・・・・しかしフーロンが魚食べない理由があれだとは・・・・・・」 そう呟いてジョウイはくすくす笑った。 「煩いな、笑うな・・・・・・」 「だって、以外と言うか、なんというか。案外子供だったんだね」 「目が合わなきゃ食えるんだ、君みたいにニンジンはすべからくダメって訳じゃない。」 「だから何で死んでる魚と目があうんだよ。」 「合ってしまうものしょうがないだろ?あぁもう、でも当分魚は見たくもない・・・・・・」 いつもなら当の昔に反撃に出ているだろうに、げんなりとした様子で呟くフーロンにさすがにジョウイも同情した。 「まぁ、そのうち良いこともあるさ。」 「良いことって? 」 「まぁ、取り敢えずナナミは戦闘中に手を抜かなくなるだろうし。」 「・・・・・・別にいいよ、ナナミは今まで通りで・・・・・・」 「そうなのかい?でも今回ナナミが手を抜いてなきゃ君はあんな目にはあってなかったんだよ?」 少しからかうように言ったジョウイにフーロンは少しの間答えなかったが、やがてポツリと言った。 「生きて笑っててくれればそれでいい・・・・・・」 ジョウイは思わずフーロンの顔を見た。けれど腕に隠れてフーロンの表情は見えなかった。 「フーロン? 」 「ナナミはいつか行っちゃうから。僕を・・・・・・僕らを置いて誰かと行くと思うから。だからそれまで笑っててくれればそれでいい・・・・・・」 「ナナミは君を置いていったりはしないと思うよ・・・・・・」 「・・・・・・うん・・・・・・それでも・・・・・・きっといつかナナミは行くよ・・・・・・だから・・・・・・」 「だから? 」 それっきりフーロンはまた黙ってしまった。少ししてフーロンが真剣な声を出した。 「ジョウイ・・・・・・お願いがあるんだけど・・・・・・」 「何?」 「当分の間魚が出たら代わりに食べて・・・・・・」 何か真面目なことを言われるかと少し身構えていたジョウイは思わずズッコケた。 「フーロン・・・・・・」 「代わりにニンジン食べてあげるから。」 「どうしようかな・・・・・・」 「あぁ、ジョウイが苛める・・・・・・僕は不幸だ・・・・・・」 「誰が不幸だ!日頃散々僕を酷い目に合わせてるくせにっ」 「あぁ、あんなこと言ってる。やっぱり不幸だ・・・・・・」 「いつまで拗ねてる!」 二人の子供じみた言い合いは月が高い所に上るまで続いていた。 |
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