After Day 7〜Syren Garden〜前編

 
 そのことは分かっていたし、気付いていたし、しょうがないことだとも、気にしては、咎めだててはいけないことだと、そう納得していたはずの事だった。それなのに何故あんなことを言ってしまったのか、それが今でもフーロンには分からない。


「フーロン、見つかった?」
「フーロン、帰ってきたかい?」
 ナナミとジョウイの声が重なった。お互いの言葉を聞いて双方共に落胆した表情になる。ジョウイは疲れきったようにナナミの前の椅子に座り込んだ。
「もう!こんなに心配させるなんて!戻ってきたらただじゃおかないんだから!」
 ナナミが怒った口調で言った。しかしその言葉の勢いと裏腹に表情は心配そうだ。血の繋がりはないとはいえ、本当に仲の良い姉弟なのだ。
「一体何だってこんなことに……」
 ジョウイは机に突っ伏してナナミに聞こえないように呟いて昨日、フーロンが宿を飛び出す前の会話を思い起こしていた。


 珍しくフーロンが言い出してやって来たこの海辺にある小さな街を気いった三人は少し長くここにいることにした。幸い安くて良い宿が見つかったから寝る場所はこの宿でいいだろうということになったが、その代わりに問題になったのが宿泊費のことだ。旅の間の短い間の宿泊ならば旅の途中で遭遇したモンスターとの戦いで得たものだけで十分だが、ひとつの街に長逗留するとなると勝手が違ってくる。街中でモンスターとの戦闘もないだろうから、ナナミも含めてそれぞれに仕事を探すことになった。できれば三人一緒に働ける方が良かったが、そうそう都合の良い仕事があるはずもない。取りあえずナナミはナナミ、フーロンとジョウイは二人それぞれに仕事を探すことになった。
 この街は小さな、けれど活気のある港町だったからフーロンとジョウイは案外簡単に仕事を見つけることが出来た。荷揚げされた荷物の運搬だ。
「本当にこの街に腰を落ちつけるんなら、もっと別の仕事を探した方がいいんだろうけどね。」
「うん、でも短期であれだけ貰えるって割がいいね。」
「それに来週からでいいって言うのも嬉しいね。」
「そうなの? 」
「だってこの街をゆっくり見物できるだろう? それまでの間。」
「そうだね。」
 そんな話をしながら街を見物して上機嫌にしていたはずのフーロンは、ジョウイが気がついたときにはもう不機嫌に黙り込んでいた。
 それでも宿でナナミと合流したときには普通に話していたし、「何か機嫌が悪そうだな」とは思ったがジョウイはそれ以上気にしてはいなかった。フーロンは比較的穏やかな安定した気質だが、たまにはそう言うこともあるんだろう、とそのぐらいに思っていたのだ。だから食事を終えて、フーロンと部屋に引き上げた後も普段と少し様子が違うこと気付かなかった。
いつもなら真っ直ぐに窓の方に行き窓を開けるフーロンが黙ってベッドに腰を下ろした。いつもと違う行動に多少違和感は感じたものの、ジョウイはいつも通りに棍を手に取ると手入れを始めた。その日の食事のことや街の様子など話し掛けていたが少ししてフーロンからの返事が「うん」とか「そうだね」と言った相槌だけでろくにジョウイの言葉を聞いていない事に気がついた。改めてフーロンの方を見ると何か考え込むような顔をしている。
「フーロン?どうしたんだい?」
「……え?」
 訝しげに聞いたジョウイに少し間を置いてフーロンが返事をした。顔を上げてジョウイの方を見る。
「何か気になる事でもあるのかい?」
「……別に……なんで?」
「なんか考え込んでるみたいだから。」
「そう?気のせいじゃないかな……」
「……そうかい?」
 そのままジョウイがフーロンの方を見ていると珍しくフーロンの方が目をそらした。「なんか息苦しいね」と呟きながら窓を開けに行く。そのまま黙って窓の外に目をやっていた。
「きれいな街だよね。」
 棍を置き、フーロンの横に立ってジョウイは言った。フーロンは返事をせず黙ったまま外を見ている。ジョウイは沈黙しているフーロン方を見てギクリとした。
 フーロンは今まで見たこともないような暗い瞳をしていた。
「フーロン?どうかしたのかい? 」
「・・・・・・え?何か言った? 」
 フーロンが今初めて気が付いたかのようにジョウイの方を見た。
「様子が変だよ。何か気になることでもあるのかい?」
 そう問い掛けながらジョウイは今日一日の事を思い返したみた。けれどフーロンの様子が変わりそうなことは何一つ思い付かない。
「・・・・・・別に・・・・・・特に何もないけど・・・・・・」
 ジョウイから目をそらしてもそもそとフーロンが答えた。相変わらず暗い瞳のまま外を見ている。
「何かあったのなら言ってくれないか?頼むから・・・・・・」
「・・・・・・明日、何処に行こうか・・・・・・」
「フーロン! 」
 はぐらかすように言うフーロンにジョウイの語気が思わず強くなった。そのことに気付いているのかわざと気付かない振りをしているのかフーロンは言葉を続けた。
「ここ、案外名所が多いみたいだよ。どうせそんなに長くはいないんだから沢山見とこうよ。」
「フーロン! 」
 思わず更に強い口調で言ってしまってから呼吸を整えた。
「言いたくないのなら無理には聞かないけど、でも言ってることが矛盾してる。」
 なるだけ怒った口調にならないように気をつけながらジョウイは言った。
「ここには少し長くいようって仕事まで見つけたんだろう?」
「長いって言っても一年も二年もいるわけじゃないだろう?見つけた仕事だって短期じゃないか。」
「そうだけど・・・・・・」
 困惑したように言うジョウイの方を相変わらず見ないままフーロンが言った。
「ここで色んな物を見て・・・・・・それから次は何処に行く?」
「次? 」
「ジョウイは何処に行きたい? 」
「・・・・・・別に何処でも・・・・・・もともとあてのある旅でもないし・・・・・・」
「見てみたいものとか行ってみたいところ、ないのかい?

「それは・・・・・・」
 急に言われても思い付かない。あの戦争の前、まだキャロにいたころは色んな所に行ってみたいと思っていた。父の書斎の中の様々な古い本に描かれている広い世界。けれど急に「行きたいところはないのか」と言われてもとっさには出てこない。それどころではない時間が長すぎたから。
 ふと気が付くとフーロンがジョウイの事を真っ直ぐに見ていた。暗い瞳には何か更に痛みのようなものまで加わっていた。
「・・・・・・ジョウイ、正直に答えてもらえる?」
 暗い、押し殺した口調でフーロンが言った。
「君が一番欲しいものは何? 」
「きゅ、急に言われても・・・・・・一体どうしたんだい?

「分からない?僕は分かるよ、自分が欲しい物も君が本当に欲しいものも。」
 そう言うと乱暴にジョウイを引き寄せた。一瞬ジョウイは「またこの展開か」と思ったが、心の深い所でいつもと違うと何かが警鐘を鳴らしている。
「フーロン? 」
「僕は君が欲しい。」
 暗い瞳のまま耳に触れんばかりに唇を近づけてフーロンが言った。
「ナナミも失いたくない。君は? 」
 ジョウイは言葉が出なかった。今何か間違ったことを言ったら何か取り返しがつかないことになりそうな気がした。
「どうして答えないの? 」
 ジョウイを捕らえるフーロンの腕に力が加わった。
「心にジル皇女のことを秘めながら僕に抱かれる君は何が欲しいの?

 ジル皇女、と言う言葉にジョウイは思わずフーロンを突き飛ばしていた。フーロンはジョウイの方を見なかった。暗い瞳を床に向けている。
「フーロン!一体何を! 」
「ハルモニアに行っちまえ! 」
 そう叫ぶとフーロンはトンファーを掴み部屋から飛びだした。そしてジョウイはフーロンを追うことができず呆然と立ち尽くしていた。
 そのまま、まんじりともせずに朝を迎えた。ジョウイはもしかして帰って来るだろうかと部屋で待っていたがフーロンは戻らず、ナナミが朝食に行くために迎えに来てしまった。しょうがないので正直に夕べ口喧嘩をしてフーロンは飛び出したっきり戻らないとナナミに話した。さすがにケンカの内容までは言いはしなかった。ナナミも喧嘩の内容までは聞こうとせず少し心配そうな顔で「何やってんのよ」と怒ったように言っていた。
 とりあえず部屋でぼんやりしていてもしょうがないし下の食堂で朝食を食べて、それでもまだフーロンが戻らないようなら探しに行こうと言うことになった。
 部屋から出るとき何気なく振り返ったジョウイは窓から見える景色が昨日迄の抜けるような青空ではなく、まるで何かを閉じこめる為の檻のような深い霧に沈んでいることに深い胸騒ぎを感じた。


 それからほぼ半日が過ぎていた。いつまでたっても戻らないフーロンをナナミとジョウイは探しに出たが、深い霧に閉ざされた街は昨日までの開放的な色を失い、初めて歩く街のようで勝手が違った。お昼頃に一度宿に戻り、フーロンが帰った時のためにナナミには宿に待機してもらってジョウイが一人で探しに出た。
 疲れ切り、もしかしたら帰っているかもしれないと淡い期待を抱いて帰りナナミの顔を見た途端に出迎えた言葉は「フーロン、見つかった?
」である。夕べの事を思い起こしながら疲労と心配と腹立ちとでジョウイは泣きたいような気分になった。それは半日ここでフーロンを待ち続けたナナミも同じらしく泣きそうな、それでいて腹立たしそうな、心配そうな何とも変な顔をしていた。
「小さな街なのにどうして見つからないんだろう・・・・・・」
「行きそうなところは全部探したんだよね? 」
「探せる所はね・・・・・・」
「探せる所は? 」
 訝しげなナナミの声にジョウイは顔をナナミの方に向けた。
「海の方には行けなかったんだ。港の近くの酒場を見てみようと思ったんだけど。あそこ泊まれるし。」
「・・・・・・え? 」
「この霧が出てる間は危険だから海の方は封鎖するんだってさ。」
「・・・・・・ジョウイ、フーロンが飛び出したの、霧が出る前?

「たしかそうだったと思うけど・・・・・・」
 その言葉を聞いた途端、ナナミの顔が真っ青になった。
「ジョウイ、何で海の方を封鎖するか知ってる? 」
「いや?でも危ないからだろう?確かに一歩先も見えないような霧だし。」
「違うの、そうじゃないんだよ。魔物が出るんだって。」
「魔物? 」
 ジョウイは思わずナナミに向き直った。
「今の時期の霧の間だけ魔物の住み処が海の上に出てくるんだって。それで人を引き寄せてその人を襲うんだって。」
 真っ青な顔でナナミが言った。
「海の方の人は窓も戸も堅く閉じて開けないんだって。」
「フーロンだって馬鹿じゃない。きっと酒場の宿でじっとしてるよ。」
 沸き上がるどす黒い不安を押し殺すようにジョウイは言った。けれど自分で自分の言葉を疑っている。
「だって喧嘩したんでしょう?フーロン、怒ってたんでしょう?!

 ナナミが立ち上がりながら悲鳴のような声を上げた。
「フーロン、そういうとき一人でいようとするんだよ。知ってるじゃない!

「ナナミ!落ち着いて! 」
「フーロンも知らないんでしょう?!魔物のこと?!

 ジョウイは立ち上がったナナミを無理矢理座らせた。
「海の方を探してくる。ナナミはここで待ってて。」
「一緒に行く! 」
「駄目だ。自分を探してナナミに何かあったらフーロンは絶対自分を許さない。ナナミはここにいて。」
「それはジョウイだって同じだよ。」
「ハルモニアに行けって言われたよ。」
 ジョウイは自嘲気味に笑った。
「ハルモニアに行っちまえって、そう言ってフーロンは飛び出したんだ。」
 ナナミの目が大きく見開かれた。
「だからフーロンにとって僕はナナミほどには大事じゃないんだよ。」
「幸せになって欲しいからだよ。」
 だから僕のことはそんなに心配しなくていいんだよ、そう言いかけた言葉に涙ぐんだナナミの声が重なった言った。
「ジョウイは本当はどこかで穏やかに暮らすのが一番の夢でしょう?誰か家族とあったかい家を作るのが一番の望みでしょう?」
 ジョウイは驚いてナナミを見た。
「そんなことないよ。今だって信じられないくらい幸せだよ。」
「今のジョウイが辛いのを我慢してるとかそんなことを言ってるんじゃないんだよ。でもね、本当はハルモニアでジルさんやピリカちゃんと穏やかに暮らすのがジョウイの望みに一番近いんじゃないかって、フーロン、一回だけそんなことを言ったことがあるんだよ。」
 ジョウイは呆然とナナミを見つめた。ナナミはポロポロと涙を流していた。
「フーロンがジョウイの事、大事に思ってないわけないじゃない。何でそんなこと言うの?

 泣いているナナミを見ながらジョウイは混乱していた。フーロンはいつもそんなことを考えていたのか。でもそれにしたって何故急にあんなことを言い出したのだろう。そんなことを考えながらジョウイはナナミの顔を覗き込んだ。
「やっぱりナナミはここで待ってて。」
「ジョウイ! 」
「確かに僕は暖かい穏やかな暮らしに憧れているよ。でも今の生活だって同じくらい望んでいたものなんだよ。」
 ナナミがジョウイの顔を見る。
「ここで待ってて。でないと張り合いがないから。」
「張り合い? 」
「無事に帰ってこようって言う張り合い。」
 そう言ってジョウイはナナミに笑いかけた。
「待っててくれる人がいるっていうのは信じられない位いいもんなんだよ。」
 ジョウイは棍を持つとそのまま振り返らずにもう一度霧の街へと飛び出していった。


 港に着いたときジョウイは息を切らしていた。少し後ろを振り返りすまなそうな顔になる。
(すみません。フーロンを見つけたらお詫びに行きますから・・・・・・)
 心の中で呟いて首をすくめる。海の方へ抜ける道には見張りが立っていて興味本位で海の方へ行こうとする人間達を止めていた。もちろんジョウイも止められたのだが「はい、そうですね」と引き下がるわけにはいかない。ジョウイの少し前に見張りに暴力を振るって通っていった男達がいたとかで見張りをしていた男も機嫌が悪くジョウイの話しをまともには聞いてくれない。しょうがなくなってジョウイは隙を見て棍で男の鳩尾を突いて相手を気絶させた。もう一人の見張りが慌てて寄ってきたがそれには構わずに駆け抜けた。後ろから怒りとそれから制止の声が聞こえたが追ってくる様子はなかった。
(僕には色仕掛けで穏便にって技は使えないからな・・・・・・)
 昔、燕北の峠を抜けた時のことを思い出して小さく溜息をついた。あの時も霧の化け物が出ていたのだ。
 ジョウイは小さく頭を振ると気持ちを過去から今に戻した。海の方にフーロンがいるかどうかは分からない。取りあえずいなければそれはそれで構わない。何処に行ったのかと言う疑問は残るが危険と分かっている場所で見つかるよりはマシだ。ジョウイは顔を上げると霧の中に何か影が見えないかどうか目を凝らしながら歩き始めた。
 この街の港は活気があり船の出入りは多かったが、その割に小さかったから港そのものはすぐに全部見てしまった。フーロンは見つからず、ジョウイは気が付くと港を離れて砂浜の方に来ていた。一歩足を進めるたびに白い砂がきしきしと音を立てた。霧の向こうに風と波に洗われた岩が奇妙な影を映していてモンスターが現れたかと時折心臓が止まりそうになった。
(フーロン、何処だ?)
 浮かび上がる不安を押し殺しながらジョウイは霧の中を歩き続けた。どの位歩いただろうか、不意にジョウイは怒号に様なものを聞いた気がした。足を止め耳をすます。空耳ではなく、男達の大声が聞こえた。どうやら何かと戦っているようだ。ジョウイは思わず駆け出していた。そこにフーロンがいるかどうかは分からない。けれど知らない顔も出来ない。激しく動いている複数の影が見えたとき急に強い風が吹いた。霧がはれ、明るい月の光が浜辺を照らす。
「?!フーロン! 」
 ジョウイの視線の先ではフーロンが数人の男達を相手に立ち回りを演じていた。ジョウイの声にフーロンの動きが一瞬止まりジョウイの方を見る。その一瞬を男達は見逃さなかった。
「このくそガキ!貰ったぁ! 」
 大きく剣を振りかぶりフーロン目掛けて振り下ろす。フーロンはとっさにトンファーで防御したが相手の勢いにそのまま吹き飛ばされる。
「フーロン! 」
 思わず膝をついたフーロンに殺到する男達に向ってジョウイは突進していた。ジョウイの声に何人かの男が振り返る。
「何だ?!助っ人か?! 」
「ジョウイ!来るなっ! 」
 男達の声とフーロンの叫びが重なる。棍を構えたジョウイが男達の一人と向き合ったその時また強く風が吹いた。砂が巻き上がりその場にいた全員が思わず目を覆う。風がやみ、砂が地に落ち着いたときそれに変わって歌声が聞こえてきた。それは高く低く誘うように美しく響いている。ジョウイが思わず辺りを見回すと海の上に白い宮殿が浮かび上がっていた。歌声はそこから響いてくる。視線を目の前の男達に戻してジョウイはぞっとした。一瞬前まで殺気立ってフーロンとジョウイに剣を向けていた男達は皆剣を下ろしている。霞のかかったような目をしてぼんやりと立っていた。フーロンも青白い顔で男達を見ている。二人の目の前で男達がゆらりと動いた。ゆらゆらと海の方に向って歩き出す。男達が波打ち際につき、そのまま海の上の宮殿目指して歩いてゆく姿を見てジョウイは思わず目を見開いた。白亜の宮殿の後ろには月が浮かんでいた。その光を受け宮殿の影が青白く浜辺に向って伸びていた。男達はその影の上を、波の上を歩いている。
(あれが魔物の城・・・・・・)
 美しく響いてくる歌声を聞きながらジョウイは思わず後ずさっていた。はっとしてフーロンを振り返る。フーロンはジョウイを見ていた。その目を見てジョウイはほっとした。フーロンは魅入られてはいないらしい。安堵してジョウイがフーロンに近寄ろうとしたとき急にフーロンが立ち上がった。ジョウイから顔を背けるとそのまま海の上の宮殿目掛けて駆け出してゆく。
「フーロン?! 」
 思わず叫んだジョウイの声が聞こえないのかフーロンはそのまま海の上に走り出してゆく。
「フーロン!待つんだ! 」
 ジョウイも思わずフーロンを追って走り出していた。浜辺を抜け、海の上を駆け抜ける。
 ジョウイが宮殿の中に駆け込んだとき歌声が止んだ。ゆっくりと霧が戻ってくる。白亜の宮殿が霧に紛れ消えてゆく。風に散らされた霧が完全に戻ったときには浜辺にはもう何事もなかったかのように波の音だけが響いていた。
 
 続く