Aqua Bless

 
「ああ、そりゃ止めたほうがいいのぉ・・・・」
「え?なんで?」
 露店の道具売りの老婆の言葉にナナミが思わず問い返してしていた。
「あそこは『人喰いの原』と言ってよく人が行ったきりで戻らんようになる。悪いことは言わん。ティントを抜けてお行き。」
 その言葉にナナミ達3人は思わず顔を見合わせていた。
「でも・・・・グリンヒルの方に抜けるにはその方向が一番早いって聞いたんですが・・・」
 躊躇いがちに聞くジョウイに老婆は首を振った。
「確かに一番早いって話だがの。じゃが3人に一人は必ず戻らん。止めておおき。」
 3人は老婆に礼を言い、薬草を一束買うと泊まっている宿屋の方に向かった。
 今3人はグラスランドとティントの間にある小さな村にいる。
 グラスランドを少しの間見て回り、じゃあ今度はトラン共和国に行こうかという話になった。一度デュナン地方に戻ることになるが、それならもう一度グリンヒルに行きたいとナナミが言い出し、フーロンとジョウイは一瞬困ったような顔をしたものの強固に反対する理由も見つからない。じゃあそうしようと言うことになったが、今度はティントを抜けるのは嫌だとフーロンが言い出した。あの戦争中に自分が出向いた所に行くのを渋るのはフーロンはジョウイ以上で、しかも言い出したら聞かない。しようがないので他のルートはないかとジョウイが聞いて回ったところ高原を抜けてゆくルートがあるという。3人ともその高原の話を聞くのは初めてで珍しいものでも見れるかと少し興味が湧いた。それで装備を買いそろえる傍らその高原の事を聞いて回っていたのだ。
「どうしよっか・・・・・」
 ナナミがフーロンの顔を伺いながら言った。フーロンは少し困ったような顔で黙っている。
「なんか嫌な名前だよね・・・・」
「・・・・・・・ティントを抜けよう・・・・・」
 溜息交じりにフーロンが言うの聞いてジョウイが思わず言った。
「まだあの高原が危ないっていうのはあのお婆さんに聞いただけだから、もう少し聞いてみようよ。」
「でも・・・・・・」
「本当に危ないなら誰もこのルートを言ったりしないと思うよ。宿屋の御主人ならもっと別のこと知ってるかもしれない。」
「・・・・・ごめん・・・・」
 ティントを抜けようとは言ったものの、本当はよほど嫌だったのだろう、フーロンはほっとしたように小声で言った。
 宿に着いて3人で主人に聞いてみると、大柄でヒゲのはえた熊のような大男の宿の主は声たてて笑った。
「あの婆さんの言いそうなこった。」
「じゃあ嘘なの?」
 ナナミの問い掛けに親父は笑ながら首を振った。
「いや、本当だ。あそこは『人喰いの原』って名前だよ。」
「じゃぁ・・・・」
「あそこはこの辺にゃ珍しく下草が厚く繁っててな、地面が見えないんだが所々大穴が開いてるのさ。」
「大穴?」
 昔、ティントが今の位置に鉱山を発掘する前に坑道が掘られていた場所なのだそうだ。鉱石が出なくなりティントは今の位置に移ったがその後に穴だらけの山が残った。地下水がその穴を広げ、所々土地が陥没をおこしたりして出来たのが今のその高原なのだという。所々にその頃の坑道に落ち込む穴が開いているらしいが下草のせいで見えない。その穴に落ち込む旅人が昔は結構いて、そのために『人喰いの原』という名前が付いたのだと言った。
「じゃ、今は大丈夫なのね?」
 ナナミの問い掛けに親父は首を振った。
「今でも落ちる奴ぁいるな。」
「じゃあ、やっぱり危ないんだ・・・・」
「なんの準備もせずに行く間抜けが落ちるんだよ。こう・・・こん位の棒でな地面ひっぱたきながら歩けば穴が開いてる所は分かる。」
「だって!」
 ナナミが振り返り嬉しそうにフーロンに言った。フーロンは正直にほっとしたような嬉しそうな顔をしている。
「じゃあ予定通り明日出発しよう。」
 ジョウイもほっとしたように言った。フーロンが渋る道を選んでもロクな目にあったためしがない。
「しかし、お前さんらも変わってるねぇ・・・」
 親爺が3人を見ながらしみじみと言った。
「なんで安全なティントのルートじゃなくて危ない方を選ぶかね?」
 その言葉にフーロンはこっそりと首を竦めた。


 翌朝、早くに出発した3人は昼過ぎに『人喰いの原』に着いた。先頭にはジョウイが立ち用意した棒で慎重に地面を叩きながら進む。
「ねぇ、ジョウイ?」
「何だい?ナナミ?」
「何でわざわざ棒を用意したの?」
「何でって・・・・いるだろう?」
「だって・・・棍を使えばいいでしょう?」
 思わずジョウイは振り返った。
「僕の棍を地面ひっぱたくのに使えって?!」
「だって、ちょうどいいじゃない?」
「・・・・・ナナミ・・・・・」
 思わずフーロンがナナミの肩を叩いた。
「ナナミの三節棍で肩叩きしたら怒るでしょう?」
「怒る!」
「それと同じことだよ。」
「う・・・・・・」
「全くもう・・・・・」
 ジョウイは苦笑しながらまた地面に注意を向ける。下草はかなり厚いらしくまるで上等な絨毯の上を歩いているような感触だった。しばらくそのまま馬鹿なことを言い合いながらゆっくりと進んでいたが、そのうちジョウイが地面を叩くたびに首を傾げるようになった。
「どうしたの?」
「・・・・・ちょっと分かりにくい・・・・ここは避けよう・・・・」
「疲れたんだよ、代わろうか?」
「いや、僕がやった方がいいと思う。ここはなんか分かりにくいから。」
 フーロンの言葉にジョウイが答えると横からナナミが手を出してきた。
「私がやる!」
「ナナミ・・・僕が言ってたこと聞いてた?」
「ジョウイに出来るんだもん。私だって出来るよ!大丈夫、大丈夫!」
「・・・・ナナミ・・・・・」
「んもう!フーロンまで!大丈夫だって!お姉ちゃんを信じなさい!」
 そう言って地面をパンパン叩きながら歩き始める。フーロンとジョウイは苦笑しながらその後に続いた。
「大丈夫かな?」
「大丈夫じゃない?それに『お姉ちゃん』って言い出したらもう聞かないよ、ナナミ」
 そう言いながらナナミが歩いた後を進んでいく。
「ナナミ!疲れたら代わるから。」
「大丈夫!ここ、よけてね。」
 ナナミは真剣に地面を睨みつけている。そのまま結構な距離を稼ぎ、日が傾き始める頃には『人喰いの原』の半ば過ぎまで来ていた。
「今日はこの辺で野宿かな?」
「そうだね・・・ナナミ!」
「はぁい!ね?大丈夫だったでしょう?」
 ナナミは得意気にそう言って地面をパァンと叩くと弾むような足取りで一歩進んだ。フーロンとジョウイは苦笑しながらナナミが歩いた後に並んで足を進めた。
 ズッという音にナナミが振り返るとフーロンとジョウイの姿はなく、そこには大きな穴が一つ開いていた。


「ぷはっ」
 フーロンは水面に顔を出し大きく息を吸った。氷の様に冷たい水が身体を包んでいる。
「ジョウイ!何処にいる?無事かい?!」
「フーロン!」
 ジョウイの声が水音と共に近づいてくる。
「大丈夫かい?」
「うん、一体これは・・・」
「よくわからない・・・・」
「フーロンッ!ジョウイッ!」
 頭上から泣きそうなナナミの声が降ってきた。
「ナナミ!」
「フーロン?!無事なの?!ジョウイは?!」
「一緒にいるよっ!」
 ジョウイが叫び返した。
「ごめんね、私、気をつけてたつもりなんだけど・・・」
「ナナミのせいじゃない!」
 ぞっとしながらフーロンは叫び返した。ここは大空洞になっていた。大きな石の柱が何本も立ち、僅かばかりの天井を支えている。穴から入る僅かな光を頼りに観察すると天井のある部分とない部分は半々位だ。天井のない部分は下草が厚くまるで帆布のように絡み合って覆っており体重の軽いものならば十分に支えられそうだった。
「待ってて!助けを呼んでくるから!」
「ナナミ!ロープを貰ってきて!人を呼んできちゃ駄目だ、返って危ない!」
「でもっ!」
「近くに細いけど木が生えてたろう?それに結びつけるんだ!それからナナミも気をつけて!」
「わかった!」
 ナナミが去って行く気配がして静寂が空洞に訪れた。二人が立てる水音だけが響いている。
「どのくらいかかるかな?」
「・・・・・夜明け位までかかると思う。」
「それまでここに浮いていられるかな・・・・・」
 フーロンとジョウイは思わず顔を見合わせた。この冷たい水の中にそう何時間も浮いていられるとは思えない。
「どうする?」
「石の柱の方に行こう。最悪でも掴まっていられる。」
 二人は泳ぎ回って結局落ちた穴に比較的近い柱の側に落ち着いた。そう太い柱ではなかったがその周囲は遠浅の様になっていて水深が膝上程までしかなく、柱の側には僅かながら水を避けて座れる場所もあった。
「不幸中の幸い」
 苦笑しながら言いフーロンとジョウイは寄り添うように座った。地上では完全に日が落ちたらしくこの地下空洞の中は完全な闇が支配している。
「何してるの?」
 ごそごそと動く気配にフーロンが不審気に聞いた。
「ん、時間かかるみたいだからせめて上着くらい絞ろうと思って。このままこれを着てたら身体が冷えてしまう。」
「たしかに・・・」
 言われてフーロンも上着を脱いだ。絞って適当に石の柱に引っかける。そのまま上半身裸のまま二人は寄り添って座っていた。冷たい夜の空気の中で互いの体温だけが暖かく心地よい。
「ナナミ、大丈夫かな・・・・・」
「大丈夫だと思うけど・・・・・無茶してないかな?」
「あれで結構ナナミ慎重なとこあるから・・・でも・・・やっぱりティントを抜ければよかったね、ごめん」
「ここに落ちたのはフーロンのせいじゃないよ。」
「でも・・・・このルートを選んだのは僕の我が侭のせいだし・・・」
「気にしない、気にしない。あぁ、月が出たんだな・・・」
 言われてフーロンは自分たちが落ちてきた穴の方を見上げた。中空に真円の月が小さく見える。気がつけばさっきまでの闇は消え月光が作る薄い光が下草の隙間を抜けて空洞の中に満ちていた。
「綺麗だね・・・・」
「・・・うん」
 そう言ってジョウイの方に何気なく顔を向けたフーロンは思わず息を止めた。レース細工のような淡い光がジョウイを照らしている。濡れた髪がその光を淡く反射させながら白い肌に纏わりついている。
 なんとなくギクリとしてフーロンは目を反らした。
「どうしたの?」
 ジョウイの声が耳元で聞こえ寄り添った肌からは、ほんのりとした暖かさが伝わって来る。思わずフーロンは立ち上がっていた。
「フーロン?」
 不審げなジョウイの声には答えずにばしゃばしゃと水の中に突進する。
「どうしたんだよ?!」
「来んなっ!」
 追ってきそうなジョウイの気配にフーロンは言い返していた。
「来るなって・・・・急にどうしたんだってば!」
「来たら押し倒すっ!!」
「お、押し倒すって・・・・こんな時に何を・・・・・」
 思わずその場で立ち止まったジョウイの目の前でフーロンが水の中に倒れ込んだ。どうやら水と岩に足を取られたらしい。そのままその場に座り込んでいるフーロンの方にジョウイは思わず駆け寄った。
「大丈夫か・・・わっ!」
 心配して顔を覗き込んだジョウイの腕を掴むとフーロンはそのまま強く引っ張る。バランスを崩してジョウイも水の中に倒れ込んだ。
「な、何を!」
「・・・・・来たら押し倒すって言ったよね?」
 そう言うフーロンの瞳には常にない妖しい光が宿っている。
「こんな時に何馬鹿なこと言って・・・」
「僕もそう思う。だからジョウイから離れたのに、君の方から近づいて来たんだからね。」
「あんな風にいきなり走りだしたら誰だって・・・やめろってばっ!」
「いちいち欲情したから離れます、なんて言えるか、馬鹿。ジョウイが悪い、もう知らない!」
「言ってることが無茶く・・・うん・・・んんっ」
 なお何か言い募ろうとするジョウイの唇をフーロンは自分の唇で強引に塞ぐ。激しい水音が地下に響いた。


 月が中空に差し掛かるころナナミはようやく『人食いの原』を抜けた。考えた末、もと来た村の方に戻る事にしたのだ。穴の位置を確認するための棒を投げ捨てる。こんな物を持っていたら本気で走ることなどできはしない。昼間ここに着くまでだって結構時間がかかったのだ。これから助けを呼んで引き返すのにどれくらいかかるか分からない。フーロンは人を呼ぶのは返って危険と言ったがナナミ一人で二人を引き上げるのは無理だ。誰かこういったことに慣れた人を探して手伝ってもらわなくてはならない。
「待っててね、絶対助けたげるからね!」
 ナナミは泣きそうになりながら走り始めた。


 薄い闇の中に水の音と微かな喘ぎ声が響いている。脱がされた下着は石柱の方に投げ付けられていた。
「んん・・・・あぁ・・・・・」
 声を殺そうとするが胸の尖りを舌先で転がされる度に声が漏れる。響く水の音が水中でのフーロンの手の動きをいつも以上に感じさせる。
「・・・どうして我慢するの?ここには誰もいないよ?」
 耳朶を甘く噛むように囁かれ背筋何かがゾクリと走った。冷えきった手がのけ反った背を何度も優しく愛撫している。
「だ・・・って・・・あぁ!」
 背骨に沿って冷たい手で撫で上げられ思わず声が漏れた。空洞に響き渡る自分の声に羞恥で身体が熱くなる。水が緩やかに動いて今まで花心を愛撫していた手が双丘を割り最奥に触れた。冷たい指が入ってくる感触に思わず身体が竦む。
「・・・・力・・・抜いて・・・・・」
 耳元で囁くかすれた声にジョウイはふるふると首を振った。
「・・・・痛いよ・・・・今のままだと・・・・・・」
「う・・んんっ・・・・で・・も・・・・・あ・・・あぁっ!」
 自分の中を掻き回す感覚にジョウイ思わず声を上げフーロンにしがみついた。
「ジョウイ?」
「う・・・・あ・・・で・・きな・・・い・・・・」
「まだ・・・足りない・・・?」
「・・・な・・に?」
 その言葉と共にフーロンの唇が首筋を、胸を伝い下に降りてゆく。
 ポチャリ。
 水音と共に今まで冷たい水の中に放り出されていた花心が暖かいものに包まれる。フーロンが動く度に立てる水の音と別の湿った音が響き始める。
「ひっ!・・い・・・あぁっ・・・・・!」
 快楽から逃れたいのか、それとも逃したくないのかジョウイはフーロンの髪を強く握りしめた。そんなことにはお構いなくフーロンはジョウイは花心を強く吸い上げる。ジョウイの中を掻き回す指はいつの間にかジョウイの身体同様に熱くなっている。
「あ・・あぁ・・・あふっ・・・・」
 先端に軽く歯を立てられ思わず声を上げた。冷たいはずの水が既に心地よいほど全身が熱くなっている。ふいに花心がまた水の中に放り出された。
「フー・・ロン・・?」
「もう・・・大丈夫・・・?」
 潤んだ目でフーロンを見るジョウイに掠れた声で囁くとフーロンはそれまで掻き回していた指を抜いた。与えられていた感覚か一気になくなりジョウイは思わず溜息を漏らす。
「・・・あ・・ふ・・・・・っ!」
 次の瞬間自分の中に熱くて大きなものが入るのを感じてジョウイはのけ反った。水が緩やかに動く度に激しい衝動が突き上げてくる。
「い・・・や・・・あ・・あぁっ!」
「・・・ジョウイ・・・?」
 意味のなさない言葉を吐きながら縋り付いてくるジョウイの耳元でフーロンはただジョウイの名を囁いている。水の音が激しさを増してくる。自分の中を抉る感覚にジョウイはただ首を振って喘ぎ声を漏らした。
 フーロンが深く腰を動かすと同時にジョウイは全身を痙攣させ声もなくのけ反った。蜜を放つと同時に自分の中に熱いものが放たれるのを感じる。
 その激しい水音が響き渡ったあと、地下空洞にはまた静寂が訪れた。薄い月の光は水の中で荒い息をしたまま抱き合っている二人を静かに照らしている。
「・・・・・ごめん・・・・・・」
 少しして抱きあったままフーロンが囁くように呟いた。
「・・・・謝るくらいなら最初っからしなきゃいいのに・・・・・」
「だって・・・・・」
「いいよ・・・こうしてると気持ちいい・・・・」
 フーロンに凭れ掛かりながらジョウはうっとりと言った。
「そう?」
「うん・・・それに遭難したら裸で暖めあうのはセオリーらしいし・・・・」
「・・・・・そう言うこと言われるとまたやりたくなるんだけど・・・・・・・」
「・・・・・・馬鹿っ!」
 二人のクスクス笑いが静かに響いている。


 後日談。
 ナナミは少々怒っている。だが怒っていることは誰にも内緒だ。フーロンやジョウイにも勿論内緒である。
 あの日、必死になって助けを連れて『人喰いの原』に戻り、助っ人達が木にロープを結びつけているときに穴から中を覗き込んで二人を呼んだ。大丈夫だとは言っていたものの、ナナミには中の様子が分からなかったから本当は怪我をしているかもしれないと心配だったのだ。
 ところが返ってきたのは半呼吸の間の後の慌てたような水音である。なんだなんだと目を凝らすと石柱の影で二人がごそごそやってるのが見えた。どうも服を着ているようである。ナナミは思わず顔を空に向け10数えた。それから顔が赤くなってませんようにと祈りながらもう一度中を覗き込む。フーロンが穴の下に泳いできていた。ジョウイも一緒である。
 ロープを下ろし二人を引き上げてもらい、一旦もと来た村に引き返した。村に着いたところでフーロンとジョウイは仲良く高熱を出して寝込んでしまった。一晩中冷たい水に浸かっていたのだからしょうがないと村人の誰もが同情的で宿の主人も快く部屋を貸してくれている。
 だがしかし、ナナミだけは知っている。
(二人して裸で何やってたわけ?)
 プリプリしながら水を汲むべく井戸に桶を放り込んだ。二人が隠そうとしているので気づかない振りをしているが、ナナミは二人の関係にとうに気づいている。気づいた当初はさすがにショックだったが、ショックを受けている自分に驚いている自分に気がついてさらに動揺した。
 もう何が何だかよく分からない。
 ただナナミとしては取り敢えず昔通りに3人仲良くしていられればそれで良かったので知らん顔をしていた。だがしかし、である。
(ちょっとは状況を弁えなさいよっ!心配して損したっ!)
 いや、実際高熱出して寝込んでいるのだから損ってことはない、でも冷たい水のなかで何をやっていたのか考えるとどうにも腹が立つ。でも腹が立っているのを二人に悟られるわけにはいかない。そうしたらナナミが気づいていることがバレてしまう。それは必死になって隠そうとしている二人が可哀想だ。おかげで怒りの持って行き場がない。
(本当にもうっ!)
 ナナミは乱暴に桶を地面に置いて空を見上げた。
「あの馬鹿者どもをどうしたらいいかしらねっ?じいちゃん?」
 憤懣やる方ないと言った呟きに白い雲とお日さまが何処か苦笑したようにナナミを見下ろしていた。
 
 Fin
主ジョウ促進企画リクルーレット:お題:水中H