安達論文「神様は、貴方に何を期待しておられるか」 第1章、科学的真理の中に神様のお振る舞いを探す (4) 神様の御意志の方向はこれだ
第1節 宇宙創世と神様
2 神様の選択
[弁証法] 超新星的爆発とブラック・ホールへの道のいずれが神様の目指しておられる方向かは、形式論理を持ってしては、それを読み取ることは不可能である。そうした場合に、それを見事に読み取る方法を教えてくれた人がいる。ヘーゲルである。ヘーゲルは、この世の中に見受ける多くの対立矛盾現象を、《絶対精神》即ち《神様》が、事物を止揚(アウフフェーベン)する……神様の目指しておられる方向に持ち上げて行く……ために行っておられる《独言(ひとりごと)的な対話討論(ディアレクティク)》だと考えたのである。誰もが知っているところの、いわゆる《弁証法》である。彼の言葉を上げておこう。
「矛盾はあらゆる運動及び生命性の根源である。矛盾があるが故に衝動が起り、活動が始まる」
さて、そのヘーゲルの《弁証法》に依拠して考えるならば、超新星的爆発とブラック・ホールへの道の動態は、前述したように、完全に対立矛盾している。だとすれば、その対立矛盾の止揚(アウフフェーベン)の方向に、神様の目指される方向がある分けである。
なお、エンゲルスが『自然弁証法』という遺稿集の中で、ヘーゲルの弁証法を整理して、その中には《量から質への転換の法則》《対立物の浸透の法則》《否定の否定の法則》の三つの要素法則があることを指摘していることをここに付言しておく。
[永劫回帰の仮設と矛盾] 宇宙の将来について、次のような推測がある。「ビッグバンで密度が希薄化して行き、その極限に達すると、今度は宇宙はしぼみ始めて、また元の一塊の超高密なエネルギー素子の塊り(宇宙の原初の状態)に帰り、そしてまた、ビッグバンを起して膨らみ始める」というように振り子に似た活動を繰り返すという、優れて哲学的な考えである。ニーチェの《永劫回帰》に似た考えだが、現在、必ずしも全ての人がその説を認めている分けではない。しかし、かなり多くの人が、多分そうだろうくらいには考えているようである。ところで、若しその思想が正しかったとして、宇宙がそうした絶対高密状態(密度∞)と絶対希薄状態(密度0)の間を振り子的な往復運動をしているものだとすると、ヘーゲルの弁証法に依拠すれば、神様の御意志の方向は、濃密化の方向でも希薄化の方向でもなく、その振り子の中途の所、即ち、宇宙座標の《濃密⇔希薄》の横軸とは次元を異にした縦軸の方向に、弁証法(ディアレクティク)の止揚(アウフフェーベン)の方向があることになる。
何故、この宇宙単振動理論を持ち出したかについて、一言弁明させて頂く。これまでは、宇宙ビッグバン誕生説によって、全ての論述を展開して来た。だが、その宇宙ビッグバン誕生説をそのまま採用し続けていると、ビッグバンがそこで改めて起こった活動であったことになり、《後法優先の原則》によって希薄化が神様の目指されている方向ということになってしまう虞(おそ)れがあるのである。宇宙単振動理論を採用すれば、ビッグバンは、そこで改めて行なわれた活動ではなくなる。そして、希薄化も、神様の目指される方向ではなくなるのである。
宇宙単振動理論のようなフィックスされていない理論を持ち出すまでもなく、矛盾は、この宇宙の《力》にも厳然と存在しているのである。神様が駆使されている自然力は、希薄化の力の《エネルギー》と濃密化の力の《吸引力(重力,核力,電磁力)》の二つだけであり、その両者は、明らかに対立矛盾している。
[宇宙座標] 超新星的爆発とブラック・ホールへの追分を、下に示した宇宙座標の上に降(おろ)ろして考えてみよう。宇宙座標の横軸(濃密⇔希薄)では、超新星的爆発は右方向への動きになり、ブラック・ホールへの道は左方向への動きになる。もちろん、そのどちらも神様の目指される方向ではない。この二つの活動の追分での縦軸はなにか?……それは、差異の増殖、即ち、単一状態から多量の差異が存在する状態へと進展して行くところの《単一⇒差異》の活動である。(濃密⇔希薄)の軸の上は、その中間でも《差異》はゼロである。《差異》ゼロは神様の目標ではない。もし《差異》ゼロが神様の目標なら、ビッグバンの後、何もなさらず、放っておけばいい分けで、これまで積み重ねて来られた天体製造等々の神様のお仕事は、全て無意味だったことになる。そうだとすると、結論が出てくる。超新星とブラック・ホールの追分では、《差異の増殖》に向かって前進して行く《超新星的爆発》の方が、神様の御意向に叶った方向への進化であり、《差異ゼロ》に近づく《ブラック・ホール》への道は、神様の御意向から逸(そ)れて行く、逆戻りの道程なのである。
差異=∞
超新星的爆発の方向 ↑
↑ │
│ ↑
ブラック・ホールの方向←──┘ │
↑
差異=0 │ 差異=0
絶対濃密 ───→────┴───→────→ 絶対希薄
↑ビッグバンの目指す方向
なお、この《追分道》では、《差異》の増殖の方向を本道……神様の御意向に沿った道、以後この注を付けない……としているが、
これから後、常に《差異》の増殖の方が本道であると決まっている分けではない。このあとには、より《差異》を減少するような道が本道であることもあるので、その点御注意願いたい。そうしたケースが出てきた場合は、またそこで、分析検討を行い説明する積もりである。生物の進化、人類文化の進化には、そのケースが多々出現してくる。
[価値自由の原則]「神様は、人間をお作りになることを目的にしてお仕事を進めておられる」というように前提してしまえば、何もこのように七面倒くさい検討などしなくても、超新星的爆発の方が本道であるという結論が、簡単に出て来たはずである。だが、そうしたやり方こそ、既存の宗教などが行なって来たやり方で、そのために間違った神を空想する結果になり、これまで多くの不幸を生産し続けて来てしまったのである。マックス・ウェーバーの言う《価値自由の原則(倫理を先に念頭において、理論を当該倫理を肯定する方向に誘導することの戒め)》は、社会に関する原理等を把握する研究を進めていく場合には、絶対に守らねばならない鉄則である。この原則を遵守せずに社会科学の研究を行うと、一例を上げれば、マルキシズムのような、世界中に不幸を撒き散らす恐ろしいイデオロギーが作り出されてきてしまったりする虞(おそ)れがあるのである。マルキシズムの誤謬は、自分の希望でしかなかった社会主義革命を、恰も社会進化の必然であるように、科学らしく見える屁理屈でこじ付けたところにある(史的唯物論)。そうした轍(てつ)を踏むまいと思い、また、神様の行っておられる価値選択の原理を正確に把握するために、このようなややこしい分析検討を行っている分けである。
表紙へ