安達論文「神様は、貴方に何を期待しておられるか」
第1章、科学的真理の中に神様のお振る舞いを探す
(1) 太陽系製造の意義
第1節 宇宙創世と神様
3 神様のお仕事に関する若干の理論的補足
[ループ・ターン] 超新星的爆発の後、再度そこで造星運動が始まった。第二世代の星の造星運動では、初めからそこに元素があるので、周辺部に惑星が誕生して来る。超新星的爆発は密度を希薄化する現象で、これまで行ってきた濃密化とは全く逆方向の変化動態である。地球のような惑星を作り出すには、第一世代の恒星を、一旦壊(こわ)して、星を再製するより他はなかったのである。この超新星的爆発から惑星誕生までの宇宙の進化経過は、手戻り的なループ・ターン的現象で、そこにはなにか殊更に行なわれたような神様の故意性が感じられる。
[惑星=化合物製造工場] 神様は、92個の元素では足りず、更なる《差異の増殖》をなさりたかったのである。その更なる《差異の増殖》には、《化合物の製造》という方途しか残されていなかった。
人工によって初めて作り出されてきた元素であるプルトニューム(93)がそうであるように、この宇宙では、ウラン(92)以上の元素は、自然状態では、その高度なポテンシャル状態が維持できず、直ぐ自然崩壊して、より下位の原子量の小さい元素に戻ってしまう。即ち、この宇宙では、元素製造という方途による《差異》の増殖は、92個が限度なのである。そこで神様は、一見手戻りのように思えるそうしたループ・ターン現象を引き起こされて、化合物の製造工場である惑星という新しいタイプの天体をお作りになったのである。
天体の製造は《重力》を使った《差異の増殖》であった。元素製造は《核力》を使っての《差異の増殖》であった。そして、その《重力》による濃密化(天体製造)も、《核力》による濃密化(元素製造)も、既にどちらも、その極限にまで到達してしまっていた。即ち、神様はこの時点で、三つの吸引力のうちの二つは既に使い終わってしまわれたのである。後は《電磁力》しか残されていない。即ち、その時点では、《差異》を更に増殖するには、《電磁力》による化合物の製造という方途しか残されていなかった理(わけ)である。
[力の出現順序と使用順序] 前述したように、吸引力はビッグバン直後の1千億分の1秒という極く短い時間の間に出現して来た分けだが、現在の物理学では、それぞれの吸引力が出現してきた順序も分かっている。それは、重力が10のマイナス44乗秒後で第1番手であり、核力が10のマイナス36乗秒後で2番手、電磁力が10のマイナス11乗秒後で3番手だったとされている。即ち、天体製造⇒元素製造⇒化合物製造という過程で、神様が吸引力を使用された順序と、吸引力の出現順序とが一緒なのである。そのことについて、簡単に説明を加えておこう。
実は、この吸引力の出現順序の方も、神様が吸引力を使用された順序であったのである。先ず神様は、重力でコークをお作りになった。次いで、三つのコークを核力(グルーオン)で結びつけてハドロン(陽子)をお作りになった。三番目に、神様は、電磁力で、陽子の回りに電子を引きつけて、水素原子をお作りになった。このように見てくると、何故そうした順序で、吸引力が使用されるかの理由も、蓋然的には分かるような感じがする。精密な物理学的説明は、まだ十分に出来てはいないらしいが、そのことは扨(さ)て置いて……この宇宙での前期の進化では、吸引力は、重力→核力→電磁力という順序で、2回繰り返して使われ、化合物製造の時代に到達したわけである。なお、1回目は、それは、一千億分の一秒という極く短時間でのことであり、2回目は、それに百億年を超える年月を要している。
[Jターンと《進化》の定義] 惑星の誕生でも、各種各様の姿をした惑星が出現して来た分けで、これも《差異の増殖》の一つである。だがそれよりも、ここで行なわれた神様のお仕事の最大の特徴は、選択が極めてシビヤーだったことである。星雲を構成している物質の殆どは、造星運動の中心部に集まって太陽になる。ところで、その太陽では、再び元素製造が始まってしまうのである。だから、星雲に有った元素の殆どは、化合物の製造には使っては貰えず、すぐ太陽という溶鉱炉に返送されてしまう分けである。ただ、ここでのターン(溶鉱炉送り)は、ブラックホールの場合のように、絶対高密の状態にまで戻すというようなUターンではない。それは、一つ前の元素製造の段階に戻すだけのJターンなのである。というのは、太陽も、100億年くらい元素の作り足しを行った後、また超新星的爆発を起こして、元素をばら撒き、星雲になり、第3世代の恒星と惑星を作ることになるからである。そして、そうしたJターンが繰り返されてループ・ターンになり、神様の御意思の方向への変化が進行していく分けである。この《神様の御意志の方向への変化》あるいは《神様が期待されている方向への変化》のことを、これからは《進化》と呼ぶことにする。
これまでも《進化》という語をかなり乱発して来た。だが、それは、明確な定義なしに、やや積極性を帯びた変化を、無責任にそう呼んでいただけのことである。これからは《進化》という語は、はっきりと、上記のよな意味の語として使用して行く積もりである。
[神様のおわします現証(あかし)] ブラック・ホールへの道は、《差異ゼロ》の原初の宇宙の状態に向かう逆行のUターンであった。だが、超新星的爆発の際のループ・ターン、太陽に呑み込まれて溶鉱炉送りになってしまう元素のJターンの二つのターンは、何れもが化合物製造の方向を指向するターンになっている。即ち、この二つのターンが起こったことは、化合物製造への道が、神様の志向される本道であることを証するよき証拠品的現象なのである。こうした神様の存在等を証する証拠品的現象のことを、仏教では《現証》と呼ぶ。仏教には《現証,理証,文証》という三対の概念があることをここに付言しておく。
[太陽は神様の道具] 太陽の存在意義は、廃品再製業だけではない。太陽は、地球等で行なわれる化合物製造で、特に有機物のような高度な化合物を製造する際の、重要なエネルギー供給源でもある。多分、神様は、そうしたエネルギー供給源にすることを主たる目的にして、太陽をお造りになったのである。
太陽が化合物製造のエネルギー供給源であるということは、太陽は、神様のなさるお仕事の一部を代行していることになる。太陽がそうした重要な仕事を分担しているため、多くの人達が、太陽を神様だと思ってしまうのであろう。ところで、人間の作った工場でも、機械が人間の仕事の一部を代行している。しかし、機械は人間ではない。機械はやはり人間が作り出した道具である。そういう意味で、太陽は神ではなく、飽く迄もそれは、神様が造り出された道具なのである。
[迂回生産] 神様がこれまでやってこられたことは、詰まりは、将来なさりたいと思っておられるお仕事に必要な道具作りだったのである。いや、道具作りだけではない。コーク,核物質,元素,化合物等の製造は、原材料の中間的加工と言った方が妥当のようである。また、天体製造は、工場の建設とした方が妥当であろう。いずれにせよ、神様は、そうしたあらゆる準備作業を、百数十億年もの時間を掛けてやってこられたのである。神様の宇宙創造のお仕事は、大変な《迂回生産過程》だった分けである。
アリストテレスは、そうした或一定の目的を《テロス》と呼び、その目的(テロス)を実現するための種々の手段or技術(道具,原材料,工場等)を《テクネ》と呼んで、事物の有用性の価値の問題を論じている。この論文でも、今後、そのアリストテレスの《テロス》《テクネ》の語を、重宝に使用させて頂くので、その点御了承願いたい。
[神様のお目当ての惑星=地球] 惑星も複数出来てくるが、太陽系では、高度な化合物を製造しているのは、ただ地球一つである。あとは金星,木星,土星の三つが、まあまあの水準の化合物作りをやっている程度で、残りの星は殆ど元素の塊りに近いままの存在である。そのように、惑星作りの段階での選択もまた大変シビヤーなものだった。なお、もうこの段階では、地球という惑星一つのみが、神様の目指されている目標物であることについて、くどい説明をする必要はなかろう。地球のみで超高度な蛋白質という化合物の製造が行なわれていること。また、地球のみに、桁外れな量の《差異》が生じていること。その二つのことを上げれば、仏教の言う《現証》は充分整っている。
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