安達論文「神様は、貴方に何を期待しておられるか」
第1章、科学的真理の中に神様のお振る舞いを探す
(6) 差異の増殖の陳腐化
第2節 生命の誕生と神様
1 生命の進化
[差異の増殖の停止] 超新星の爆発とブラックホールの追分道では、差異の増殖を継承している超新星的爆発の方が神様の御意向に沿った方向だと認定した。その後行なわれた惑星における化合物製造でも、差異の増殖はそのまま継承された。そして、生物も、一応その差異の増殖を継承して進化を開始したのである。生物の進化史にも、かなり派手に差異の増殖が行なわれた時代もあった。カンブリア紀の生物の爆発的分科、生物の上陸に際しての爆発的分科等がそれである。だが、生物の上陸以降は、生物の差異の増殖は、殆ど停止しているらしいのである。古生物学者は、陸の昆虫、海の魚類が全盛だった石炭紀(3億年前)と現代とでは、一体どちらが《種》の数が多いか分らないという。6,500万年前に行なわれた鳥類と哺乳類の爆発的分科は、爬虫類等に多量の絶滅者が出た後での爆発的分科で、そこでは差異の実質的増加はなかったようである。
地球上には、T・ハックスリーの樽による説明のように、膨大な数の生態的時空が存在する。だが、生物にもまた、前述した爆発的分化によって、膨大な数の種が現れ、その膨大な数の生態的時空の殆どを、夫々1種が占拠する状態になった。当然そこで、差異の増殖は停止した分けである。
[目的と手段] 生物の進化の時代の後半になって、差異の増殖は停止した。しかし、進化はその後も引き続いて行なわれている。差異の増殖が停止しても、なお進化が継続しているとすれば、差異の増殖が、神様の、最終の目的(テロス)ではなかったことは間違いない。だが、ビッグバンから化合物製造までの進化では、明らかに、差異の増殖が神様の御意向であるかのように見える進化経過を辿って来ている。だから、差異の増殖は、神様の最終の目的(テロス)ではなくても、途中段階での目的(テロス)であったことは確かである。アリストテレス流に言うと、途中段階の目的(テロス)は、それより上位の目的(テロス)の手段(テクネ)である。即ち、神様は、それより上位の目的(テロス)の手段(テクネ)として、差異の増殖をやって来られた分けである。
[差異の増殖の効用] この段階に来れば、元素製造や化合物の製造における差異の増殖の目的は、はっきり分かる。元素の差異の増殖は、多種多様の化合物を作り出すために行なわれたものである。化合物の差異の増殖は、生物が多種多様の化合物を必要とするものだったからに他あるまい。ところで、生物の差異の増殖には、そうしたはっきりとした効用が見いだせない。生物でも植物の場合には、多種多様の動物の食料になるためというような説明はできる。しかし、その動物の方の差異の増殖に効用がないので、結局植物のそれも無意味だったことになってしまう。
差異には、そうした原材料となるものについての効用だけではなく、もう一つ別の効用がある。神様は、コークを六つも作り出して、四つを捨てて、二つだけをお使いになった。そのように、神様は、目的物を得る方法として、差異を増殖し、多量の差異の内、多くのものを消滅され、或は廃棄されて、特定のものだけを選ぶというやり方をなさってこられている。即ち、差異の増殖は、自然選択のための手段にもなるのである。そして、神様は、生物についても同様に、差異を作り出しては、価値ある方を選ぶという淘汰論的進化を進めてこられている。生物の場合の差異の増殖の効用の一つは、多分、そうした、自然選択の機能を有効に働かせるためのものであったのであろう。
動物の場合の差異の増殖の効用については、種々の問題の説明が不充分なので、この段階では、この程度の曖昧なことしか述べられない。実は、動物の差異の増殖の進化論的意義については、第3章,第1節,2の(5)で詳しく説明するので、そこを参照されたい。しかし、多量の論述を飛ばしてそこを読むことになるので、消化不良の誤解などしないよう充分御注意願いたい。
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