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司法書士制度改革検討事項に関する意見
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司法書士制度改革検討事項に関する私的見解


司法書士制度改革検討事項の日司連原案(問題提起)
第1. 司法書士の業務について(司法書士法第2条関係)
1. 登記事件及び供託事件について代理することを業務として明示すること。
2. 簡易裁判所が取り扱う民事事件、家庭裁判所が取り扱う家事事件の他民事執行事件について代理することを業務として追加すること。
3. 個人債務者破産事件について代理することを業務として追加すること。
4. 従来の裁判所、検察庁、法務局に提出する書類の作成及び審査請求手続代理については、その業務の明示を維持すること。
5. 前記の各事件等の関する相談その他の法律事務を行うことを業務とすること。

第2. 研修について(司法書士法第15条関係、研修関係新設)
1. 司法書士の研修に関する規定を司法書士会並びに日本司法書士会連合会の会則における必要的記載事項とすること。
2. 司法書士が訴訟代理権等の職務を行うには、特別の研修を受け、かつ、その効果の測定等を経なければならないものとすること。
3. 日本司法書士会連合会会則において、司法書士会会員は、日本司法書士会連合会等が実施する研修を受けるものとすること。


第3. 自治権について(司法書士法第12条関係及び同関係新設等)
1. 国民の司法書士に対する懲戒請求権を明示すること。
2. 日本司法書士会連合会の自治権を強化すること。
3. 司法書士会の自治権を強化すること。
4. 懲戒処分に関しては、官報にその旨を掲載するものとすること。
5. 会則認可事項を司法書士法第15条第7号の事項のみとすること。

第4. 試験について(司法書士法第5条関係)
試験科目に「憲法」を追加するとともに、論文式をもその内容とする筆記試験の実施を明示すること。

第5. 使命、職責規定について(司法書士法第1条及び第1条の2関係)
司法書士の使命規定を設けるとともに、司法書士の職責を国民の権利を擁護する観点を重視した内容とすること。

第6. その他(司法書士法第9条、同第4条関係、同第6条関係新設)
1. 前記第1の新たな業務に必要な司法書士の権利擁護等につき所要の整備を行うこと。
2. 禁固以上の刑に処せられた者等を司法書士欠格者とする等、欠格事由について所要の整備を行うこと。
3. 懲戒処分、退会処分及び注意勧告処分の各手続きに付された者については、登録の抹消等をすることができないこととする等所要の整備を行うこと。


上記問題提起に対する私的見解
第1. 司法書士の業務について(司法書士法第2条関係)
1. [訴訟代理権の確保を要求する前に考えなければならないこと!]簡易裁判所の代理権等新制度実現の要求を掲げることも重要であるが司法書士制度全体のことを考えると今まさに登記事件等に関する諸制度の再構築をはかり一般市民(消費者の意味)に対してその再構築された制度のメリットを提示(説明)していかなければならない。今まさに一般消費者に対して今日及び将来の登記制度における司法書士の社会的存在理由を提示(説明)できるか否かにいままで登記制度に依存(し過ぎた?)してきた司法書士の将来がかかっている。
 
2. [現行制度の司法書士の役割とその発展性]登記制度における司法書士の役割を(既に言い尽くされているが)意思確認を典型例とした実体確認に求めるのであれば現行制度においても一定の社会的役割を担っていると考えられる。仮に将来登記制度のコンピューター化に伴って司法書士が不要になるのであれば司法書士制度そのものがその程度の社会的存在理由しかないということになる。もしその仮定が真実となるのであれば今後司法書士界から新たな存在理由を提示できなければ制度が消失しても仕方がないだろう。現在司法書士界がこのような環境にあることを自覚して新たな提案をすることができるか否かに司法書士界の今後の浮沈がかかっている。
 
3. [業務の法的根拠の再検討]今新たな登記制度を構築することを考えると司法書士が実際に行なっている登記申請の代理の法的根拠を委任契約のみ求めるのは既に無理が生じていると思う。典型例として判例による立ち会いの定義づけされた例(平成3年3月25日東京地裁判決)等々などがあげられる。これからは司法書士の従来業務を登記申請の代理と言う従来の委任契約の発展したものと位置付け通常業務の内とりわけ金銭の履行と連動する登記の立ち合い等のような形態の業務を抽出し法的(法文的)根拠を与えるという方法や(既に一部の会員より提唱されているようであるが)司法書士の業務全体を認証的なものと位置付け司法書士に公証人的権限を付与するよう求める意見等が考えられると思われる。少なくとも判例にみられるような損害賠償請求事件に際しての解釈のみの定義付ではなくて法文上(立法上の)の定義づけを目指すべきである。
 
4. [改正の形式について]登記事件については司法書士法の改正と言う形式にこだわらず不動産登記法の改正という形も視野にいれて検討するべきである。
 
5. [日司連原案に対する各論的意見]
(・)「登記事件・・・供託事件・・・」と表現している点は、一定評価できるがこの時期の改革検討の視点としては底が浅いと感じる。(もっとも別の次元で不動産登記法改正試案として提案されていることも認識しているが!)
(・)2.3.4.については是である。
(・)5.について「・・・各事件等に関する相談その他の法律事務を行なうこと・・・」については実現可能であるのなら何も言うことは無い。司法書士の歴史に残る快挙であろう。
 
6. [補足として・(現行制度でもできること)]現行の登記制度では司法書士は、売買取引においていわゆる「立ち会い」(法的に定義がなされていない点が問題であるが!)の場で売買当事者である売主と買主に(多くの場合)初めて会うのが実情である。そもそも初対面の者に対する意思確認などは技術的には究めて限られた手段でしか為される術がない。現行の初対面者への1回の確認では今日司法書士が行なっている確認行為等の努力が(司法書士に対しての)過失責任を問われる際の無過失の主張が出来るための程度の努力としか第三者には映らないのではないか!個々の会員の問題とも考えられるが売買契約(原契約)時に立ち合う等の努力により立ち合い時の相当前に当事者に面談する等・・・少なくとも本来的立ち合い時の前に当事者の具体的情報を入手する様努力したうえでの多様的な意思確認等を施し(過失の有無を超えた形での)結果的な安全を志すべきである。(市民と法NO5P52「司法書士の進む道を考える―金融機関との決別―」参照)出来るところからはじめなければどんなに観念的にすばらしい制度を論じても実現は困難であろう。
 


第2. 研修について
1. 訴訟代理権等の職務に関して研修を義務づけることは新分野の確保という性質より是認する。
 
2. 日司連の原案にある「・・・、かつ、その効果の測定等を経なければならないものとすること。」の「効果測定等」の意味が資格内資格につながるものなら、(業界組織の統一目標事項として定めるという意味では!)断固反対である。仮に資格内資格を前提として一部の司法書士に簡易裁判所等の代理権を付与するというのであれば簡易弁護士資格を新設すれば良いのである。したがって国家試験の一形態として試験を行なえば良い。当然訴訟業務を積極的に行なおうと考えている司法書士は新国家試験を受けて業務の拡大を図るであろう。そうであるならば司法書士会には一切関わりが無いということになる。少なくとも簡易弁護士制度という別資格の方が司法書士の資格内資格として簡易裁判所等の代理権を付与されるより国民にはわかりやすいのではないか。日司連の正式見解として資格内資格の存在を認める意味があるのであればとうてい認められない。対外的圧力の関係で結果的に資格内資格となったのであればいざ知らず現時点の対外的アプローチも含めたタイミングでの「効果測定等」の表現の使用は資格内資格も想定しているものと考えられ納得できない。
 
3. 研修制度の義務化であるが訴訟代理権の付与や成年後見人の名簿の搭載を前提として義務化するのは是認する。しかし通常の研修で義務化を図るのには疑問がある。義務化の意味がプログラム規定的意味及び対外的アプローチの範囲内であれば是認できが研修不参加者にぺナルティを課すのであれば反対である。そもそも規制緩和の論から一連の改革が始まったのであるから本来の大原則は自由競争に身を委ねなければならないというのが原則的な考えである。すなわち「研修を受けなければその者の資質が低下すると考えるのが一般的であろう。資質が低下すれば顧客の信頼が生じない。→仕事が減る→自由競争に負ける。」と考えるべきである。この点を踏まえて研修の義務化を考えると強制することは司法書士間の競争の阻害要因とさえ思える。司法書士全員を一律の資質にすべきであると言う過度の平等主義が垣間見える。敢えて極端な例をあげると他機関主催の研修会等と司法書士会の研修会が同日に行なわれた場合、ある人には他機関主催の研修会等へ出席する方が資質の向上になり、ある者には司法書士会の研修会ヘ出席する方が勉強になる、といった現象も生じる可能性がある。この例えはいささか屁理屈だがこれからの司法書士事務所のあり方は一律には定まらない。数種の職域が生じるので自分の事務所の個性を作らねばならない。この点は間違いがない。このような情勢下で一律に研修を義務化しペナルティを課すというのは肯定できない。参入規制の観点から司法書士会への強制加入も問題となっているのに理解が出来ない。

[結論]3.についてはその文意から研修の義務化よりペナルティも課すという意味であれば反対である。プログラム的意味での範囲内であれば是である。尚ことの性質上その目的が資質向上以前の倫理研修については強制(ペナルティ付でも可)しても是認する。
 


第3. 自治権について
  日司連が自治権確保を目標として掲げることは理解できる。但し自治権の確保の前提として以下の点を各会員に明示するべきである。
 
1. 司法書士会の懲戒処分問題の取り組みにつき対市民的トラブルと同業者間のトラブルを区別するべきである。自治権獲得の前提として対市民的トラブルに対しては厳格に対応するための、同業者間のトラブルに対しては秩序維持のために最低限の対応をするための基準を統一的に定めること。
 
2. 被懲戒者の人権を配慮して司法書士以外の者を構成員とする第三者機関を設置し意見を答申させ参考とすること。
 
3. (弁護士の職業上の性質より弁護士会では通常行われている様だが)被懲戒者の代理人として他の司法書士が被懲戒者の代わりにその主張を代弁できる制度を作ること。
 
4.

[原案に対する各論的意見]
1については国民全般を指し「一切の利害関係も要さないで懲戒請求が出来る」という意味(弁護士会のそれと同様に!)であれば消極に考える。少なくとも請求権者を事件の利害関係人に限定するべきである。仮に国民に対するアプローチの関係上必要的であるのであれば上述の1〜3の前提条件は絶対に実現せねばならない。

2について上述の1〜3を前提条件として肯定する。

3について上述の1〜3を前提条件として肯定する。

4について懲戒処分の一律の公開には反対する。事件内容によっては(対国民との関係で)公開も必要的な場合もあろうと思うがそういった場合に限定するべきである。事前に一定の基準を定めておくほうが好ましいが処分結果と公開の必要性とは必ずしも一致しないであろうから事件内容によって判断していくしかないと思う。(そもそも国民の価値基準と言うものは固定的でないのであるから!)

5については肯定する。
 



第4. 試験について
憲法を試験科目に入れることを主張することは肯定するが弁護士会の主張するがごとく資格試験の試験科目に憲法が入っているか否かで法律家としての資質が高度だとか劣るとかを論じるのは間違っている。恐らく多くの受験生は憲法が受験科目になった場合得点源とするだろう。司法書士試験もそのくらいの高度な試験となっているのである。尚試験の方式で、より重要なことは不動産登記・商業登記の両登記法の記述式が形として書式の試験となっていることである。登記簿のコンピューター化が進んでいる中近い将来登記申請の方式も大きく変わろうとしているのは誰もが承知していることである。そろそろ書式の呪縛から逃れてもっと純粋に(実体法的かつ登記法的)思考能力の有無を判定する方式を検討し日司連の要求事項として掲げるべきである。
 


第5. 使命、職責規定について
方向性としては日司連原案を肯定するがもう少し具体的な例を提示してくれなければコメントしようがない。

平成12年11月17日
埼玉司法書士会会員
岡田雅孝