平成14年(ワ)第2070号損害賠償請求事件
答 弁 書
平成
14年4月25日束京地方裁判所
民事第44部 合議B係 御 中
上記被告○○○○訴訟代理人
第
1、請求の趣旨に対する答弁1、原告らの被告○○○○に対する請求をいずれも棄却する。
2、訴訟費用は原告らの負担とする。
との判決を求める。
なお、被告○○○○敗訴の場合でも仮執行の宣首を付するのは相当ではないが、仮にこれが付される場合には、担保を条件とする仮執行の免税宣言を求める。
第
2、請求原因に対する認否1
、「当事者」について(
1)、請求原因第1の1項記載の事実は知らない。(
2)、同2項記載の事実を認める。(
3)、同3項記載の事実を認める。2
、「事実経過」について「平成
10年7月ころには、‥‥‥」から「‥‥‥15点に上昇していた。」まではそのような事実があったこと自体は認めるが、亡益男の状態の把握において、その事実のみを前提とすることは争う。亡益男は、平成
10年5月10 日に風邪を引き、3日後に歩行困難となっており、6月22日には座位不安定、7月13日にはめまいがあり右足に重心をかけて起立が極めて不安定との経過があった。5月に歩行困難となったことに対し、同月25日にリハビリテーションを勧め、同月29日より開始。しかし、自発性に乏しく、リハビリテーションを進めるうえでも、また本人の活動性自体にも限界が見られていたもので、「杖歩行ができるようになった」、「改訂長谷川式簡易知能評価スケール」での得点が上昇したことのみをもって、亡益男の病態が改善していたということはできない。
「ところが、‥‥‥」から「……安全です。」とのことであった。」までを否認する。
亡益男の状態は前記のとおりであり、自発性が乏しいことが同人のリハビリのうえでも活動性の点でも障害となっており、この
ことは原告らも十分理解していたものである。このため、主として同人の自発性の向上という観点から治験薬を使用してみることについて説明し、同人及びその家族の了承のもとに、本件治験薬の使用を開始したものである。
なお、「当病院(注・東京医科大学病院)では副作用などのトラブルは一切起きていない」との事実及びその鋭明をしたことは 認めるが、「安全です。」という表現は用いていない。
○○医師は、亡益男及び付添いの家族に対し、@本件治験は患者の自発性を高めることを目的とするものであること、A治験の方法、B予想される効果と危険性、C治験に同意しなくても何ら不利益を受けないこと、D治験はいつでも撤回できることなどを鋭明し、本人の意思に基づいて同意を得たものである。
したがって、「その際、……」から「‥‥‥安全であると理解していた。」までは否認ないし争う。
○○医師は、平成
10年7月27 日及び8月20日に、本件治験薬をそれぞれ 28 日分処方しているが、これを処方どおり服用していたかどうかは知らない(亡益男の家族が、9月 22日まで服用していたと○○医師に話していた事実はある。)。なお、
7月27日から8週間分であれば、当日を含めて、9月20日までの分である。「平成
ている。」までを、「数時間後」という点は、それが具体的にどの程度の時間をいうのか不明のため認否できず、その余は認める。
なお、当日○○医師の診察を受けた際の所見は、血圧
160/80、脈拍72で整、体重56kg、亡益男は会社に行きたがる、外出・外 食によく出るというもので自(5)、同5項記載の事実は「心電図検査、心エコー検査」を行っていないことは認め、「など」が具体的にどのような検査を指しているのか不明のため認否しない。本件治験を行ううえで、これらが必須とされていたわけではない。
3、「因果関係」について
原告らの主張はまったく意味不明である。
医学的・薬学的にその作用機序について、根拠を示して具体的に明らかにされたい。
本件治験薬によって心刺激性が認められるということも、心筋梗塞の再発や重篤な不整脈を惹起するなどということもない。
「また、益男は……」から「‥‥心陰影拡大が認められ」までを認め、「心電図には‥‥‥」から「・‥…疑われるものであった。」までを否認する。
もともと、胸部レントゲン写真で心陰影の拡大が認められても、
内蔵脂肪型肥満(身長
155cm、体重 59kg、腹部は膨隆し、臍上での腹囲は89cm)であったことから、心臓横位によるものと考えるべきである。心電図については、臨床的に正常と判断されるものであり、原告らの指摘するような「左心室肥大及び前壁の内膜下梗塞を疑わしめる」、「
V2〜V4 の R波減と深い S 波」などは認められない(コンピュータ解析でも「normal ECG/normalvariant」とされている−なお、これは心電図の解析をコンピュータで行っているということを意味するものではない。あくまでも、○○医師の解読結果が正しいものであったことを裏付ける間接事実という趣旨である。)。そもそも、原告らの主張はその前提においても、日本人の左室肥大の診断基準は、「
V5のR波が35mm以上、SVl+RV5が45mm以上が一般的であり、さらにRV6>RV5などの所見が加わればさらに確実である。」とする文献的根拠に合致していない(つまり、左心室肥大について、V2〜V4 を問題とすること自体失当である。)。また、心内膜下梗塞の場合は、
ST 低下または上昇、冠性Tを示す。したがって、原告らの主張事実を前提としても、心内膜下梗塞を疑う根拠にならない。「また、益男以外にも、‥‥」から「……死亡している。」までは、その旨の報告があったという限りで認める。ただし、因果関係はないと考えれる旨併せて報告されている。
前記のとおり、本件治験薬が「心筋梗塞の再発や重篤な不整脈を惹起する」などということはないし、また心電図上も異常を認めず、経過中も(リハビリによる負荷時をも含め)異常を認めていない。
したがって、亡益男がもともと心臓に異常を有していたということはなく、本件治験薬により「心臓に重篤な影響を生じた」ということもない。したがって、本件治験薬投与によって「虚血性
心不全」を惹起したということはない。そもそも、原告らほ亡益男と同年齢の者が虚血性心不全で死亡することは決して珍しいものではないことをどのように考えているのであろうか。
しかも、本件では原告らの主張によっても、本件治験薬服用後
2日目で虚血性心不全で死亡したというものであるところ、この事実は原告らの主張する本件治験薬の効果による「心刺激性」(被告はこれを否認するが)によるものであるということと整合性がない。
本件治験薬の体内動態は投与後約
1時間でCmaxに達し、その約4時間の半減期で消失、連続投与によっても蓄積性はないものとされている。亡益男には9月24日当日の血液生化学検査によっても、腎機能障害はないかあるいはあっても軽微なものに過ぎず、その排泄にとくに問題はなかった。そうすると、本件治験薬の薬理効果は(仮にあったとしても)
9月24日午後3時ころには既に消失しており、亡益男の虚血性心不全が本件薬剤によって起こったということはできない。原告らの主張は、既に述べたとおり、本件治験薬の作用の理解
についても、心電図の理解についても、医学的・薬学的にもまっ たく意味不明なものとわねばならない。
4
、「被告○○の責任」についてまた、本件治験薬と亡益男の死亡との間には前記のとおり因果関係は認められないのであるから、この点に関する原告らの主張は失当である。
また、原告らのいう「別件事故」では本件治験薬とは因果関係がないと考えられる旨報告されている。
さらに、亡益男が「重篤な心疾患患者」であったという事実もない。
そして、前記のとおり、初診時の心電図上も、胸部レントゲン写真上も、亡益男の心疾患を疑うべき所見はないのである。
実際、臨床所見でも、心臓に異常を示すものはなく、経過中もリハビリによる運動負荷時においてもなんら心疾患を示す症状も現れていないのであるから、「重篤な心疾患」があったということはできない。
したがって、本件治験薬によって虚血性心不全で死亡するなどということは予見不可能である。(前記のとおり、亡益男が死亡したのは原告らの主張によっても最終の服用から2日後であることも看過してはならない。)。
5、同第
5記載の事実及び主張については被告日本新薬に関するものであるため認否しない。6、同第
6記載の事実は知らず、主張は争う。7、同第7記載の主張は争う。
以 上