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ライブ日記――gig report '99

 

Carlos Nunez

Cran

DGQ

David Lindley

Eileen Ivers

Liam O'Maonlai

Little Feet

Preston Reed

あがた森魚

西岡恭蔵&KURO

宮原芽映

良原理恵

 《グリスマン・ワークショップ》

 

99年3月24日

あがた森魚

 at 渋谷クアトロ

 「永遠の遠国」のイントロにラジオのナレーションがかぶさり、それが「淋しいエスキモウの様に」に代わったその時点で、すでにあがたワールドの中に引き込まれていたようだ。

 あがた森魚という人は、私にとって「乙女の浪漫」の頃からずーっと気になる存在であり続けている。したがって、幻の大作「永遠の遠国」の21世紀完結篇発売記念ライブとなると、これはどうしたって見に行かないわけにはいかない。「永遠の遠国」の曲を中心に、自作映画のテーマ曲などをはさんで、最後のアンコール「冬のサナトリウム」「大寒町」まで。2時間半に及ぶステージは、期待どおり、とても充実したものだった。

 サポートバンドのメンバーは、キーボードにライオン・メリー、ドラムスに鈴木惣一郎など。鈴木惣一郎は、あがた森魚の最近のアルバムのプロデュースを担当している重要人物でもある。今回の「永遠の遠国21世紀完結篇」もしかり。次回作の「日本少年2」も、おそらくそうだろう。あがた氏のよき理解者として、これからもがんばってほしいもんだ。

 この日のもう1つのハイライトは、元はちみつぱいの本多信介が、ゲストでちょこっとだけギターを弾いてくれたこと。この人のギターは、とっても暖かい音で、個人的に大好きなもんだから、これはめちゃくちゃうれしかった。

99年3月25日

宮原芽映

 at 東中野 KING BEE

 思いっきり散文的な性格のせいか、かえって女性の作った内省的なラブソングには弱いみたいだ。気丈な女の人が、「忘れたふりなんてできない」と歌うのは切ない。「もう1人で歩ける」と強がるのも切ない。そんなこんなで、せっせとこの人のライブに通うことになる。ま、それだけじゃなくて、個人的にファンであるというのも大きいわけだが。

 この日はピアノ、アコーディオンの良原理恵が急遽欠席ということで、ギターとパーカッションのみのシンプルなバックとなった。その分、リードギターの丹波博幸ががんばって、演奏はそれなりに盛り上がったと思う。曲によって、60年代のストラトと、クラシックギターとを使い分けていたのが、わりと効果的だった。客席の雰囲気もなかなかだったし。

 アンコールは、日本語訳詞のYou've Got A Friend。「だから1人だと思いこまないで・・・・」というあたり、ここだけの話だけど、けっこうウルウルきました。

 

99年4月4日

Paul Barrere & Fred Tackett (Little Feet)

 at 吉祥寺 STAR PINE'S CAFE

 リトル・フィートの2人のギタリスト、ポール・バレルとフレッド・タケットのアンプラグドなデュオ・ライブ。2人だけでどんな音を作り出すのか、お手並み拝見−−というところだったが、どちらも年季が入っているミュージシャンだけに、ギター2本だけでも充分に音の厚みがある。余裕のギターバトルという感じで、なごめた。2人ともアコースティックギターだったことも、いい雰囲気をかもしだしていたと思う。

 ボーカルをとったのは、ポール・バレル。もちろんギターもビシバシ弾きまくる。スライド・ギターを中心に、なかなか根性の座った音を聞かせてくれた。

 サイドギターにソロギター、さらにマンドリンと大活躍したフレッド・タケットもシブかった。意外なほど、マンドリンを弾く回数も多かったし。ちなみに、使用していたマンドリンは、F-5コピー風だったが、どんな楽器だったかは、残念ながらよく見えなかった(ギブソンでないことだけはたしか)。

 とにかく、この会場で座って演奏されると、ほとんど顔しか見えないのだ。しかもポール・バレルのほうは楽譜立ても使っていたから、なおさらである。ギターのテクニックに注目している人も少なくなかっただろうと思うので、このあたりはもうちょっと配慮してほしかった。

 ま、いまさら文句を言ってもはじまらんか。Dixie Chicken、Sailin' Shoesといった懐かしい曲では、いっしょに歌い出すお客さんたち。きっとみんな昔からのファンなんだろう。それにつけても、アンコールでやったWillin'は、しみじみよい曲だ。ついついローウェル・ジョージのことまで思い出してしまった。

 「12月にはバンドで来たい」と言ってたけど、はたして実現するだろうか? 実現した暁には、また見にきたいもんである。そのときは、もちろんエレクトリックギターで、ね!

 

99年4月10日

良原理恵

 at 山手ゲーテ座

 「階段が尽きさえすれば水平線が見えるのである」と詠ったのは黒田三郎。「石段を登って一歩一歩自分に近づく」と歌うのは良原理恵。そして私はといえば、その良原理恵のライブに遅刻しそうになり、山手の外人墓地を巡る石段を、ひーひー言いながら上っていた。

 良原理恵がWATERCRESSというピアノソロのアルバムを作ったとかで、今日はその発売記念のライブだ。アルバムのレコーディングも、本日のライブ会場であるゲーテ座で行なったという、いわばホームグラウンドでの演奏である。

 なんとか、開演時間に間に合い、ほっと一息したかと思ったら、ホスピタリティあふれるパフォーマンスに、いきなりなごんでしまう。ピアノソロ以外にも、ベースやパーカッションを加えたインストや、ピアノの弾き語りなども交えたステージは、とくにこれといったしかけがあるわけではない淡々としたものなのだが、これが妙に心地よい。ご本人たちとはまったく面識がないのに、まるで友人のライブを見ているような、不思議な気分になった。

 良原理恵のピアノの音は、やさしく澄んでいて、ある意味ノスタルジックですらある。よい時間をすごせた。ひーひー言いながら、石段を駆け上がったかいはあったな、たぶん。

 

99年6月1日

Eileen Ivers

 at 原宿 ラフォーレ

 エンディングのThe Wind That Shakes The Barleyを聴いて、かつてのデビッド・ブロムバーグ・バンドの演奏を思い出してしまった。

 グッド・アメリカン・ミュージックの集大成のような音楽性を持っていたDBBが、そのジグソーの1ピースとしてアイリッシュ・フィドル・チューンを取り上げていたように、アイリーン・アイバースもアイリッシュ・フィドルを弾いてはいるが、それはアメリカン・ミュージックという文脈の中での1バリエーションにすぎないのではないか、という思いが、ふとよぎった。

 レパートリーもアイリッシュ一辺倒というわけではなかったし、本格的なアイリッシュの演奏にしても、ボウイングのリズムにアメリカン・フィドルを感じさせる瞬間がある。バックのメンバーも、リズムギターを除けば、純粋なアイルランド人ではない。ベーシストとタップダンサーに至っては、アフリカ系だった(ボーカリストも?)。

 正直言って、メンバー同士のリズム感が合わず、ぎこちない演奏になってしまう場面もなくはなかったが、それはそれでいいんだと思う。少なくとも、何の工夫もないアイリッシュ・ミュージックを延々と聴かされるよりは、なんぼかましというものだ。必ずしもベストの演奏とは言えなかったかもしれないけれど、現在のニューヨークの雰囲気を充分伝えるものではあった、と書いておこう。

 象徴的だったのが、コソボの状況を踏まえながら演奏されたレゲエ風の曲など、一連の歌モノだった。もちろん、ジャジーな雰囲気をただよわせたRights Of Manのアレンジなどにも、引かれるものはあった。とはいえ、あまりアイリッシュにこだわりすぎるのは、ファンにとっても、本人にとっても、いいことではないような気がする。

 客席に飛び込んでフィドルを弾きまくるなど、サービス精神満点だったアイリーンおねーさんのパフォーマンスは二重マル。もっとも、あの演奏をブルーグラスと言い張るのだけは、ちょっとかんべんしてほしかったが。

 

99年6月6日

David Lindley & Wally Ingram

 at 渋谷クアトロ

 僭越な言い方に聞こえるかもしれないが、デビッド・リンドレイというお人の、弦楽器に対するこだわり方には、おおいに共感するところがある。もちろんたんなるコレクターなんかじゃないんだけれど、かといってライ・クーダーのようにストイックな感じでもない。ひょうひょうと接しているようでいて、しっかりつぼをおさえているあたり、ぜひお手本にしたいもんだ。

 今回の日本ツアーは、ドラムス&パーカッションのウォーリー・イングラムとの2人旅。ステージに並べた楽器は、ワイゼンボーン・タイプのギターが4〜5本、ギルドの12弦ギター、VOXのベースを改造したというエレクトリック・マンドセロ、アイリッシュブズーキ(オクターブマンドリン?)、サズー……など。何を弾いてもデビッド・リンドレーの音になってしまうのが面白い。パーカッションとのデュオという編成も、好き勝手なことができる分、ベストな選択なんではないかと思う。

 しかし、ほんとにこの人はかっとんでいて、かっこいいよなぁ。年齢なんか超越しているようなところもあるし。欲を言えば、タンブールの弓弾きあたりも見たかったところだが。

 相方のウォーリー・イングラムも、数々のパーカッション類を駆使して、なかなか心地よいリズムを作ってくれたように思う。カウベル代わり(?)に、野球のヘルメットみたいなヤツを使っていたのもサイコー!?

 

99年7月18日

西岡恭蔵&KURO追悼コンサート

 at 日比谷野外音楽堂

 思いっきり場違いな書き出しかもしれないけれど、とっても楽しいコンサートだった。この季節にしては、暑からず、寒からず。吹く風はあくまでもさわやかという、奇跡のような1日でもあった。

 会場の入り口で買った缶ビールを飲みながら、次々と登場してくるゆかりのミュージシャンの演奏を聴く。大塚まさじのソロによる「サーカスにはピエロが」から、全員参加のエンディングとなったI Shall Be Rereased、「プカプカ」まで。妙に追悼コンサートを意識することなく、普段どおりのパフォーマンスをする人が多かったのが、なぜかうれしかった。

 出演者1人1人にまつわる思い出を書いていたら、おそらく単行本1冊くらいの分量になってしまいそうな気がする。とはいえ、あえてここで書くまでもあるまい。

 とくにパフォーマンスが印象的だったのは、リング・リンクス、いとうたかお、リクオ率いるザ・ヘルツ、石田長生と有山じゅんじを中心にしたロックンロールユニットといったあたりか。実は、いとうたかおさんを見るのは、雑司が谷のシアターグリーンで行なわれていたホーボーズ・コンサート以来なのだった。あれは、私が初めて自分の意思で出かけたコンサートだったかもしれない。

 

99年9月22日

Liam O'Maonlai

 at 原宿ラフォーレ

 22日はトラディショナル中心、23日はオリジナル中心ということで、どちらかといえば23日のほうに行きたかったのだが、ほかのライブの予定が入ったため、結局トラッドのほうを聴いてしまった。結論としては、それで正解だったかもしれない。

 今回はソロパフォーマンスということで、どんなステージを見せてくれるのかちょっぴり心配してもいたのだが、そこは天性のパフォーマー。ピアノ、ギター、ウィッスルといった楽器を駆使して、ぐいぐい盛り上げてくれる。キーラのロナン・オスノディがゲストで登場して、デュオの演奏を聴けたのもよかった。とくに、お客さんの手拍子なしで聴けたボシイ・バンドのカバーは最高。ライブの締めくくりは、リアムの熱いディジャリドゥ・ソロ。ロナンのボーランとの掛け合いも素晴らしかった。

 

99年10月14日

Preston Reed

 at 吉祥寺・スターパインズカフェ

 ずいぶん昔にフライングフィッシュから出ていたソロアルバムを聴いて、そのアメージングなフィンガーピッキングに度肝を抜かれて以来、ずっと気になっていたプレストン・リードの演奏を、ついに目の当たりにすることができた。なにしろ、今回のライブのMCで、やっとミネアポリスに住んでいるらしいことがわかったくらいで、私にとってはずっと謎の人だったのだ。

 オベーションのエレアコを使って自作のインスト曲を演奏する−−という情報は、事前につかんではいたのだが、実際に演奏が始まったら、またまたぶっとばされてしまった。まず想像していたよりもずっと背が高い! おそらく2mくらいはあるだろう。これで驚いたところへ、出てくる音がさらに追い討ちをかけてくる。

 ひとことで言えば、タッピング中心の演奏で、アコギを持ったスタンリー・ジョーダンという感じなのだが、出てくる音の印象は、まったく異なる。ものがアコースティック・ギターだけに、エレクトリックギターやスティックのタッピングとは違って、非常にパーカッシブなサウンドになるのだ。これにギターのボディを叩く音も加わったりするから、ますますリズムが強調されて、非常に気持ちがよかった。テクニック的にもかなり難しいことをやっていたようだ。

 普通の人なら、アコギでこんなことをやろうという発想自体、出てこないんじゃないかと思うのだが、このあたりが凡人と才人の差と言うべきか。もっとも、このスタイルだと、スローテンポな曲を情感たっぷりに弾くなどというのは、ほとんど不可能なはずで、みんな似たような曲調になってしまうきらいはあったかもしれない。昔やっていたような(フツーの)フィンガーピッキング・スタイル(実は、これもおそろしくユニークな音なのだが)も、もっと聴かせてほしかったような気もする。

 

99年10月18日

Cran

 at 吉祥寺・スターパインズカフェ

 オープニングアクトで出てきたエレクトリックバンドの音がサイテーだった上に、クランの演奏もあまり私好みのものではなかったため、「こいつは失敗したかな」とうんざりしかけたのだが、「松平さんに捧げます」と言って歌い出したコーラス(シャン・ノス)で、ガラッと雰囲気が変わり、あとはアンコールまで楽しく聴くことができた。

 松平維秋さんは、あの伝説のロック喫茶ブラックホークに始まって、スモール・タウン・トークやニューミュージックマガジン(当時)などを通じて、積極的にトラッドの啓蒙活動を行なってきた、いわば日本のトラッドの父のような人だ。その松平さんが、53歳の若さで亡くなり、ちょうどライブの当日に告別式が行なわれたというのを聞いていたので、Cranの歌う鎮魂歌は心にしみた。

 松平さんとは直接の面識はないものの、その著作を通じて、多大なる影響を受けたことは、まぎれもない事実だ。お礼を言う機会は永遠に失われてしまったけれど、この場を借りて「たいへんお世話になりました」と言わせてもらいたい。願わくは、その魂の安らかならんことを。

 さて、クランは、イリアンパイプ、フルート、ブズーキというトリオ編成のバンドだ。演奏はともかくとして、トリオのコーラスは、なかなかに分厚くて、心地よかった。

 それにしても、松平さんは、昨今のトラッドブーム、ケルトブームをどのように感じていらしたのだろうか? こんなときだからこそ、いままで以上に松平さんに頼りたかったところなのだが。

 

99年11月6日

David Grisman Quintet

 at 渋谷クアトロ

 直前に体験したワークショップのインパクトが大きかったもので、冷静にライブの良し悪しを判断できる状態にあったかどうか疑問ではあるが、それでもなかなかよいコンサートだったのではないかと思う。いまのDGQには、飛び抜けてテクニックのあるミュージシャンがいるとも思えないけれど、バンドとしてのまとまりは際立っていた。正直なところ、もう過去の人というイメージがないわけでもなかったグリスマンも、熱の入ったプレイを聴かせてくれたし、フルートやパーカッションの入ったドーグ・ミュージックも悪くないと再確認。

 ライブを見て初めてわかったのが、ジョー・クレイブンの口ハイハット。パーカッションだけではなく、口でリズムを作っていたとは、想像だにしていなかった。パーカッションだけでなく、フィドルやマンドリンも持ち替えでこなすなど、なかなか器用なプレイヤーである。

 アンコールは、なんと、どブルーグラスセット。しかもグリスマン御大がバンジョーとボーカルを担当するときたもんだ。メンバー全員が変名を名乗り、エンターテイメントに徹した音楽をやるあたり、アメリカで見たホット・ライズのステージを思い出してしまった。それでも、Old & In The Wayには、さすがにホロリときたが。

 選曲は、新旧取り混ぜたサービス精神満点なもの。ワークショップのときにリクエストしたOpus 38をしっかりやってくれたのには、ちょっとドキドキしてしまった。Japanのために用意してあったと思われるドラが、結局使われずじまいだったのは、いささか心残りではあるとはいうものの……。

 会場のクアトロには、デッドヘッズらしい姿も散見され、いまどきのブルーグラスコンサートとは、ひと味違った雰囲気だったことも付け加えておきたい。

 

99年12月19日

Carlos Nunez

 at 原宿ラフォーレ

 アルバム作りよりもライブのほうが得意なミュージシャン。逆にアルバムは最高なのに、ライブではそれほどでもないミュージシャン。どちらがいいと一概に決めつけることはできないが、今回のカルロス・ヌニェスのライブに関しては、どちらかと言えば、後者のニュアンスを感じた。

 ひとつには、これまでの2枚のソロアルバムが、あまりにも素晴らしいできだったためのジレンマもあったかもしれない。このあたりは、アイリーン・アイバースのライブとも共通する問題か。もっとも、前回、チーフテンズといっしょにきたときのライブでの演奏は素晴らしかったから、バックの問題もありそうな気がする。

 カルロス・ヌニェスは、スペイン、ガリシア地方のバグパイプ(ガイタ)奏者である。今回カルロスをバックアップしたメンバーは、フラメンコ・ギター&ベース、ブズーキ&ギター、フィドル、パーカッション&キーボードの4人。これにフラメンコダンスとボーカルのルナ、特別ゲストのドーナル・ラニーが、何曲かで加わった。

 スペインとはいえ、ガリシア地方はケルト文化圏に属するそうなので、アイリッシュ風のレパートリーも多い。こうした曲で、ドーナル・ラニーのブズーキが入るとさすがにリズムがしっかりして、聴きごたえがあった。その反面、フラメンコ的な曲などで、本来のリズムとはまったく異なる手拍子で観客をリードしようとした姿勢には、なんとなく営業ライブっぽいにおいも……。