平成18年2月作成 市民オンブズ奄美
昨年6月、私どもはクリーンセンターの最終処分場についての情報公開および実態調査、関係機関への申し入れを行った。その結果及び経過を報告する。
【最終処分場について】
名瀬クリーンセンターは、平成9年4月から稼働し、現在大島本島内の市町村の一般ゴミを受け入れている。燃えるゴミは焼却後、灰は最終処分場へ、燃えないゴミは分別・破砕後に最終処分場へ廃棄されている。これらの廃棄物は水を汚染するので、最終処分場は「管理型」といい、底面はコンクリート吹き付けの上にゴムアスファルトで防水し、汚染水(浸出水)が場外に漏れない構造となっている。総容量146,000m3のうち現在の埋立容量は全体の3割程度、ゴミ埋立面積は総面積17,400m2の5割程度である。昨年6月7日に我々が調査した結果、ゴムアスファルトの破損・劣化が、未埋め立て部分および埋立部との境界付近に所々見られ、また使用済み蛍光灯がそのまま廃棄されていた。そこで大島地区衛生組合に改善の申し入れを行ったところ、衛生組合から一ヶ月後に回答があり、ゴムアスファルトの破損については「破損箇所については、現在までに点検の上、全て補修済み」との回答だった。蛍光灯をそのまま廃棄している件については、「県下の主なゴミ処理施設に調査を行ったところ、23箇所中12箇所が専用のリサイクル業者に処理を委託している一方、残りの11箇所は本施設と同様埋立処理を行っている状況」との回答だった。
この回答から改善すべき課題を挙げると、ゴムアスファルトの破損等をすぐに発見できるよう毎日の安全点検を強化する必要があるだろう。また使用済み蛍光灯については埋立処分ではなく従来通りリサイクルするべきである。蛍光灯破砕機を導入すれば輸送コストを大幅に削減でき、水銀を漏らさず処理可能なので作業もより安全である。よその施設と比較するのではなく、どうすれば環境負荷を小さくできるかを考えるべきである。
なお、法改正により平成10年6月から最終処分場周縁の地下水の水質検査(年1回以上,2箇所以上)が義務づけられているが、調査地下水は処分場から遠く3kmも離れた下流域(奄美和光園のすぐ上)ではなく、汚水漏れ等による水質の異常を発見しやすい最終処分場直下の地下水を調査地下水とするべきである。この水質調査について衛生組合が処分場の直上は調査地点としているのに処分場直下を調査地点としないのは、汚水漏れを自ら認めていると疑われても仕方ないのではないだろうか。
【調整池について】
最終処分場内の浸出水(汚染水)を浄化処理する前に一時的に溜めておくのが調整池である。調整池の大きさ(容量)は日最大浸出水量から算出する。設計計算書では日最大浸出水量を 577m3/日とし、調整池の容量は安全性を考慮しその3倍の 1,731m3としている。
調整池の容量を日最大浸出水量の3倍とすることは安全性を考慮すれば当然のことであるが、問題は日最大浸出水量を 577m3/日としている点である。浸出水は降雨によって発生し、日最大浸出水量は、日最大雨量×処分場面積(埋立面積)となるので、日最大浸出水量を導き出すには当地における過去の気象データ(日最大雨量)に基づいて算出しなければならない。ところが設計計算書では、日最大浸出水量を 577m3/日 としているものの雨量データ等の添付資料もなく数値の根拠は一切示されていない。驚いたことに数値の根拠について直接、衛生組合、県、環境省にお尋ねしても誰も答えを持っていないのである。参考までに最終処分場は名瀬市の山間部にあり名瀬市街地より降雨量が多いと予想されるが、名瀬測候所(市内)の気象データは以下のようになっている。
名瀬市における日最大雨量(mm/日)
1位 547.1mm(1903年05月29日)
2位 538.5mm(1976年09月10日)
3位 424.0mm(1990年09月18日)
4位 421.5mm(1906年11月13日)
5位 416.4mm(1944年07月30日)
この気象データでみると日最大雨量は少なくとも547mm以上とすべきだが、仮に日最大雨量を500mmとして計算すると、ゴミ埋立により汚染水(浸出水)が調整池に入り込む面積は、処分場総面積の約半分(8,700m2)となっているので、日最大浸出水量は(0.5×8,700)= 4,350m3となり、必要な調整池の容量は(4,350×3)=13,050m3 以上でなければならない。現在の調整池の容量が実測で約2,000m3(設計は1,731m3)なので、計算上現在の6.5倍の容量の調整池が必要ということになる。逆に言うと現在の調整池では処分場の総面積の1/13(1,338m2)しか埋立使用できないということになる。埋立面積は今後も増える一方であり、浄水施設の水処理能力115m3/日と廃棄物質の水分吸収を考慮しても、処分場面積に比べ調整池容量が小さすぎる(逆に調整池に比べて処分場面積が大きすぎる)のは明らかである。このままでは梅雨や台風等の大雨時に浸出水(汚水)が調整池または処分場から場外へ溢れ出る危険性がある。実際私たちが昨年の梅雨時期に現地を視察したところ調整池が既に満杯の状態となっており調整池から汚水の流出跡もみられ(下写真)、処分場もダムのように擁壁の高さ近くまで水を溜めていた。本来、処分場は水を溜める設計構造にはなっていないはずだが水の行き場がないので溜めざるを得ないのであろう。衛生組合は外観上の問題から処分場から汚水を溢れ出させるのではなく調整池から場外に溢れ出させている(下写真)。しかしこの汚水はどこから溢れ出させようとも処分場の汚水そのものであり、これは重大な環境汚染事件である。また汚水を満杯に溜めることによる底面シートからの汚水滲出を併せて考えると、衛生組合は水源汚染・環境汚染を公然と行っているということになる。
上記事実はクリーンセンター最終処分場が水処理において構造的欠陥を抱えていることを意味している。私どもはこの件について衛生組合に緊急の申し入れを行ったが、衛生組合の回答は「国の技術審査を受けているので問題ない」(平成6年度の事業申請の認可が下りているという意味)と回答するだけで、当事者(衛生組合)に全く危機意識がないことに益々不安にさせられた。クリーンセンターのシステム維持管理には毎年約4億円余りが注ぎ込まれているが、場外に汚水を一切出さない安全なシステムが維持できなければ、これらの莫大な費用(公金)は全くの無駄となる。それとも大雨時の汚水垂れ流しははじめから想定内だったのだろうか。クリーンセンターの下流域には上方地区の地下水源(水道水源)があるため、衛生組合が定期的に水質調査(和光園・年4回27項目)を行っているという。衛生組合は水質調査をしているから安全性に問題はないとでもいうのだろうか?。わずか27項目の検査(当然ダイオキシン類や有害な環境ホルモン等は含まれていない)だけで水の安全性を論じるのは大変危険である。
衛生組合は現実に汚水漏れを発生させている以上、このまま事態を放置して重大な人身被害や環境汚染を拡大させることはどんな事情があろうとも許されるものではない。衛生組合にはクリーンセンターの管理者として大至急安全対策をとる義務と責任があり、何もせず事態を放置することは犯罪である。
1、処分場内のゴミ埋立の状況、埋立面積。
ゴミ埋立面積 全体の約4-5割 約6,960m2
2、雨水が調整池に入り込む面積。
処分場全体の約5割 約8,700m2
3、調整池の実容量(実測による概算)。
三角錐(逆)として算出。
(底面積629m2×高さ10m×1/3) 約2,096m3
5、防水マットの破損状況。
未埋め立て部分および埋立部との境界付近に破損箇所が所々見られる。なお埋立部分は調査困難。
6、埋立ゴミの内容状況。
使用済み蛍光灯およびセンター内の廃棄物が原形のまま廃棄されている。
【参考データ】
処分場の総面積 17,400m2
浸出水処理量 115m3/日
調整池の設計 1,731m3........(設計では最大浸出水量577m3/日×3日)
(注意)577m3は、1154m2(34m四方)内の500mm降雨時の総水量、又は17400m2(処分場面積)内の33.2mm降雨時の総水量。
〈調整池の必要容量算出表〉
(注)最大日雨量を500mmとし、埋立部分の雨は調整池へ、未埋立部分の雨はそのまま場外へ排出していることを前提としています。
処分場面積(A) 埋立割合(B) 埋立面積(C) 日降雨500mm(D) 調整池の必要容量(C×D×3)
17,400m2 1/15 1,160m2 0.5m 1,740m3
17,400m2 1/14 1,243m2 0.5m 1,864m3
17,400m2 1/13 1,338m2 0.5m 2,008m3
17,400m2 1/12 1,450m2 0.5m 2,175m3
: : : : :
17,400m2 1/6 2,900m2 0.5m 4,350m3
17,400m2 1/5 3,480m2 0.5m 5,220m3
17,400m2 1/4 4,350m2 0.5m 6,525m3
17,400m2 1/3 5,800m2 0.5m 8,700m3
17,400m2 1/2 8,700m2 0.5m 13,050m3
17,400m2 1/1 17,400m2 0.5m 26,100m3
名瀬市における日最大雨量(mm/日)
1位 547.1mm(1903年05月29日)
2位 538.5mm(1976年09月10日)
3位 424.0mm(1990年09月18日)
4位 421.5mm(1906年11月13日)
5位 416.4mm(1944年07月30日)
6位 407.0mm(1916年08月22日)
7位 398.6mm(1959年11月12日)
8位 397.9mm(1957年09月05日)
9位 393.0mm(1975年07月02日)
10位 372.5mm(1950年11月11日)
名瀬市における月間降水量(mm/月)
1位 1,480.1mm(1957年09月)