例1 子供の生活空間がどう広がったかを示すもの


ぼくのいえのまわり(小1)

ぼくのたんけんちず(小2)

ぼくのたんけんちず(小3)

東神楽ひじり野地区交通標しき調べ(小4)
学校の周りの樹木調査(小5)

ぼくの学校の回りの街路灯調査(小6)

 同じ子どもが描いたものである。小1から小6までどう生活空間が広がり、どう観察能力がついてきたかが6枚の地図を見てよくわかる。子どもの遊び空間は、その地域の物理的・地理的特徴の影響を受けながら、子どもの成長・発達に伴う空間行動の活発化により拡大していく。

 1年生の地図では、保育所、あそびば、学校のグランドにブランコなどが描かれており、1年生としての生活の範囲がよく描かれている。2年生になると、釣りやサッカー、プールで泳いだり、スキーをしたり、公民館前で踊ったり花火をしたりと1年を通して様々なことに取り組んでいることがわかる。また、木の種類によって集まる昆虫が違っていたり、畑の作物の種類をきちんととらえている。このように1年生では、自分の家を中心としてまわりにどんなものがあるかその位置関係を地図にしているが、2年生になると、それぞれの場所でどんな生活をしているかが描かれ、環境を観察する目もしっかりしてきていることがわかる。中学年になると自転車に乗って遊ぶ傾向が強くなり、急速に遊び空間が拡大する。 3年生では、調査の内容が大変詳細になり、ふだんの生活道路の6つのたんけんコース(川コース、坂コース、おつかいコース、公園コース、微生物たんけんコース、読書コース)についての分類が描かれている。道路の広さや川の大きさも区別して図化できるようになっている。

 中学年から高学年にかけては、一般図から主題図への移行の時期である。4年生では、生活地図から身近な地域を一つのテーマ「交通標識」で調べている。そして、調べた内容を地図に描くことによって次のような道路と標識の関係をつかんでいる。テーマを効果的に図に表すために必要のない情報は、省いており、基になる図を模造紙に描き、調査した標識は、シールで貼っていくという手法をとっている。5年生になると、樹木をていねいに調べ、樹種の色分けにも大変工夫している。しかし、調べることに力点がおかれ、地図にうまく表現できていない。この時期に環境を観察する感性を急速に発展させていることがわかる。そして、次に全体の中で調べたことがどういう意味を持つのか地図に表現することでわかるようになる。6年生では、ていねいな調査がおこなわれ地図上に街灯の分布が見やすく表現されています。


例2 同じフィールドを別の観点で調査したもの

名寄市リサイクルマップ(小3)
わたしと名寄の歴史マップ(小4)
名寄市ふれあいマップ(小5)

これも同じ子どもが描いたものである。リサイクルや障害者の施設、家族を中心に地域の歴史を地図にしたものである。それぞれ表現方法が工夫されていて、同じ地域でも違った観点で見れば面白いということがよくわかる。特に「名寄市ふれあいマップ」は、車イスの人の立場で各施設の利便性を紹介したり、点字やひもをつけて目の不自由な人でもわかるように立体的な地図にしたもので心のあたたかさが伝わってくる。


例3 違うフィールドを同じ観点で調査したもの

善福寺川公園の植物調査(高1)
わたしの身の回りの緑(豊田市小3) 
身のまわりのみどり 世田谷区経堂周辺(中1)

 同じテーマで日本の各地から出された地図は面白いのではないかということで第6回から指定テーマ「身のまわりのみどり」を設けた。作品数はまだ、少ないが、各地から出された作品から場所によって木や草花、作物の違いが分かる。
第6回「身のまわりのみどり」・第7回「音」・第8回「におい」・第9回「身のまわりの色」・第11回「風」
第12回「水」


例4 自分の足を使って調べた自分だけの地図

僕の家の近くの地図(小3)
ぼくの家からともだちの家まで何歩(小3)
電線・街灯・電柱調べ(小3)
町の川探検(小4)
緑が丘神りょう公園の周りのゴミ調べ(小4)
旭川の川の汚れ(小6)
ベビーカーの流れ〜港北ニュータウンセンター南駅前広場(中1)

 一目見て、よく歩いて観察したと感心するものばかりである「ぼくの家の近くの地図」は、友達の家族の様子、近所の一人暮らしのお年寄りの状況まで克明に子どもの目で観察してしていて楽しい地図である。さらに調べた家屋を会社、印刷所、食堂など十四の項目に分類している。「電線・街灯・電柱調べ」は、身近にありながら普段気にとめない頭の上の空間に目を向け、大変詳しく調べ、わかりやすく表現している。「旭川市緑が丘神りょう公園の周りのゴミ調べ」は、落ちているゴミを克明に調べ、うまく地図化している。赤は、お菓子類、青は、ジュース類(空き缶やビン)、白はタバコの吸殻、緑は、犬の糞、黄色は、その他(花火・ビニール・レシートなど)それぞれの落ちていた場所にシールを貼って地図化している。その結果、表通りに非常に吸殻が多いなど、いろいろな発見をしている。「旭川の川の汚れ」は川のまち旭川の川の汚れに注目し、ユニークな方法で調べている。


例5 子供たちのユニークな視点での地図

旭川彫刻よごれ地図(中1)
縁の下の力持ち(中1)
ホームレスの問題点(中1)
犬の散歩道〜文京区教育の森を中心に100匹の犬に聞きました〜(中1)
道路のひび割れ調査(中2)
神居地区の道路の凹凸状況(中3)
橋の落書き地図(中3)
町内飼い犬状況(中2)
消火栓所在地地図(中2)
雪山で自動車の視界がさまたげられる場所(中3)
星の数と大気汚染の関係(中3)
大久保路上言語地図(高1)
信号の長さ地図(高1)
生活の中の音(高1)
地面の温度調査〜犬の気持ちになってみる地図〜(高1)
あんてなMAP(高1)
恋する通学路地図(高1)

 環境には、自然環境と社会環境があり、調べるテーマはたくさんころがっている。私たちの身のまわりの環境ですから一人ひとり、関心の度合いもちがうはずである。

 「旭川彫刻よごれ地図」は、市内各地にある彫刻の汚れに着目、汚れ具合の違いを配色で分かりやすく表現している。「消火栓所在地地図」は、消火栓の分布を調べただけでなく、どこまでホースが引っ張れるか考えて図示している点がユニークである。「縁の下の力持ち」は地下に着目した点がすばらしく、自分の足で調査したことに加え、水道局や区役所などを訪れ、聞き取り調査も詳細に行っている。「道路の凹凸状況」は、道路の凹凸状況を赤と青色を使って表している。この図は、道路の凹凸の分布だけでなく、形や大きさも細かく表現している。道路にはうようにして調査した姿が目に浮ぶ。「星の数と大気汚染の関係」は、北斗七星の柄杓の中に星がいくつ見えるかを数え、場所によってどう違うかを大気汚染の状況を星の数で観測したもので、北斗の限られた範囲内の照度をとらえる工夫がなされているなど科学的環境を心がけた点が優れている。
「生活の中の音」はラジオという身近な道具をうまく利用して広い範囲の騒音を調べている。(ラジオから同じ大きさの音を出し、自宅から1.5キロの範囲でどのくらいの距離までその音が聞こえるかを計る)表現方法にも工夫が見られ、主要な道路が主な騒音源になっているのがわかる。


例6 さまざまな地域の環境がわかる 


ビリニュス近郊における蛾の種類(リトアニア)











ニノイアキノ児童公園野生生物センター(フィリピン14才)

マレ市の20年間における変化(モルジブ14才)

マスビンゴ州での予備選挙での不幸な出来事
(ジンバブエ12才)


私たちの水原(韓国10才)
自分たちのスラム地区(タイ14才)
私たちの町アムハースト(アメリカ16才)
キト市の衛生環境サービス調査(エクアドル14才)
三井炭坑の盛衰(高1)
私の住んでいるまち 現在の玉ネギ畑(中1)
和賀川扇状地に見られる屋敷森(中3)
鳥取県福部砂丘における耕作放棄地の拡大について(高1)
アンテナ(スリランカ)

 海外の作品を見ることによって環境というものの捉え方が国によって違うことがよくわかる。リトアニアのリムカイテさんは、3年間、同じテーマで応募した。広い範囲で、しかも数年間にわたって蛾の種類を調べ、蛾と自然環境との関係がどうなっているかを考察している。

 「私たちの水原」から水原市には、たくさんの文化財や遺跡があり、歴史の古い街だということがわかる。しかし、近年、工業化が進み、工場の排水で、貯水池が汚染されている様子も地図上に表されている。

 タイからの作品は、アジア最大といわれるクロントイスラムの子どもたちの描いたものである。しかし、これは環境の悪さを描いたのではなく、自分たちの地域が少しでもきれいな居住地となるような夢を図にしている。逆にこの地図からスラムに住む子どもたちの環境がよくわかる。

 アメリカの「私たちの町アムハースト」やジンバブエの地図などは、その町の様子が分かる。世界の子どもたちが、それぞれの視点で環境地図を描いてそれを交流したら、どんな生活をしているのかが具体的にわかるであろう。日本中や世界中からの子どもたちの作品を通して、相手の自然環境や文化を知ることができる。このように環境地図は、国際理解のための教材となる。



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