熱性けいれんに関して、アメリカの政府機関であるNIHから1980年に熱性けいれんに関する報告がされています。熱性けいれんとは6歳未満の小児が発熱に伴って起こすけいれん(ひきつけ)をさし、それは中枢神経系の感染症(脳炎や、随膜炎など)および他の明かな疾患(下痢・脱水など)によらず、また以前に無熱性けいれん(てんかん発作)の既往のないものとなっています。
一般に、熱性けいれんは学童以後には治るといわれていますが、稀に無熱性けいれんに移行する場合もあるので注意して経過を診る必要があります。ここでは熱性けいれんの特徴と、生活上の注意点を具体的に書いてみました。
1 熱性けいれんの特徴
a どの程度の頻度でみられるのでしょうか? こどもの約8%とされています。つまり秋田県では毎年1万人近い赤ちゃんが生まれていますが、そのうちの700〜800人の赤ちゃんが熱性けいれんを起こすという計算になります。男児にやや多い傾向があります。
b 最初のけいれんは何歳頃におこすのですか? 9ヶ月から3歳代頃が多いのです。約半数の子が1歳代でおこしています。そしてけいれんの回数は全体の1/2-2/3の子供が一生に一度しかおこさないのです。生後6ヶ月以前や5-6歳以後に熱性けいれんを起こすことは稀です。また、何度も繰り返したり3年以上の間隔で再発するのも稀です。
c 熱性けいれんをおこす体質は遺伝するのですか? 約半数の熱性けいれんの子供の父母・祖父母や従兄弟に熱性けいれんを経験した人がいて、強い家族内発生がみられます。しかし、けいれんはこどものうちだけで、多くの人たちは健康な成人になっています。人間の脳は強い刺激を受けるとけいれんを起こす可能性を持っており、特に子供の脳は熱に弱くけいれんを起こしやすいのです。その程度は人によって異なります。
d 何度ぐらいの熱でけいれんを起こしますか? 38℃以上です。半数が39℃以上とされています。しかも急性の発熱で、発熱から6時間以内にけいれんとなることが多いのです。ですからけいれんを起こして、はじめて熱に気付くことも少なくないのです。どうしてけいれんするのか原因は解っていません。しかし、発熱により一時的に何らかの脳の機能的な異常が起こるのではないかとする意見もあります。
e けいれんの症状はどんなふうですか? 急に眼球が上の方に吊り上がり(白目となる)、腕は肘で曲げて拳を肩につけるようにして小刻みに振るえ、足はピンと突っ張って硬くなるのが一般的です。その時顔色は蒼白かやや紫色になることもあります。持続時間は1−2分以下(5分以内が殆ど)です。けいれんの後に元の意識状態に戻るか、そのままグッスリ眠り込んだりします。四肢の硬直に左右差や局在性のあるけいれんや、クタッとなる脱力・無動となり意識のない発作、10分以上の長いけいれん、後で手足が動きにくく麻痺をともなうなどは極めて稀です。
f 治療を必要としない熱性けいれんはどの様なものですか? 以下の項目が全てあてはまる熱性けいれん(単純性熱性けいれん)はとりあえず治療を必要としないと考えられています。
1)初めての熱のひきつけは生後1歳−6歳。
2)家族(本人の従兄弟ぐらいまでに)に熱性けいれんの人がいるが無熱性けいれんやてんかんの人はいない。
3)精神や運動発達の遅れ、肢体不自由などがなく、しかも脳障害を起こし得るような重い病気をしていない。
4)けいれんの前に必ず38℃以上の発熱を伴っている。
5)けいれんは左右対称性で全身性。
6)けいれんは10分以下で終わり、後に麻痺等を伴わない。
7)脳波上てんかん性異常波を伴わない。(当院で、脳波検査できます。)
8)けいれんの回数は少なく(年に4回以内)、24時間以内に2回以上反復することはない。
g 無熱性けいれん(てんかん)にどのくらいの頻度で移行するのですか? 熱性けいれんからてんかんになる頻度は3〜5%であり、一般頻度の6〜8倍多いとされています。ではどんな熱性けいれんがてんかんになりやすいのでしょうか。上記fの項目からはずれるこどもを全て治療すると、その数は熱性けいれん全体の30〜40%となり余りにも多くなってしまいます。それにてんかんへの移行がわずか3〜5%であることから考えても非合理的です。そこで、この単純性熱性けいれんからはずれるこどもの中から、本当に治療したほうがよいお子さんを医師はいろいろと考えた末決めます。さらに、良性のけいれんでも家族がけいれんの再発を強く心配し治療を望むことも少なくありません。具体的には以下の3つの場合があります。
1 とりあえず治療は必要としないが、経過をみる必要がある。 2 発熱時、もしくはけいれん時のみ坐薬(抗けいれん剤)を使用し、脳波検査を 含め十分に経過をみる必要がある。 3 てんかんへ移行する可能性が強く、しばらくのあいだ継続的に薬を服用する必要 があり、慎重に経過をみたほうがよい。 |
2 けいれん時の対処と注意事項
a けいれんの時にはどうしたらよいのですか?
・落ち着いて静かにそっとし、吐き気やヨダレが多い時には顔を横にむけて下さい。
・口に物や指を入れる必要はありません。誤嚥や呼吸状態に注意して下さい。
・衣服を緩めて、周りに危険なものがあれば取り除いて下さい。
・けいれんが終わり意識が回復するまで必ず誰かがそばにいて下さい。
・けいれん時の顔色、目の向き、左右差、手足の状態、体温を観察し記録して下さい。
・けいれん持続時間を記録して下さい(けいれんが起きたらすぐに時計を見て下さい、大変に長く感じるかもしれません。できるだけその間にしたことを具体的に振り返って見て下さい。けいれん後の睡眠時間を間違えて、けいれんの時間の中に入れないで下さい。)
b けいれん時の処置は? 医師からの指示でけいれん止めの坐薬を用いるように言われている場合は、けいれんを観察しながら速やかに挿入して下さい。そしてその後医師を訪れた時に、坐薬の名前とその量を報告して下さい(抗けいれん剤の持続投与をしている場合は内服薬の内容と同時に報告して下さい)。
c どんなとき病院に行ったらよいですか? 以下の場合は救急に対応できる病院に処置を依頼して下さい。
1 けいれんが10分以上続き、止まる様子がない場合。
2 けいれんによって外傷を受けた場合。
3 全身状態が悪い場合、いつものけいれんと様子が違う場合。
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熱が出たときにはどうしたらよいですか? 熱が出てしまったらいたずらに心配するだけではなく、けいれん予防の座薬についての指示を受けている人はけいれん予防の座薬を、そうでない人は熱冷ましの座薬を決められている指示どおりに挿入するとよいでしょう。栄養よりも水分の補給(薄めたスープ・みそ汁やスポーツドリンクなど)に努めて下さい。小量ずつ頻回に与えて下さい。熱を出さないようにする方法はないし、風邪をひかせない方法もありません。熱が出たとき重くならないように、普段から薄着にし、体力をつけて下さい。そして熱を恐れるあまり過保護にならないようにしましょう。
e 日常生活の配慮は? 熱性けいれんがあっても日常生活には全く支障はなく、生活上の制限は不要です。健常児としてのしつけをして下さい。
f 予防注射は受けてもいいですか? 一般的には熱性けいれんがあっても予防接種は可能です。ポリオ、ツ反・BCGは安全で可能です。また麻疹や三種混合も必要な予防注射です、体調の良い時に受けるようにしましょう。場合により医師と相談して下さい。
3 薬をしばらくのあいだ継続的に服用する必要のあるお子さんの注意事項
a 薬は必要ですか? 医師と家族との話し合いで服用が必要となったらやはり薬は飲むべきです。服用により熱性けいれんの再発は十分に防止できるとされています。あっても1〜2回の再発のようです。長時間続くけいれんなどによる、二次的障害の危険が防止できると考えられます。
b 薬はどのように飲ませますか? 1日2(〜3)回、朝(昼)夕に服用して下さい。時間はそれほど厳密にする必要はありません。食後でも、食前でも構いません。大事なことはきちんと忘れずに服用することです。吐いてしまった時は、30分以内で量が多い時は、もう一包、それ以外では半量を追加して下さい。また、風邪などの病気の時ほど薬は必要です。通常の薬と一緒に服用して問題となることは稀です。一緒に内服させて下さい。
c なかなか薬をのんでくれませんが?
・基本的な食事であるミルク、牛乳、ごはんに薬をまぜて与えるのはやめて下さい。
・水薬はよく振ってスポイト、スプ−ンで少しずつ舌の奥の方へ入れて下さい。
・薬の苦みを消すために氷などを入れて冷たくするのもよいでしょう。
・少量のジュースや砂糖湯に混ぜるのもよいでしょう。
・乳児の場合は、お母さんがよく手を洗って指先につけてこどもの舌の上か、頬の内側にぬ りつけて、そのあと砂糖水などをのませるのもよいでしょう。
薬は小さな子供の手の届かないところに保管して下さい。
年長児には十分にその必要性を理解させて服薬させて下さい。
子供に任せきりにせず家族(母親)が服薬を確認することが必要です。
d 薬は安全ですか? 全く安心とは言えません。しかし、熱性けいれんで使われる抗けいれん剤は最も歴史のある薬でその副作用は稀であり、十分に注意すれば副作用を未然に防ぐことが出来ます。服薬開始後1〜2週間の間、軽い眠気や薬疹等のアレルギー反応の出る可能性はあり得ます。万一異常に気付いた時にはすぐに報告し診察をうけましょう。また定期的な検査も行います。(1年に1〜3回の頻度で行っています)。薬を飲んだり飲まなかったりでは効果がありません。忘れずに服用して下さい。
e 何時になったらやめられるのですか? 一応の目安は学齢まで、けいれんがなくなって2〜3年とされています。しかし脳波に異常が続く場合にはてんかんに準じて治療を続行することもあります。ほとんどの子供が薬をやめることができ、健康な学校生活を送っています。根気よく治療を続け、悔いなく完全に治しましょう。