てんかん


1.はじめに
 医師から「お子さんはてんかんです。お薬を飲まなければいけません」と言われても,「そうですか」とすぐに納得できる人は少ないと思います。  ここに簡単ですが「てんかん」についてご理解頂くために、一般的なことを少し書き出してみました。参考にしてください。
2.てんかんとは
 さまざまな原因で起こる脳の慢性的な病気です。ある部位の大脳神経細胞に電気的な異常(電気的な乱れ)が過剰に発射し、それが脳波上にも現れます。脳の電気的な乱れに伴って、何らかの症状を示し、それを反復するものをてんかんと言います。意識の無くなることが多いのですが、部分的な発作では意識の有ることもあります。 必ずしも痙攣が症状とは限りません。  <脳波とは脳からの電気的な動きを頭の表面で測定する器械です。>
3.お薬について
 てんかんの治療は、長期間の抗てんかん剤の継続内服が一般的です。薬の種類、量は本人の年齢、体重、症状(発作の型)及び脳波の所見等により個別に処方されます。
 医師の指示どうりに毎日忘れないように、一定量必ずお飲み下さい。調子が良いからと自分勝手な判断で薬の量を調節したりしないで下さい。
 内服を開始直後少しの間は、薬の反応として、眠気、ふらつき、落ち着かないなどの神経症状を来すことがあります。内服開始後1週間〜10日位から発疹(薬疹)を来すことが非常に稀にあり得ます。この場合はすぐに来院下さい。その他心配なことがある時は、来院時医師にお話しください。 しばらくは緊張感もあり、忘れずに薬を飲むことができると思いますが、長期の服用中には、うっかり飲み忘れていたと訴える人が時にあります。このようなとき、ちょっとしたからだの不調なども誘因となり、発作が起こる事も珍しくありません。それは、薬の血中濃度が適切に保たれていなかったためです。  「ご飯を食べるのを忘れても、薬を飲むのを忘れるな」というぐらい内服は大切です。薬の管理がご自身でできる方は、一日の習慣として身につけましょう。旅行、外泊などの際は、必ず携帯するよう家族の方も協力してあげましょう。また、抗てんかん剤内服中に風邪や腹痛などで近医を受診される時があると思いますが、特殊な病気以外は他の薬と一緒に飲んでもかまいません。
4.定期検査について
 医師より「そろそろ検査をしましょう」と指示があれば受けましょう。
 脳   波 (当院にて、脳波検査できます。)
 少なくとも年に1回は発作が起こらなくても検査を受けて下さい。脳波は予約制ですので、来院時、事務または看護婦に申し出て下さい。当日はなるべく入眠しやすい状態(前夜は遅くまで寝かせないで、朝は早く起こして睡眠時間を短くする)にして、排便(浣腸)もすませておいて下さい。
 血液検査と検尿
 薬を内服している期間は少なくとも年に2回は血液検査と検尿を受けて下さい。抗てんかん剤は稀に(数千人に1人位)肝臓や、血液に副作用が出る場合がありますので、定期的な検査が必要です。
 血中濃度について
 薬は血液の中で、ある一定濃度になって、効き目があらわれます。血液濃度が安定し、一定になるには1〜4週間を要し、そのころに血液を採り、薬の濃度がどの位か確かめます。薬の濃度があまり低ければ、効果がありません。また高くなれば、今度は副作用が出てきます。ですから抗てんかん剤は血中濃度をはかりながら服用します。  始めは、発作の型や年齢によって薬の種類を選択し、発作が抑制されるまで少しずつ増量していきます。
5.日常生活について
 日常の生活は、発作がないときは特に制限しません。発作があってから余り日数が経っていないとか、時々、まだ発作を繰り返している方は医師に相談して下さい。  大切な事は、てんかんは特別な病気でなく、その子の特性だと思い、特別な扱いをしないという事です。病気を恐れて日常生活に制限を与える必要はありません。かわいそうだからと家庭で慎重になりすぎたり、お子さんのいいなりになったりする傾向があります。また、園や学校で、「危ないことはさせられない」と必要以上に子どもを規制することは、発達していく子どもを萎縮させ、自信喪失の原因にもなります。  お子さんが病気について理解できる年齢になったら、お母さんからだけでなく、医師から直接本人に説明してもらうのがいいでしょう。病気であることを知らないと薬を飲む意義が理解できず、怠薬の原因となり発作が起きたりします。 生活の基本は充分な睡眠、便通を整える、栄養あるバランスのとれた食事、規則正しい活気ある生活です。運動は制限する必要はありません。むしろ、活発に遊びを勧めてあげましょう。体を動かした後は、ぐっすりと眠れて快調になります。  入浴は、あまり長湯をしたり熱いお風呂に入ると気分が悪くなったり、発作を誘発したりする場合がありますので気をつけましょう。  特に季節の変わり目は体調を整えてストレスを避け、感染予防に気をつけて下さい。事故はめったに起こりませんが、常に次のようなことには気をつけて下さい。
  *堅いもの、とがった物を置かないようにする。
  *スト−ブの配置に気をつけて、“やかん”等、物をのせない。
  *戸外で河岸を歩いたり、プラットホ−ムの端を歩く時は注意する。
  *木登り、自転車、旅行時、外泊時等注意する。
  *両親同伴の時、学校での水泳はかまいませんが、集団での海水浴・水泳については
   医師と相談して下さい。
  *自動車の運転は危険です。
  *予防注射については、医師と相談して下さい。
 両親はゆとりを持って、お子さんがのびのび育つように経過をみていきましょう。
6.発作時の処置と対応について
 どのような場合でも、決してあわてず冷静に対処してください。
 発作は長くて数分間のことが多く、生命に別状があったり、病気が重くなるような事はありません。
 15分以上続いたり、次々反復して起こるときは至急受診して下さい。
1)けいれん発作のとき無理に制止したりせず、危険防止に努めて下さい。
 (1) もし、立った姿勢の場合は、転倒による外傷を防ぐため、素早く四肢と体を支えて、仰向けに寝かせて下さい。
 (2) 周囲の危険物を取り除いて下さい。(火気、ガス、電気等による危険防止。)
 (3) 衣服のボタンを外し、バンド・ネクタイ等をゆるめにしてあげて下さい。
 (4) けいれんがおさまりかけたら、顔を横に向けて下さい。やがて回復する呼吸の気道を確保するために、舌根の沈下を防ぐためです。この処置で顔面蒼白や、口唇のチアノ−ゼ(青藍色)は回復します。
 (5) 吐物、唾液(つば)、発汗があれば拭き取って下さい。
 (6) 舌をかみそうだと閉じている口を無理に開け、強引に堅い物をはさむことは、歯や歯ぐきをいためたり、呼吸をしにくくし窒息の原因にもなります。
    口の中に物を入れたりしないで下さい。
 (7) 発作を起こした場所が不適当であれば、なるべく早く安全な場所へ移して下さい。
 (8) 発作がおさまった後入眠したら、自然にさめるまで、静かに寝かせて下さい。 2)発作中に注意して観察する点
 (1) 体のどの部分からどのような型で始まりましたか。
 (2) どの位の時間続きましたか。
 (3) 意識はありましたか。呼びかけに反応しましたか。目は開いて固定するか、白目をむいていましたか。または、右か左どちらかにかたよっていましたか。
 (4) 顔面または口唇にチアノ−ゼ(青藍色)がありましたか。
 (5)発作を起こす前に何か変わった様子はありませんでしたか。
 (6) おしっこや、うんこをもらしましたか。
 (7) 発作の後、頭痛や吐き気、または吐いたりしましたか。
7.おわりに
 「遺伝ですか」と質問をよく受けますが、ほとんどは遺伝ではありません。治療を続けながら結婚生活にも入られ、無事に健康な赤ちゃんを出産されるケ−スは沢山あります。ただし、妊娠前・妊娠中には、担当の医師との密接な連絡が大切です。  本人も病気であるからとひくつにならず、周囲も温かい目で見守り、てんかんを克服するように努力していきましょう。  その他、相談したいことや、心配な点がありましたら、遠慮なく医師または看護婦にお話下さい。