K.Story

このコーナーでは鎌倉に暮らしていて感じたこと、
鎌倉で仕事をしていて気づいたなどをコラムにしてお届けします。

Vol.001
ポストの話
鎌倉のまちを歩いていると思いがけず、懐かしいものが残っていてうれしいことがよくあります。それは古い家のなかに見える家具だったり、看板だったり。丸いポストもそのひとつ。まちのあちこちに昔ながらの赤くて丸いポストが今も現役で活躍しています。ポストはまわりの景色に溶け込んで、本当にずっと昔からそこにあったよう。それこそ、数え切れないひとの物語を受け入れて、届けてきたのでしょう。
郵便局の方にとっては、きっと新しいポストの方が機能的なのでしょうが、鎌倉にはこれからもずっとこのポストが残って、新しい物語をつくってくれたらいいなと思います。
Vol.002
江ノ電の話
テレビドラマやCMでもたびたび登場する江ノ電は、正式には江ノ島電鉄線っていいます。でも長くても四両編成しかないこの電車は江ノ電って呼ぶほうがお似合いだと思います。江ノ電は鎌倉駅から藤沢駅の短い区間を約35分かけて、のんびり走っています。江ノ電の魅力は、このたった30分の間に、トンネルがあって、海が見えて、鉄橋を渡って、おまけに短い区間ですが、路面電車のように道路の上まで走ってしまうという鉄道の旅の要素が詰まっていることではないかと思います。
 休日の混んでいる江ノ電でなく、平日の江ノ電に乗ると人々の暮らしのにおいがあふれていて、ちょっとほっとした気分になります。
Vol.003
桜の話
鎌倉の桜で有名なところと言えば、源氏山公園、段葛、鎌倉山あたりが頭に浮かんできます。桜の時期の鎌倉山は、休日など自動車が進まないくらい渋滞してしまっていたりします。でも、そんな桜の名所でなくても、小さなお寺の境内や家の庭先などで、春の陽射しに精一杯の花を咲かせている桜の木をまちのあちらこちらで見かけます。たまには一本路地を入って、そんな新しい発見をするのも鎌倉らしい休日の楽しみ方ですね。
Vol.004
橋の話
泉水橋、虹の橋、華の橋、琴弾橋・・・市の中心部を流れる滑川(なめりがわ)に架かる橋の名前です。きれいな橋の名前だと思いませんか。他にも長谷にある美奈能瀬橋、極楽寺の針磨橋、稲村ガ崎の音無橋、そして七里ヶ浜の行合橋と鎌倉には由来のありそうな橋がたくさんあります。それはきっと、街は変わっても、川の流れだけは武士たちが活躍していた時代から変わらずにそこにあるからかも知れません。そして、そんな橋から川の流れを見ると、そこだけは時間が止まったような気持ちになります。
Vol.005
路地の話
写真は小町通りや若宮大路から一本入った路地です。仕事で歩くときは、人通りをさけて路地を歩きます。戦災にあわなかった鎌倉には、駅の近くでも懐かしい雰囲気の路地がたくさん残されています。人が少ない分、その季節ごとの風を感じるような気がします。そんな路地のひとつひとつが鎌倉の魅力のひとつだと思います。
2004.11
Vol.006
ビーチグラスの話
海に行くと、貝殻とか、ビーチグラスをついつい探してしまいます。ビーチグラスは海に落ちたガラス瓶のかけらが、波に洗われて、角がとれて丸くなったもので、淡いブルーやグリーンなどいろいろな色や形のものがあります。拾ってきたビーチグラスを部屋に置いておくだけで、潮騒が聞こえるような気がします。最近はビーチコーミングといって、砂浜に流れ着く漂着物を拾い集めたり、集めたもので作品をつくったりする人もたくさん増えました。同じ鎌倉の海でも、由比ガ浜と七里ガ浜では、流れ着くものが違っていたり、いつでも落ちているとも限らないし、それはそのときの風や波次第というところが、ビーチグラスの魅力なのかも知れません。   2005.6
Vol.007
さくら貝の話
“さくら貝の歌”という歌をご存知ですか。
昭和24年頃に流行った歌です。
うるわしき さくら貝ひとつ 去りゆける きみに捧げん・・・。
この歌は、由比ガ浜の近くに住んでいた青年が、18歳で亡くなった恋人を偲んで詠った短歌がモチーフになってつくられたそうです。由比ガ浜には、今でも薄いピンク色をしたさくら貝の貝殻が流れ着きます。本当に薄い貝殻なので、少し強い力で持つと割れてしまいます。そんな儚さと美しさがさくら貝の魅力なのでしょう。2007.4.
Vol.008
鎌倉石の話
お寺の山門に向かう石段、長い年月踏みしめられてきて、すり減って自然の土に還りつつあるような感じ。あるいは、古い街並みに似合う住宅の境界の石積み、角がとれて丸くなって、少し苔むしたような感じ。『鎌倉らしい』と感じる風景の脇役に「鎌倉石」の存在が大きな役割を演じているような気がします。
鎌倉石は、鎌倉時代のころから、浄明寺、十二所、極楽寺など地元の石切り場で切り出され、江戸時代には、一旦衰退したようですが、明治に入って再び活発化して、当時の別荘建築の石組みに使われていたようです。
現在は、石切り場の大部分が古都保存法の対象地域に入っていることや住宅地に隣接していることから、採掘ができなくなっていますが、ある意味“地産地消”の先駆けとも言えますね。もともと、鎌倉に自然に存在していたものだから、古くなっても『鎌倉らしい』のだと思います。(参考文献 鎌倉別荘物語 島本千也著)2009.11.

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