建築・まちづくり計画における住民参加手法としてのワークショップの研究
〜コミュニティの自律化をもたらす計画論〜
概 要
住民参加のまちづくりの現場において、まちづくりワークショップはこの12年間に大きな広がりを
見せている。
住民参加の手法として普及の時期を経た今、まちづくりワークショップの質を改めて問う段階にきて
いると考えられる。既往の論文によれば、まちづくりワークショップには、「デザイン・計画の手法と
しての有効性」と「地域住民が地域環境の課題解決に向かう意識を育むプロセスとしての有効性」の2
つの面があるとされている。いわゆるワークショップの短期的目標と長期的目標である。
長期的な目標には、「ひと」「もの」、「こと」の他に「とき」という時間の概念が重要である。本論
文のオリジナリティは、まちづくりワークショップの参加主体の関係の場として「コモンズ」を概念提
起することによって、まちづくりワークショップをコミュニティの自己組織化との関係の中で論じる視
点にある。
まちづくりワークショップによってコモンズが創発され、参加による計画行為を媒介としてコモンズ
は活性化し段階的に発達していく。その結果、コミュニティの中にコモンズが島のように形成され、新
たな関係性を創発しつづけることでコミュニティ自体は、ゆっくりと自己組織化のプロセスの中で自律
化していく。このプロセスを実践の場を通して検証する。本論文は、コミュニケーション技術としての
まちづくりワークショップがコミュニティに与える影響に着目しつつ、ワークショップの意識を育むプ
ロセスとしての有効性に焦点を当てた研究として位置づけることができる。
目 次
第1章 序論
第1節 課題の背景
第1項 計画研究の方法論上の位置づけ
第2項 時代認識・状況認識
第2節 参加と創発のデザインを実現するまちづくりワークショップの広がり
第1項 まちづくりワークショップ手法の系譜
第2項 日本におけるまちづくりワークショップの展開
第3節 研究対象について
第4節 研究の意義・目的
第1項 ワークショップにより形成されるコモンズの概念提起
第2項 ワークショップに期待される2つの効果
第5節 研究の枠組みと方法
第1項 本論文の枠組み
第2項 研究の方法
第2章 まちづくりワークショップのプロセスデザイン
第1節 ワークショッププロセス評価表によるプロセス分析
第1項 ワークショッププログラムの役割分類
第2項 ワークショッププロセス評価表の作成
第3項 調査対象事例のプロセス分析
第2節 三鷹市丸池復活プランづくりワークショップ(1997年)
第1項 研究の目的
第2項 丸池復活プランづくりワークショップの経緯
第3項 丸池復活プランづくりワークショップの概要
第4項 コミュニケーションの場としてのプロセスデザインについて
第5項 コミュニケーションシステムとしてのまちづくりワークショップ
第6項 まとめ
第3節 まちづくりワークショップのプログラムを読む
第1項 みんなでつくる新飯野診療所ワークショップのプログラムを読む
第2項 南芦屋浜団地コミュニティアート計画ワークショップのプログラムを読む
第3章 コモンズを創発するまちづくりワークショップ
第1節 江戸川区篠崎駅西部区画整理事業のワークショップ(1997年)
第1項 研究の目的
第2項 研究の方法
第3項 調査対象地区について
第4項 ワークショップによる参加のプロセスデザインについて
第5項 ワークショップに現れた参加者の「意識」
第6項 コンテスト・グラウンドの形成について
第2節 江戸川区篠崎駅西部区画整理事業のワークショップ(1998年)
第1項 まちづくり協議会の活動の流れ
第2項 計画案づくりのプロセス
第3項 「まちづくり協議会」の変容プロセス
第4項 「計画」づくりと意識変容の関係について
第3節 江戸川区篠崎駅西部区画整理事業のワークショップ(1999年)
第1項 まちづくり協議会の設立と活動の流れ
第2項 まちづくり協議会の発展段階を形成する活動の節目
第3項 5つのステージに見られるコモンズの集団的意識の変容
第4項 コミュニティの合意形成プロセスにみられる段階性
第4章 参加の施設づくりにおける合意形成手法の開発
第1節 ワークショップによる設計を目指して
第1項 何故ワークショップによる設計なのか
第2項 ワークショップと設計プロセス
第3項 ワークショッププロセスから形を生み出す手法
第4項 ワークショップは人を育てる
第2節 ワークショップにおけるプログラムの役割
第1項 みんなのつぶやきを引き出すビジョンゲーム
第2項 リアリティに根差した面積配分ゲーム
第3項 参加者全員が参加できる旗上げアンケート
第4項 議論を生み出すデザインランゲージ
第5項 参加者を饒舌にする原寸体験ゲーム
第6項 施設づくりのためのデザインゲーム
第3節 創造的合意形成ツールとしての「デザイン・ランゲージ」の開発
第1項 デザイン・ランゲージの理論的背景
第2項 デザイン・ランゲージの開発経緯
第3項 デザイン・ランゲージの作成プロセス
第4項 デザイン・ランゲージによる創造的合意形成
第5項 まとめ
第4節 「宮城野文化センター基本理念」と「宮城野文化センター物語」
第5章 コモンズの発達とコミュニティの自己組織化
第1節 暮らしの全体性の回復を目指すまちづくり
〜玉川まちづくりハウスの活動事例から〜
第2節 耕すようにまちを育てよう
第1項 地域のオープンスペースが生み出す「新しい公共」概念
第2項 二つの公園の物語から学んだこと
第3項 まちづくりワークショップの有効性
第4項 まちづくりワークショップにおける専門家の新しい役割
第6章 まとめ
第1節 まちづくりワークショップが育むコミュニティ
第2節 ワークショップによるコモンズ創発にみられる5つのレベル
第3節 「育み」の計画論の提起