バ ル ト 海 沿 岸 料 理 Прибартийская кухня
エストニア料理 補遺1
エストニア料理 補遺2 ('98.10.6)
バルト海沿岸 (エストニア、ラトビア、リトワニア) 料理には、自然条件とバルト海沿岸諸民族の歴史的発展が似ていることから、共通した幾つかの特徴がある。涼しく、雨の多い夏、砂質粘土の土壌、松とかしわ林、広い草地と沼沢、海に近いこと、水の多い川と大きな湖、これらすべてのことが一体となって、バルト海沿岸諸民族にとって主要な食品素材となったのが、次のものであることを助けた、その食品素材は、ライ麦と大麦、かぶらときゃべつ、えんどうと麻
(あまり暖気を好まず、手のかからない穀作物や野菜) 、きのこと森の液果類{主にチエルニーカ
(Vaccinium myrtillus ) 、プルスニーカ (Vaccinium vitis-idea)(いずれもこけもも)
、つるこけもも、魚 (にしん、パルト海にしん、わかさぎ、かわめんたい、川かます)
である。
農業に適しない半沼地や、灌木が半分をしめ、氷河の運んできた丸石に覆われた土地が多くあることは、牧草の早い更新をうながす湿気の多い気候と組合わさって、これらの土地を耕地ではなく、牧場に利用する理由となり、乳用畜産の発達を可能にした。18世紀以後、バルト海沿岸では、ロシアより約100
年も早く、じゃがいもが栽培されるようになり、それとともに養豚もさらに発展した。じゃがいもは、ラードや乳製品とならんで、バルト海沿岸民族の、民族料理の基本的な材料になっている。
バルト海沿岸料理の形成に対する歴史的条件の影響について言えば、6 世紀にわたってバルト海沿岸の支配階級の料理であったドイツ料理の影響が、ここの最も一般的な要素だった。エストニア、ラトビア、リトワニア料理は、ほんの一部分ドイツ料理の配膳法をうけいれているが、そのかわり多くの点で、その調理法と味の全般的な傾向を自分のものにしている。調味料としてバター、生クリーム、牛乳、スメタナがしばしば使われるバルト海沿岸料理に、焼いたのではなく煮たものが、また刺激的で辛いものでなく、薄味の料理が多いのは、このようなことからである。
挽き割り、じゃがいも、粉物その他澱粉を含む料理、例えばキショーリ、パン・スープ、じゃがいも粉の菓子が多いことと、豚のソーセージを食べ、幾つかの料理の材料としてビールを利用することは、すべてのバルト海沿岸料理だけの、歴史的にはドイツ料理の影響を多くうけて生まれたもうーつの共通の特徴である。
一方、共通の特徴とならんで、エストニア、ラトビア、リトワニア料理には、それぞれ、その歴史的発展の特質と密接に関連する民族の特徴がある。
エストニア料理は、フィン・ウグル語民族料理として、フィンランド料理に近く、全体として「海洋」料理の要素が強い、そこでは海魚
(にしん) の魚料理が、ラトビアさらにリトワニア料理よりはるかに重要な役割を果している。その他エストニア料理は、ドイツだけでなく、スエーデン料理の影響をうけた、
(17〜18世紀) の約100 年間、エストニアはスエーデンに属していた。
ラトビア料理 ラトビア料理を都市の料理からみれば、最もドイツ的であり、農村料理とくにラトガーリャやクールゼマ料理から見れば、それは最も古い独特の特徴を保っていた。
リトワニア料理はその源泉は、古代ロシアのポーラック料理に近く、その後長い間ポーランド料理とともに発達し、それから調理技能だけでなく、重要な種類の料理をうけいれたが、一方では、ポーランド料理をその民族料理で豊かにした。リトワニア料理はドイツ料理ではなく、スラブ料理にきわめて近いことが特徴である。それは、バルト海沿岸料理の中で「海洋性」が最も少なく、むしろ「森林性」が強い、すなわち海よりも、森の贈物を最も多く利用している。それでリトワニア料理には、野鳥やとくに上質の野生動物
(猪と大鹿の肉) 料理の数が多く、蜂蜜や液果が広く利用されている。
バルト海沿岸諸民族の民族料理の、これまであげた共通の特徴と、それらの間の最も大きい違いもそうだが、ラトビア、エストニア、リトワニア人の民族料理の特質をすべてあげたものではないが、幾つかの異なる料理傾向の中で、バルト海沿岸料理が占める特別な地位を、もっとよく理解する助けになるであろう。
エ ス ト ニ ア 料 理 Эстонская кухня
エストニア料理は、19世紀末から20世紀のはじめに形づくられた特殊な民族的特徴を、今まで最も完全に保っている。まず強調しなければならないことは、エストニア料理の食品素材も、調理法も、調理手法もきわめて単純で、この単純さがあらゆるものにあるのでなければ、調理に手をぬいたと思われるほどだ、ということである。
エストニア料理の食品素材のなかで最も特色のあるものは、魚、牛乳、スメタナ、生クリーム、脂身のない豚肉やべーコン、牛、豚のもつ、じゃがいも、きゃべつ、えんどう、かぶらである、さらに牛乳とじゃがいもは、大部分の料理にかならず入れられているが、エストニア料理で使われているほとんどすべての材料と組合わされている。その材料には、他の民族料理では組合わされないようなものも含まれている
(たとえば、牛乳とえんどうや魚、じやがいもを菓子の材料として組合わせる)
、この場合、この特異な組合わせの割合や調理法は、それらが最終的に美味しい料理となるようなものである。
調理法について言えば、エストニア料理は明らかに「煮物」料理である。野菜、肉、魚、たまご、きのこはすべて、まずゆでられる。もちろん、これはエストニア料理に焼き
(炒め) 料理がないということではない。焼き (炒め) 料理もあるが、他から借りてきたものなので、そう数が多くない。エストニア料理は、焼く処理を知ってはいるが、使われるのはきわめてすくなく、しかも補助的なものとしてしか使われていない。その上、エストニア風の炒め
(焼き) 物料理は、 (バターではなく) 牛乳・スメタナや牛乳・粉の中で炒め (焼かれる、出来あがった料理は、半分炒められ、半分煮たようなもので、炒められた材料の跡がない
(バターの匂いや、炒めによる堅い外皮がない) 。
さらに、エストニア料理では、汁の中だけで煮物がされる{その他の煮方 (蒸気、水煮や蒸し煮)
は利用されない}ことをつけ加えねぱならない。しかしゆでるための汁 (水、クワス、牛乳、牛乳・粉、牛乳・スメタナ、牛乳・たまごをまぜたもの)
や、ゆでる温度 (調理用こんろの火、かまどの熱、オーブン) を変えたり、またゆでる材料を入れる時期や順序を変えたりして、エストニア料理は煮物料理の味にバラエティーをつけている。このバラエティーが、かなり限られたものであることは言うまでもない、それは、エストニア料理では、調味料やスパイスがあまり使われず、使うことが好まれていないからである。調味料では、牛乳、生クリーム、スメタナがそのまま使われる以外に、さらにいわゆる「カストメード」−牛乳や牛乳・スメタナ・ソースが使われている。そのソースは、エストニアのほとんどすべての肉、野菜、魚料理にそえられている
(魚料理用のソースには、魚のすり身またはにしんの切り身が入っている) 。スパイスについては、玉葱の他に、ディル、マヨラナ、エストニア独特のものとしてキャラウェイが使われ、パセリやセロリがたまに使われるが、どれもごく少量、限られた料理にしか使われていない。ディルはにしんに、マヨラナは血ソーセージに、キヤラウェイはトゥバロークに、バセリ、セロリは肉のスープに、というように使われるが、いつも使われるとはかぎらない。大部分の料理が調味料やスパイスを全く使わないで作られる。
エストニア料理の味の特殊性は、何で作りだせるのだろうか。何よりも、すでに指摘したように、煮る条件を変えることによってである。次に食品素材の特異な組合せ
(魚とラード、雄牛の血とりんご、えんどうと牛乳) によってであり、また新鮮で、質のよい材料を必ず使って、まぜ物をせず、食品素材の純粋な、自然の味を保つことにより、最後に牛乳の後味によって、特殊な味が作りだされる。それで、肉料理からデザー料理理にいたるまでのエストニアのあらゆる料理、またはすくなくとも大部分の料理で、その具としてか、またはべースとして、または生乳ソースとして何等かの形で牛乳が使われるのである。このように、エストニア料理の味はきわめて限られたものだが、同時にきわめて純粋ではっきりしたものである。それは、明らかに薄味のものであり、味は、やわらかく、デリケートで、ひかえ目で、人手の加わらないものであり、その風味の主なものは、魚料理やデザート料理にさえもついている牛乳の風味である。
エストニアの食卓の構成も単純である。バルト海沿岸のすべての民族と同じようににエストニア人の間でも、冷物、牛乳、肉スープ、お粥状の野菜・穀粒料理、各種の魚、いつも粉、挽き割り、澱粉が入れられる栄養のあるデザート料理が重要な役割を果たしている。しかし冷物料理は、エストニア人の間では、リトワニアやラトビア人より少ない場所しか占めていない。エストニアの冷物料理は一般に、ラトビアやとくにリトワニア料理が、肉や野生動物から複雑で、高価なソーセージ型の挽き肉料理や家禽の燻製、ソーセージ、手づくりチーズを作るのにかけているような長い下ごしらえを必要としない。エストニアの「キュリム・ラウド」には、目のつまったエストニア黒パン、またはセッピィク
(灰色パン) 、しこ (いわし) やにしんのマリネ、スメタナとじゃがいもを混ぜたにしんまたはスプラットいわしの燻製、牛乳、酸乳、カマが入れられるのが普通で、もっと手のこんだ、金をかけた場合には、シュリト
(にこごり) 、ベ一コンまたはゆでたハム、甘酸っぱいライ麦パン、レイババック
(ライ麦・じゃがいもの菓子) が入る。ここでも牛乳か酸乳とバター、固ゆでたまごが入ることは変わらない。
やっと20世紀のはじめから支配的になった熱物料理の中では、スープとくに牛乳スープが、かなり大きい役割を果たしている、その数と多様さでエストニア料理は、ずばぬけている。例えば、牛乳・こね粉、牛乳・きのこ、牛乳・たまご、牛乳・ビールさらに牛乳・牛乳
(すなわち牛乳と牛乳加工品) スープがある。さらに、これらのスープはすべて、中央アジアやザカフカス料理の酸乳スープのようにではなく、普通の牛乳から作られる。前にあげた牛乳スープの種類には、甘いスープが入っていない、それにも牛乳が、ベースとしてではなく、材料の一つとして入っている。
牛乳を入れないスープのうちで、よく作られているのは、じゃがいも、きゃべつ、えんどうスープであり、それは、豚の脂身
(多くは塩漬けでなく燻製) を少量加えて作られる。
本来の肉スープについて言えば、それは調理法も、構成も独創的でない、すなわち、肉はスープのなかでーつのかたまりでゆでられ、肉以外の部分は、じゃがいも、きゃべつまたはえんどうと何らかの挽き割り
(多くは精製大麦) に少量のその他の野菜 (かぶらまたはにんじん) を加えたものである。玉葱、パセリはいつも入れられるわけでなく、きわめてわずかしか入れられない。スープの味と風味は、加えられるスパイスではなく、スープのなかに燻製の肉
(羊、ハム) 、塩漬けまたは燻製の脂身 (ベーコン) を入れて作られる。それで、エストニアの肉スープでは、生肉が使われることは非常に少ない。
エストニアの肉スープの特殊さは、また次の点にも見られる。それは肉の部分に、肉だけでなく、もつも入っていることである。エストニアでは、肉は、スープに使うにはよすぎるし、もったいないと考えられており、肉は常に二の膳用に予定されている。
豚肉は、エストニアの台所に普及しているにもかかわらず、それだけがスープの具として利用されることはすくなく、もつやたとえば羊肉、牛肉に風味をつける添加物の形で使われることが多いが、それもきやべつスープとえんどうスープだけで、しかも少量
(四人用の料理に200 〜250 g)である。
食事の中で大きい場所を占めているのは粉物と挽き割り料理である。ライ麦と大麦粉にさまざまな醗酵酵母か、その他の材料
(じゃがいも、蜂蜜) を加えて作られるエストニアの民族的なパンが、粉物に属している、それでこのパンには全く特殊な味
(後味) と竪さがある。このような民族パンに、甘酸っぱいパン、固い生地から作るエストニアのライ麦パン、じゃがいもパン、大麦パン、セッピィク
(灰色パン) 、レイババック (大麻油を使ったライ麦とじゃがいものあん菓子)
、蜂蜜パンがある。この種の粉物にエストニア・ピロークのピルカードが加わる、それはライ麦の生地から作られ、本来のピロークよりは、むしろかなり厚い生地のころもにくるまれ、楕円形の大型の丸パン
(カラバーイかまたはブハーンカ) の形に焼かれた、つめ物に似ている、というのは、つめ物が全体の3/4
を占めているからである。中につめる物もロシア・ピロークのつめ物とかなり違っている、例えば魚が豚の脂身と、ハムが大麦のお粥とたまごと、肉が大麻の種子とそれぞれ1
対1 の割合で混ぜられて、エストニア・ピロークでは利用されている。
挽き割り料理の中で、エストニア料理の最も代表的なものは、いわゆるよせまたはまぜ挽き割り、野菜・挽き割り、野菜カーシアである、野菜カーシアはラトビアのプートゥラに似ているが、構成と醗酵の週程がないこと、また組合せがいつも一定であることで、それと区別される。例えばタングー・プーデルは、燕麦と大麦の晩き割りをまぜたものであり、ムリギー・プーデルは、精製大麦とじゃがいも、ムリギー・カプサードは精製大麦ときゃべつ、カマは、粉、えんどう、大豆、ライ麦、大麦、燕麦をそれぞれ混ぜたものである。
他のエストニア料理のように、まぜカーシアは、何も加えない牛乳でゆでるか、または出来た後に牛乳が入れられる。カマで作る料理は、何の熱処理もしない牛乳または酸乳と粉を、ただ機械的に混ぜたものである。
すでにふれたように、バルト海沿岸料理のうち、エストニア料理は、最も魚料理の色彩が濃い。魚料理が、そこでは、肉料理や野菜料理にくらべて大きな部分を構成しているだけでなく、一番念入りに、また独創的に作られている。その調理には、肉料理よりもはるかに手のこんだ調理技法が使われている。
さらにエストニアの海沿い (北部と西部) とチュード湖に沿った (東部) 地区の魚の使い方にも違いがある。ひらめ、スプラットいわし、バルト海にしん、うぐい、うなぎが、共和国の海沿いの地方では利用されている。東部エストニアのチュード湖と、内陸地区のヴィイルトシャルバでは、魚料理がわかさぎ、あなご、きんめだい、川かますで作られている。−般に魚,牛乳、魚・野菜スープは、白身の骨をとった切身
(とくにひらめ、たら、しゃけ) から作られる。例外として、きゃべつ入りの魚スープは、川かますから作られる。皮かます、うぐい、すずき、にしん、スプラットいわしから魚,牛乳スープが作られることがよくある。わかさぎ、あなご、きんめだいからは、あらかじめ野天で乾かすか、乾燥させて、スープが作られる、その場合それぞれの魚は、混ぜられないで、別々にスープが作られる。その他、これらの小魚やにしん
(サラーカ) からブディングのように丸のまままとめて焼いて、焼き物 (カラボルム)
が作られる。このような焼き物には、普通、豚の脂身とディルが加えられるが、魚を薄く並べたところに、小さい角に切った脂身とこまかく刻んだディルをふりかける、それによって料理全体に独特の香りがつく。
エストニアの食卓で燻製、野天干し、乾し魚が、すくなくない場所を占めている。野天干しと乾し魚は、主にスープを作るためにあてられ、燻製は一部が二の膳の熱物料理に利用される。燻製にされるのは、主にスプラットいわし、レーシ、シルチ
(いずれもうぐいの一種) 、うなぎである。
原則として、エストニアの民族料理では、熱燻が行われている。例外はシルチ
(バルトうぐい) で、それは冷燻される。若干の民族料理では、軽く塩をしたバルト海しゃけも利用される。エストニニア料理で他の魚より多く使われているのは、スプラットいわしとシコいわしである。この魚をゆで、各種のスープに利用し、それから焼き物を作り、牛乳、スメタナまたはたまごと牛乳をまぜたものをかけて、壺で蒸したり、さらに揚げたりする。
エストニアの魚料理では、その他のあらゆる魚料理に欠かせない玉葱があまり利用されないことは興味深い。それは、エストニア人が調味用の材料を好まないことと、魚料理の味を「するどくし」たくないことで説明がつくであろう。それでエストニア料理は、別な方法、詳しく言えば、魚独特のにおいを消す方法を見つけだした。魚の燻製、野天干し、乾燥とその後にそれらの既に臭いを消した材料を熱物料理に利用することである。別の面からは、生魚のにおいを直接消すために、独特のにおい消し
(吸収剤) として、牛乳、スメタナ、ラード、卵黄と卵白が使われる。スパイスもわずかな役割を果たしている。魚に、スパイスとしては、刺激の強い葱でなく、やわらかでおだやかなディルが加えられることも特徴である。エストニアで、刺激のすくない甘い品種に近いチタゥースキー種の葱が栽培されているのも偶然ではない。その葱は、ロシアや白ロシアの魚料理で利用される、ベスソノフスキー、ロストフスヰー、ストリグノフスキー種の葱よりもはるかに刺激がすくない。この葱は、味の調和を損なわずに牛乳とよくあう、このことは、エストニア処方で魚・牛乳料理を作る時に、考えにいれておかねばならない。このようにエストニアの調理法の単純さが、この場合は、エストニア料理の一般的な傾向をうまく反映した、独創的で、ユニークな味の魚料理を創りだすことを可能にし、世界の魚料理に、重要なバリエーションをもたらしたのである。
エストニアの魚スープについて、いくらかふれる必要がある、まず第一に、それは決してウハーとは呼ばれない。ロシアのウハーと違い、エストニア料理の魚の汁物料理には、挽き割りやさまざまな野菜
(じゃがいも、かぶ、かぶら、にんじん、きゃべつ) が入っており、汁には水と牛乳、それがない揚合は、スメタナの調味料が多く使われているので、それはまさにスープである。その他に、魚スープには常に粉が混ぜられる。
魚料理とくらべると、エストニアの肉料理には独創性がない。二の膳の肉料理では、脂肪のない豚肉が圧倒的に多く、仔牛の肉もかなり広く利用され、羊肉とくに軽く燻製にした塩漬け肉が食されている。牛肉と鶏肉はまれしか使われず、量も少ない。
リトワニア料理と違い、エストニアの民族料理には、がちょうの肉や野生動物の肉料理がほとんどない
(若干の例外は野うさぎの肉である) 。
二の膳用の肉は、スープまたは単に少量の水またはカーシニーッアでゆでられ、その後、別に煮た野菜のつけ合わせ、多くはじゃがいも、またはきゃべつかかぶらとにんじんと一緒に出される。言うまでもないが、エストニア料理は、大きいかたまりの肉
(1 〜1.5 kg以上) を鋳鉄の厚手の鍋に入れ、少量の熱湯で気長に煮る方法を利用している。この方法は、見事な最上の味と、自然の風昧、ある程度のしまりと、ほどよい煮え具合が結びついた気持ちのよい堅さ、普通のスープの肉にはないまろやかさと「味加減」の肉が出来るのを可能にしている。エストニア語で「アヒユリハ」すなわち「べ一チカ肉」と呼ばれるこのような肉は、オーブンか直接ぺーチカの炭で煮られる。それは二の膳料理と冷たいものに、ゆでたじゃがいもをそえて利用されることが多い。別々に作られるゆで肉とゆで野菜は、多く牛乳ソースを使って、ーつの皿で合わされる。このような料理の配置と構成は、別にきまったものがないので名称もない。−方野菜・穀粒料理では、構成と割合がきびしくきまっていて、それぞれ名称がある、たとえばムリギ・カプサート、ムリギ・ブーデルである。わずかに5
っほどの肉料理に名称がついているだけだが、トゥフリノット、キラトゥフリート、カルトゥリポルッス、マクスカストメスである。だが、そこでは、肉の量は三分のーにすぎず、残りはじゃがいもである。
一般にバルト海沿岸料理すべての特徴であるシュリトとパリテヌイも肉料理に入れられる。シュリトはエストニアの煮こごりで、ロシアの煮こごり
(ストゥデェニ) と違い、動物 (豚、仔牛、羊) の足ではなく、頭やしっぽだけからつくられる、その場合、肉の種類ごとに別に
(子豚のしっぽだけ、豚の頭だけ、仔牛の頭だけなど) 作られる。それは、濃度も高く、味も違うものである。エストニアの煮こごりには、舌が入れられるが、それがこの料理の価値と味の質をさらに高めている。
すべての民族料理のように、エストニア料理でも、もつが最も貴重な肝臓をのぞいて、主としてスープに利用されている。肝臓からは二の膳の料理が作られる。仔牛肉のように、肝臓はスメタナ・クリームソースで煮て、早く、数分間で料理できる。それによって、ほどよい堅さと味の煮・焼き半々の肉ができる。それで、エストニァ料理では、肝臓と仔牛肉が高く評価され、それからつくる料理は、好みの料理に入っている。
野菜は、かぶ、きゃべつ、えんどうの野菜カーシアと、ただーつの野菜料理である牛乳ソースに入れた野菜を別にすれば、エストニア料理では、それだけが使われることはない。またこれらの料理さへも、ゆで肉のつけ合わせとされるだけで、肉料理の多様性を助けるもので、それだけが出されるものではない。そのかわり野菜は、あらゆる種類のスープ、挽き割りと野菜の混ぜ料理、挽き割り・野菜・肉料理、魚の焼き物、ある種のデザート料理
(たとえば、にんじんピローク、大黄のグーシ) の重要な部分になっている。野菜が丸のままゆでられるか
(よくされているように) ピューレ状ににされるかに関係なく、それにはかならず、脂身、バター、スメタナ、牛乳、牛乳ソースで味がつけられる。玉葱、ディル、キャラウェイで味をつけることはきわめて少ない。一番よく使われるのはじゃがいもで、次はきゃべつとえんどう、それにかぶらとにんじんがつづいている。ビートは、主にビート・サラダとして、たまに使われる。
デザート料理について言えば、それには主として、パンスープ、生クリームまたは牛乳入りのキショリ、大黄とりんごやつるこけももやこけももカーシアから作る果実グーシがある
(これらの液果の汁は、グーシと一緒に少量の砂糖か蜂蜜を加えて、軽く醗酵させられる)
。
バルト海沿岸の全部に共通の粉物デザート料理 (スネーシュキ、泡を立てた生クリーム入りの甘いカーシア)
は、エストニアでも広く食されている。エストニアのデザートでは、コーヒーが重要な意味をもっている。しかし、それは普通、食事時以外に、三食の中間に、菓子
(泡立てた生クリームをつけた焼き菓子や味つきブーロチカ) と一緒に使われている。
エストニア料理おわり