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死刑論議が高まるなかで

大谷 昭宏

最高裁判所

 ここにきて死刑論議が盛んである。ひとつには、裁判員制度をもうあと1年後に控え、一般市民がいよいよ死刑判決に参加せざるを得なくなった。もうひとつは鳩山法務大臣が死刑執行命令書にたて続けにサイン、執行が相次いでいること。加えて、4月、山口県光市の母子殺害事件の差し戻し審で、犯行時、18歳1か月だった元少年に死刑判決が言い渡された。それらのことが複合的に作用、死刑論議が活発化したと言えるのではないか。


 私が出演しているABC(朝日放送)の「ムーブ!」でも、先日、私も日刊ゲンダイの「週間読書日記」で取り上げさせてもらった「死刑」(朝日出版社)の著者、森達也氏をスタジオにお招きして、死刑廃止、存置の両派に別れて討論した。

 もちろん、わずか20分のスタジオ時間では論議を尽くせないことは明らかだが、こうした動きが、森氏が鋭く指摘する「日本で暮らす多くの人は視界の端っこに死刑を認めながら、<存置か廃止かはともかくとして>目を逸らし続けている」事態に、なんらかの覚醒作用にもたらすのだとするなら、私は歓迎すべきことだと思っている。

 こうした流れに呼応するように国会でも動きが出ている。国会には、国民新党の亀井静香議員を会長とする「死刑廃止議員連盟」があることは早くから知られているが、ここへきて、死刑廃止派の議員や、存置派の議員もともに手を携えて、死刑と無期の中間的刑罰、終身刑創設を目指す超党派の議員連盟が発足する運びになった。連盟は「裁判員制度の導入の中で量刑制度(死刑と無期懲役のギャップ)を考える会」(仮称)とまあ、長ったらしい名称だが、私もよく存じ上げている加藤紘一さん、平沢勝栄さんらの働きかけで近く会合を開くことにしているという。これまた結構なことではないか。


 私はあちこちで主張しているように、かなり強固な死刑存置派である。その理由をここで論じている紙幅はない。機会があれば、きちんとした形でいつか書き記しておかなければならないと思っているが、それはともかくとしてこんな時期、私が、死刑廃止論者ではわが国において、この人ほど情熱的であり、かつ論旨の通っている人はいないと畏敬の念さえ抱いている、あの光市の母子殺害事件の主任弁護人、安田好弘さんから「またひとつ助けてくれまいか」と電話がかかってきた。

 実は安田弁護士と私は、もう10年来の友人だが、このところお互いの間に気まずい思いがあった。光市の事件で私は「弁護人が被告人のために、あらゆる手段で弁護活動をするのは当然だ」と安田弁護士たちの弁護について、世間のバッシングを批判する一方で、少年に対する死刑という極刑については「この犯行に関して死刑を回避する理由なんてない。こんな、口では言い表せないような犯行に死刑が適用されないなら、そもそも日本に死刑制度を存置させる意味がない」とまで言い切っていた。

 だが安田さんは、そんな私の主張は百も承知の上で、この国会議員の動きを受けて緊急にシンポジウムを開きたいのでパネラーとして出演してくれないか、と言う。

 互いに、ぶつかり合うときはぶつかり合おう、そして、ともに考えるときは、それまでのいきさつはともかくとして同じ壇上にいようという安田さんの、ある意味で潔い姿勢に私は敬服する。とは言っても、安田さんからお誘いを受けるシンポジウムは、当然のことながら聴衆の大半はいつも強固な死刑廃止派。まあ、平たく言えば、私はいつもサンドバッグ状態に追い込まれるのだ。

 だけど、安田さんのこの姿勢を前にして、私が尻尾を巻くわけにはいかない。かくてこのシンポジウムには、少々厳しい日程をクリアして馳せ参じることにした。

 詳細はこれから詰める部分もあるようだが、日程は以下の通り。

日時  5月21日(水)午後6時〜
場所  星陵会館(千代田区永田町2-16-2/国会議事堂参議院裏)

 よろしかったら、みなさんもぜひ足を運んでみて下さい。

(2008年5月7日)


裁判員制度(裁判所ウェブサイト
 http://www.saibanin.courts.go.jp/
死刑存廃問題(Wikipedia)
 http://ja.wikipedia.org/wiki/死刑存廃問題
死刑廃止と死刑存置の考察
 http://www.geocities.jp/aphros67/indexs.htm

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