何を大事に生きて行くのか
― とんでもない飲酒運転堺屋発言 ―
私は、今度の民主圧勝の選挙は単純化して言うと、落選した方には失礼だが、小泉チルドレン・片山さつき候補VSいとしのエリー・福田衣里子候補だったのではないかと思っている。金儲けをした人、エリートになった人が勝ち組になる競争社会は当然とする小泉改革の申し子ともいえる片山さん。片や福田さんはご存じのようにC型肝炎患者原告団の一人。世の中には自分になんの責任がなくても突然、不幸に見舞われ、自らの力ではどうすることもできない人たちがいる。そういう人々に光を当てて手を差し伸べる、それが政治ではないかと訴えたのが福田さんだったのではないか。その審判結果はご承知の通り。
そんなとき、事務所に椋樹立芳さんとおっしゃる70歳代のお年寄りから怒りに震える1通のメールをいただいた。
<驚愕仰天の記事が週刊朝日に掲載されました。それは「堺屋太一が憂いの熱弁、飲酒運転厳罰化が日本を滅ぼす」というものです>と書かれ、堺屋氏に猛省を促すと同時にこうした記事を掲載した週刊朝日に一遺族としての怒りを伝えてほしいというものだった。
堺屋氏の記事を要約すると「いまや日本の人口20万以下の都市は夜7時を過ぎたら全く人が歩いていない。この悲惨な状況を作った原因の一つが飲酒運転取り締まりの強化、厳罰化だ」とする。
一方、メールを下さった椋樹さんは90年3月、名古屋市の交差点で飲酒運転の男の車が信号待ちの車に突っ込み、6台が巻き込まれて愛知県警の警察官だった息子さん(26)は車が炎上、焼死した。当初、愛知県警は椋樹さんの息子さんによる追突事故と誤認捜査。県警から「警察官にあるまじき行為」と聞かされた椋樹さんは、あろうことか「なんてことを」と息子さんの柩を蹴ってしまったという。椋樹さんはその後の取材に「息子に詫びたが、誤って息子の柩を蹴ってしまった親の気持ちがわかりますか」と怒りを露わにしている。事故を起こした男は居酒屋で酒を飲み、周囲の制止を振り切って時速100キロで突っ込んだという。
週刊朝日に記事を掲載した堺屋氏とは、何度か番組をご一緒したこともある。東大卒の通産(当時)官僚。在職中にベストセラーを出版。その後も著名な評論家として、まさに55年体制まっただ中の政府与党で経済企画庁(当時)長官までつとめているエリートだ。それがあろうことか、飲酒運転は大目に見ろとはどういうことだ。私も記者時代を通じて悲惨な交通事故をいやというほど見てきた。なのに堺屋氏は地方の金儲けのためなら、飲酒事故で命を落す人が少々いてもやむを得ないという意味のことを堂々と語っているのだ。
椋樹さんのメールのことは友人でもある週刊朝日の編集長に早速伝えた。こんな評論家を閣僚として崇め奉っていた自民党55年体制。あの8月30日。それは国民がこれから何を大事に生きて行くのか。高らかに宣言した日でもあったように思う。
(日刊スポーツ・大阪エリア版「フラッシュアップ」平成21年9月7日掲載)
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