野球は法廷でなく球場でフェアに戦うスポーツ
— 読売と清武氏の訴訟 —
球春という言葉が大好きだ。プロ野球は2月1日、12球団が一斉にキャンプイン、長いペナントレースに向けてスタートを切った。新天地を求めて移籍した選手の活躍や如何に。セ・パ合わせて4人の新監督の采配ぶりは、どんなものか。ファンにとっても心躍る季節である。だが、そんな思いに水を差す無粋な連中もいる。3日の産経新聞は「読売と清武氏論争“開幕”」とシーズンに先駆けた開幕を告げている。
巨人軍の前代表兼GMの清武英利氏が記者会見で渡辺恒雄読売グループ会長を批判したとして、読売が清武氏を提訴。その一方、代表を解任された清武氏が「解任は不当」と読売を訴えた裁判の第1回口頭弁論がキャンプインの翌2月2日、東京地裁であった。
東京地裁は二つの訴訟を併合で審理することを決定。第1回から読売が「清武氏は企業秘密を暴露した裏切り者」と主張すれば、清武氏は「コーチの名前も知らない会長の暴挙を許すわけにはいかなかった」と打ち返して全面対決の様相となった。全面対決となれば、清武氏側は渡辺会長はもちろん、会長と江川卓氏の助監督招聘の密約をしたとされる原辰徳巨人軍監督や、この人事で降格となるはずだった岡崎郁ヘッドコーチの尋問を申請すると見られる。まさに場外乱闘である。
私はこの一件に関して、コラムやテレビのコメントで「清武氏の義憤に一理あり」と主張してきた。だが、シーズンに入ってからも続くであろうこの泥試合には一理も二理もないと思っている。ペナントレースの真最中に「アレ、監督は?」「東京地裁だよ」「ヘッドコーチは?」「弁護士と打ち合わせ中だよ」なんて愚かなシーズンがあるものか。読売も清武氏もとんでもない勘違いをしている。
野球に限らずスポーツを愛する者は、そこに爽やかさを求めている。世の中には様々、理不尽なことがある。だがスポーツは汗を流し、技を磨いた者がルールに則って勝者となる。そこに心地よさを感じるのだ。その世界と裁判は決して相容れるものではない。
裁判について、専らの観測は「清武氏不利」ということらしいが、私はこの裁判の本当の意味での勝訴は「巨人に限らず、野球を愛してくれている人のため、勝ち負けなしの和解にしましょう」と言い出した側にあると思っている。渡辺会長や原監督出廷の日、「きょうはテレビカメラは東京ドームではなく、地裁の方が多かった」なんてバカな光景を繰り広げるな。
野球は法廷ではなく、グラウンドでフェアに戦うスポーツなのである。
(日刊スポーツ・西日本エリア版「フラッシュアップ」2012年2月6日掲載)
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