「もう1人の私」が凶悪犯罪を… なんと人の命が軽い国になったことか。そしてなんと殺伐としたゴールデンウィークだったことか。 ![]() 4月30日、東京・浅草で女子短大生が刃物でメッタ突きにされて殺害された。この事件では、昨日10日、山口誠容疑者(29)が逮捕された。その直前には山形県羽黒町で資産家の主婦が4人組に昼間襲われ、殺害された。 和歌山では、75歳の旅館の元女将が介護サービス会社のケアマネージャーの男に殺害され、銀行口座から多額の金が引き出されていたことが発覚した。 追い打ちをかけるように、連休が明けたあとも、8日には、青森県弘前市で消費者金融支店に押し入った男がガソリンをまいて放火、若い女性従業員4人を含む5人が焼死した。そのほか、神奈川ではパチンコ店の30歳の女性従業員、淡路島と徳島では父親と息子。この10日ほどで、一体、何人が殺害されたり、遺体で発見されたことか。 浅草の事件は私も現場に取材に行ってきた。短大生はレッサーパンダのぬいぐるみ帽子をかぶった山口容疑者に襲われ、胸や腹を刺されて即死に近い状態だった。 私は事件記者ばかりやってきた習い性なのかもしれないが、その国の文明度、もっといえばその国がいい国であるかどうかの尺度は、そこに暮らす人々の命がどれくらい重んじられているかにかかっていると思うようになった。 そういうことからいうと、日本という国は確実にいい国ではなくなってきていると思えてならない。 さて、続発した事件についてである。去年のゴールデンウイークは、5月1日に愛知県の豊川市で「人を殺す体験がしてみたかった」という高校生が主婦を殺害した。それに刺激されたように3日、西鉄高速バスジャック事件が起きた。そして今年のゴールデンウイークは先に書いた通り、悲惨なものになった。もう一ついうと未解決のままになっている世田谷の一家4人惨殺事件は、年末年始の休暇に入った12月30日深夜に起きている。 世の中が、少しばかり浮かれて華やいでいる。そんなときに、身を凍らせるばかりの残虐事件を起こす。そこに共通点があるのではないか。 もう一つ言うと浅草の事件で山口容疑者は、レッサーパンダのぬいぐるみや凶器を近くに捨てて逃げている。世田谷の事件でもトレーナーや黒いハンカチ、様々なブツを現場に残している。去年の豊川の事件では登校前、近くの雑木林に隠した衣類に着替えて犯行に及んでいる。 つまり犯人は、犯行の前後に「もう一人の自分」になりきっているのである。世間が楽しく暮らしている時期にもう一人の私がその世間を震え上がらせる事件を起こす。そんな犯行パターンが類型化してきているのではないか。捜査はこんな犯人像も視野に入れる時期にきていると思うのだ。 (日刊スポーツ「熱血サイト」大阪エリア版 毎週金曜日担当) |