夕焼け
日刊スポーツ
「熱血サイト」から

(大阪エリア版 2001年6月8日掲載)

改正少年法施行8時間前のリンチ殺人

 滋賀県大津市の青木吉夫さんから<障害者の悠が無抵抗に虐殺された事件はとても人間がしたと思えぬ残虐非道な行為です>という書き出しの長文の手紙をいただいた。今年3月31日、知り合いの少年2人から暴行を受け死亡した、青木悠君(当時16)のおじいさん。先週木曜日、私がABCテレビの「ワイドABCDE〜す」で取り上げさせていただいた事件だ。
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 <改正された少年法は被害者を癒すという趣旨がありますが、癒されるどころか怒濤の憤りが増すばかりです。いくら改正されてもいつも被害者は部外者扱い。何も変わりませんでした>

 この4月から改正少年法が施行され14歳以上であれば刑事罰を科すことが可能になった。だが悠君が暴行されたのは法施行の前日の3月31日夕、たった8時間前だ。結局、この事件の主犯格、15歳のHと17歳のSは刑事罰を問われず中等少年院送致となり、恐らく2年程度で出てくるだろう。一部になるが、ぜひ青木さんの手紙を読んでいただきたい。

 <知り合いのHらに「高校合格を祝ってやる」と呼び出された悠は、笑顔で、待ち合わせに足を引きずりながらでかけていきました。その悠への悪質極まりない騙し討ち。限りない苦しみ、ショックは例えようもないでしょう>

 悠君は中学生だった1年半前、交通事故で左半身不随に。でもリハビリしながら定時制高校で学ぶ頑張り屋。今年春には同じ高校の全日制を受験、合格した。そんな悠君を少年達は「障害者のくせにむかつく」とリンチ目的でおびき出し、暴行は2時間も続いた。

 <脳障害のためイビキをかきはじめた悠。Sは「障害者は死んだふりをする。たぬき寝入りしやがって」と言い放ち、Hは、涙を流し、口から泡を吹き、失禁している悠を、バックドロップというプロレス技で3度もコンクリートに頭を叩きつけました。葬儀は待望の全日制入学式の日でした。

 事件が改正少年法施行の数時間前に起こっただけで以前の少年法がそのまま適用されました。悠は4月6日に死亡、H、Sの逮捕、すべて改正後なのです。HとSの少年審判に地検から検察官立ち会いの要請があったものの裁判官は認めませんでした。

 被害者の配慮から改正法で導入された制度により悠の母は全国で初めて家裁で意見陳述しました。「極刑にして下さい。それが無理なら一生刑務所から出られないような厳罰に」と涙で訴えましたが、形だけの意見陳述で結局全く無意味でした。

 Hは少年院収容の身でも友人には「少年院に行ったらハクをつけて今度は不良グループのトップになる」と罪の意識が全くありません−−>


 私は神戸の少年Aの事件以来、一貫して少年法の改正を訴えてきた。しかしそれはこうした少年を温かく見守ろうという声にかき消され、改正は遅れに遅れた。「あのときもっと早く」とはいまさら言えない。しかしこれらの人々は2年後、またHとSを温かく迎えるのだろうか。

(日刊スポーツ「熱血サイト」大阪エリア版 毎週金曜日担当)



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