夕日
日刊スポーツ
「熱血サイト」から

(大阪エリア版 2001年8月17日掲載)

子どもを守る社会システム作りが急務

 こういう事件が起きるたびに、私たち取材する側に「あんな子供を作る資格もない人間が子供なんか生むからだ」という言葉が寄せられる。たしかにその通りかも知れない。だけど、その通りだ、とみんながうなづいていいのか。今度の事件でまたぞろ、同じことを考えている。
日刊スポーツの実際の記事
 尼崎市の運河で、小学校1年生の勢多恭一君(6つ)が無惨にも、黒いポリ袋に包まれた遺体となって発見された。死体はアザだらけ、そのうえ解剖の結果、脳内出血もあった。警察やわれわれが想像したとおり、恭一君の死には、実母の知子、義父の剛士、この24歳の両親が深くかかわっていた疑いが強まり、14日朝、立花駅前のコンビニで、泣くは、わめくはの大騒ぎをしているところを警察に取り押さえられ、死体遺棄容疑で逮捕された。

 つかまった夫婦は、もう新聞やテレビで、読者のみなさん、ご覧の通り。言ってはなんだけど、まあ、ヤンキー同士がくっついたと言われても仕方がないような風体だ。この2人が恭一君をいったんは児童養護施設に預けたのに、8月初め、家に連れて帰りたいと言ったので、施設もそれを許可。ところが、8月6日になって、夫婦は子どもはこのまま家に置くと言いだし、施設側がこれを拒否すると、どういうことか、祖母にうそをつかせて、恭一君が行方不明になったと捜索願いを出していたのだ。

 ごく自然に考えれば、この時期、夫婦が恭一君に暴力を加えた。このまま施設に戻せば、その事実がわかってしまう。そこで、施設にはうそをついた。この間、恭一君は暴力がもとで、亡くなってしまった。そこで、遺体を運河に運ぶ一方、行方不明になったことにしてうその捜索願いを出したのであろう。

 恭一君はそんな運命をひょっとして感じ取っていたのだろうか。施設から親のもとに帰されるとき、泣いて嫌がったという。それを思うとなおさら不憫だ。このあと、夫婦は野宿のようなことをしていて警察に身柄を確保されたときは、2〜300円しか持っていなかったという。

 だから言わんこっちゃない、子どもを持つ資格がないんだ、というのはたやすい。だけど、私たちの目の前で、子どもの命が奪われているのだ。飼育中の動物だって、親が子を放棄することがある。咬癖があって子どもをかみ殺してしまう親もいる。

 そんなときは、人間が割って入って、とにかく子どもを親から引き離す。人間と動物を一緒にするのかという批判もあろうが、残念ながら私たちの社会はそんな親を数多く抱えてしまったのだ。それにしては、児童福祉士が人口17万人に1人というのはあまりにも少なすぎる。頭を抱えていたり、若者を批判している時間はない。子どもを助けるシステムを作るのが先だ。

子どもは親を選んで生まれて来ることはできないのだ。

(日刊スポーツ「熱血サイト」大阪エリア版 毎週金曜日担当)



バックナンバーリスト


Back