東京慈恵会医科大学附属柏病院・中央検査部(輪血検査室)
輸血用血液、血奬および血奬分画製剤に関する説明
当院で治療を受けられる患者様で、治療経過中に輸血用血液、血液成分または血奬分画(アルブミン、グロプリン、凝固因子など)製剤の投与を行う必要が生ずる可能性がある方には、あらかじめ「輪血用血液、血奬および血奬分画製剤投与に閑する同意」を頂いております。以下の項目をお読みになった後に、ご不明な点を主治医に質問し、納得されましたら同意書に署名をして下さい。
輸血および血奬分画製剤の投与とは
・輪血療法は血液中の各成分の機能や量が低下した時にその成分を補うことを目的として行われます。
・輸血療法はヒトの臓器である血液細胞を使用した一種の臓器移植です。
・血奬およびその分画製剤もヒトの血液から造られた製品です。
・輪血によってはじめて可能になる治療〈大きな手術など)があります。
・輪血療法および血奬、血奬分画製剤の投与には以下に示すように、一定のリスクが伴います。したがってリスクを上回る効果が期待される場合にのみ行われます。
輸血療法および血奬、血奬分画製剤投与が必要となる場合
ほとんどの輪血および血液成分の投与は原因の治療ではありません。不足した成分を補充するのが目的ですので、次の様な場合に輪血や血奬および分画製剤の投与が必要となります。
・患者さん自身で生命を維持するのに必要な量の血液成分を造れない場合。
・手術や怪我などで、大量に出血して、生命に危険が生ずる場合。
・血漿分画〈アルプミン、グロプリン、凝固因子など)が不足して、生命の維持が困難になる事が予想される場合。
輸血療法を行わない場合の危険性
輪血を行わなかった場合に予想される主な危険性は以下の通りです。
【貧血】血液中の酸素を運ぶ成分(赤血球)が不足し、体中に酸素を運ぶ事ができなくなり、脳や心臓などの臓器に酸素が行き渡らなくなります。放置しておけば生命に危険を及ぽします。
【出血傾向】血小板の減少や凝固因子(出血をしたとき血が止まるように働く血液の成分)の不足により重篤な出血が起こった場合、もしくは出血が起こる可能性が非常に高い場合には、各々不足している血小板や凝固因子を補充しないと、生命に危険を及ぽすことがあります。
【循環血液量の低下】循環血奬量や血液量が不足した場合には、血圧が低下して生命に危険を及ぽすことがあります。
【低アルプミン血症】血液中のアルプミンが減少して、血液の浸透圧が低下すると、むくみが生じたり、血液の循環が正常に行われなくなります。
輸血療法の選択肢(色々な対応方法)
輸血療法には患者様の状態に適した色々な選択肢が考えられます。
【無輸血】輸血以外の治療が可能な場合には、まず、薬などによる治療を行います。{例えば、血液を造る材料(鉄、ビタミンB6、葉酸など)が不足したために起こった貧血では不足している材料を投与〈鉄剤や葉酸製剤の服用)したり、造血因子が不足している場合はエリスロポエチンの投与を行います。}症状が慢性に出現し、体がそれに耐え得る場合には原則として輪血は行いません。また、手術の場合でも全身状態が良好で、出血量
が循環血液量の20%(成人の場合約1000ml)以下の場合には殆どの場合、輪血を必要としません。
【自己血輸血】前もって手術が予定され、手術までの期間が充分あり、患者様の状態が良好で、担当医師が可能であると判断した場合には、自己血輸血〈患者様自身の血液を前もって採血・保存し、手術の際に輸血する)の適応があります。
(自己血輸血の種類・方法などは、別紙「自己血輪血の説明」を参照して下さい。)
【同種血輸血】同種血(献血による血液〉 による輪血療法が必要な場合には、原則として必要な成分のみを輸血します(例えば、貧血には赤血球のみ、血小板減少による出血傾向には血小板のみを輪血します)。ただし、手術で4,000ml以上の大量の出血があった場合やショックを起こしている場合などは、赤血球製剤の他にアルプミン製剤の投与、および新鮮凍結血奬・血小板の輸血を行う場合もあります。
採血後3日以内の血液成分は、感染症や輸血後GVHD(移植片対宿主病)などの危険が高いので、大量に出血し、血小板数や凝固因子活性が同時に低下し、出血傾向に対処する必要がある場合など、ごく限られた場合にのみ用います。
*日本赤十字血液センターから供給される血液製剤は、リスクを最小限にする努力をしておりますが、それでも現在の医療水準では残念ながらリスクをゼロにすることはできません。
同種血輸血の危険性
同種血輸血のリスクには以下のものがあります。
【感染症】血液により伝染する感染症(ウイルス性肝炎、AIDS、成人丁細胞性白血病など)を除外するための検査を必ず行っていますが、感染の可能性が全くないわけではありません。また、サイトメガロウイルス、EBウイルス、パルポウイルス等は特別な場合を除いて検査されておりません。
【免疫反応】赤血球、白血球、血小板、血奬蛋白などに対する免疫反応により、悪寒(さむけ)、戦慄(ふるえ)、発熱、じんましんなどが出現する比較的軽症な副作用から溶血性輸血反応などのように生命に危険が及ぶような重篤な副作用がまれにみられます。また同種免疫抗体を産生し、輪血不応状態〈輪血をしても効果が得られない状態)をつくることもあります。
【輸血後GVHD(移植片対宿主病〉】輸血されたドナー(供血者)のリンパ球が排除されずに生き続け、患者様〈受血者)の体を攻撃・破壊し、致命的な経過をとる疾患(輪血後GVHD)が知られています。
**GVHDを起こす危険性の高い患者様に輸血をする場合は、放射線照射をした血液製剤を使用して予防に努めています。また、頻回に頼血を必要とする患者様には、同種抗体の産生を予防するために白血球除去フィルターを用いています。
緊急時の処置
治療経過中に必要と認めた輸血療法や予期せぬ事態に対する処置については、主治医の判断にまかせて頂きます。
安全対策
安全な輸血を行うために、輸血前に愚者さんの血液型、不規則抗体スクリーニング(反応を起こす免疫状態の検査)、交差適合試験〈輸血血液との相性をみる)などの検査を行います。また、輸血による合併症が無かったことを確認するために、輸血および血奬製剤投与後2〜3カ月に受診して頂き、肝炎やエイズウイルスなどの必要な検査を受ける事をお勧めします。
血奬分画製剤の危険性
血奬分画製剤の原料はヒトの血液です。輪血用血液や血奬成分とは異なり、加熱処理、フィルター処理など感染を予防する対策がとられています。しかし、今日の医学水準でも全てを排除する事はできません。
・パルポウイルスは今日行われている方法では除去できておりません。
・異常プリオン(クロイツフェルト・ヤコプ病の原因?)が血液および血奬分画で伝搬するかはわかっておりません。
不明な点は質問して下さい
以上のことがらは、輪血療法の概略のごく一都であり、患者様一人一人によって、状態も異なります。輸血療法の必要性、輪血療法を受けなかった場合の危険性、輪血療法の選択肢、同種血輸血を行う場合の利益と危険性に関して、ご不明な点は主治医におたずね下さい。
以上の説明に納得して頂けましたら、同意音にご署名をお願い致します。