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リフォームプロポーザル

(作成日02.0531)

Hさんの苦悩

Hさんは、福岡市住宅供給公社が分譲した団地に住んでいる。階段で5階建ての4階。92才のお母さんと二人暮らし。この団地ができたときから住んでいて、27年間団地とともに生きてきた。樹木の育った団地内は公園のようであり、鳥のさえずりで目をさますようなこともある。

しかし、お母さんが足を痛め、4階までの階段の上り下りができなくなってきた。そこで同じ団地内のエレベータ付きの棟へ引っ越すことにした。そこは今までと同じ65平方メートルぐらいだが、北側に廊下があり、南の開口が狭く、薄暗い感じがした。

一般的な3LDKの間取りだが、現状の暮らしに満足していたので、住環境が落ちるような気がした。

Hさんは、なんだか悲しくなった。今まで27年間慣れ親しんだ所から引っ越さなくてはいけない。しかも部屋の中は段差だらけ、92才のお母さんが安心して生活することはできない。


団地
築27年、樹木が豊かに育っている





リフォームの模索

きちんとしたリフォームをしなくてはいけないと感じた。92才のお母さんが安心して、健康に暮らせるようにしなければいけない。よくバリアフリーという言葉は耳にするが、単に段差をなくすということだけでなく、そこには何か大きなものがあるような気がした。

Hさんは、27年の間に計5回のリフォームをしたことがある。それは、クロスの張り替えであったり、キッチンやトイレの交換であったり、住みながらのリフォームだった。

リフォーム工事は、そのつど工務店に依頼していたが、自分の思い通りになるということは少なかった。簡単な打ち合わせで工事が始まり、できあがりは思ったほどではない。そして、工事中の騒音を気に病み、埃で健康を害したこともあった。

Hさんは、隣人に相談することにした。2年前、Hさんの隣に新しい住人がやってきた。彼らは、入居前にインテリアを一新した。それが、Hさんには新鮮に映った。リフォームでここまでできるのか。同じ間取りなのに広く感じた。


図面
Hさんが今回引っ越すマンションの間取り



隣人の提案

Hさんから相談を受けた隣人は、設計事務所に設計を依頼したほうがいいでしょう、とアドバイスした。単に快適な住まいを求めるリフォームではなく、介護、車椅子での生活などの要素が求められる。研究熱心な設計事務所に、Hさんの家族にあったリフォームを考えてもらうことがいいとのことだった。

隣人は、知り合いの設計事務所に声をかけ、リフォームのアイデアを考えてもらうことにした。3つの設計事務所が、アイデアの提出を承諾してくれた。1つは、過去に車椅子の住宅をてがけた経験のある事務所、1つは、和風が得意な事務所、もう1つは、女性が中心になっている事務所だった。

その3つのプランを見て、一番気に入ったものを選択する。設計者との相性といった点も重要なので、アイデアの提示のときにそんなところも判断する。

設計事務所にとって、自分のアイデアが採用されればいいが、落選ということになれば負担は大きい。しかし、今回、A4の紙2枚だけの提出で、1枚が自己紹介、1枚が間取りのアイデアというものだった。それぐらいならそれほどの負担ではないだろうと参加することにした。



リフォーム前
正面の押し入れが南北の通風を妨げている。


プランの選択

日時を決めて、3つの設計事務所に、新しく住むところと現状の暮らしぶりを見てもらった。2週間後に1時間ずつ時間をとり、それぞれの設計事務所からアイデアの提示を受ける。それをHさんが判断して、1週間後に1つの設計事務所を選択する。

設計事務所のプランは、どれも新鮮で、楽しいものであった。それぞれに個性があり、よく考えられている。どれも気に入った。

車椅子の住宅の経験がある事務所は、車椅子を使う点でのノウハウが盛り込まれていた。和風が得意な事務所は、ところどころに和風の遊び心が加えられていた。女性が中心になっている事務所は、女性らしいこまやかな心配りがなされていた。


設計事務所のプランを見ているうちに、引越しをしなければいけないという、暗い気持ちだったのが、晴れ晴れとしてくるのを感じた。とてもウキウキしてくる。自分の家づくりに積極的に参加しているという、初めて味わう気分だ。

まだ、どのプランでいくか決めかねているが、きっと自分とお母さんにあった暮らしが実現できるだろうと思った。

つづく

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