(作成日03.0817)
気に入ったテーブルがなかったとはいえ、テーブルなしで生活することはできない。今まで、いくつかのテーブルを使ってきた。
最初のテーブルは妻が独身のときから使っていた、木工家の大橋義博さんからもらいうけたものだった。今でも、サイドテーブルとして使っている。レストランへ納入したものの残りということで、しっかりとしたつくりだ。フェルトがかけてあり、テーブルクロスをかけてもずれないようになっていた。
しかし、家庭で毎日テーブルクロスをかけて食事をするというのも難儀なことである。テーブルクロスの上に厚手のビニールを載せるような無粋なことはしたくない。それで、フェルトをはがして、天板にベニヤ板をはった。
5年ほど使用した。大きさは90センチ×60センチ。喫茶店にある二人かけのテーブルの大きさである。しかし、料理の数がふえてくると皿がおけなくなる。
あまりにも小さいということで、最初のテーブル探しをすることになる。いくつかテーブルを見たが、気に入ったものはなかった。
それで、サブロク(180センチ×90センチ)のベニヤ板をホームセンターで買い、それを真中で二つに切った。一つは長い足をつけてテーブルに、一つは短い足をつけて座卓とした。
ベニヤ板に足をつけただけのテーブルはある本からヒントを得たものだった。
日本を代表する建築家で吉村順三さんという人がいる。最近亡くなったが、日本のモダニズム建築を語るうえでかかせない人である。
バブル時代、ポストモダンという言葉がはやった。これは、各方面で使われたが、文字通りだと「モダンの次」という意味になるが、建築では、「なんでもあり」と理解する人が多く、おかしな建物がいっぱいできた。
そのおかしな建物の前はなんだったかというと、面白みにかける建物である。モダニズムというと機能美とか構成美とかで表されるけれど、あたり前の材料を使って、機能を満たし、なおかつ美しさをだしていくところがポイントである。最低限のエレメントを使って美しさをだしていくということは、新しい建物が次々と生まれる過程において必要なことであった。
あるモダニストは、Less is more といった。少ないほうが美しいと。そしてあるポストモダニストはいった。Less
is boreと。少ないのはつまらない。
それで、バブル時期は、ありあまったお金をいいことに余分なものをいっぱいつけた変な建物がたくさんできた。
絵画や彫刻で自己表現するのはいいけれど、建築作品での芸術活動にはおおいに問題がある。それは、まず建物というのは、見るだけのものでなく、機能が求められるからだ。使いやすいか、無駄がないか、エネルギー効率はいいか、雨漏れしないか(芸術建築作品で最大の悩みはこれ!)。
そして、大きな建物は、公共の建築物であることが多い。市庁舎や美術館、図書館など。これらは税金によってつくられるものである。貴重な税金を、自分の実績づくりを目論む首長と、自己顕示欲の強いかつ政治的にうまく立ちまわれる建築家にまかせていいものだろうか。
そして、建物というのは多くの資源を使うので、おいそれと作って、失敗したから作りなおすというわけにはいかない。一回作ったら、どんな建物でも少々がまんしてでも使いつづけなければいけない。
Less is more のモダニストの日本代表が吉村順三さんである。その吉村さんが軽井沢に作った自分の山荘は、多くの建築家が、私の好きな建物にあげている。
吉村順三さんは、この軽井沢の山荘をとても大切に思っていたのだろう。「小さな森の家」という絵本のような本を作った。その本のなかにベニヤ板を切って足をつけただけのテーブルが載っている。厚みが7、8センチぐらいはありそうな、きれいな積層のベニヤ板に丸棒の足をつけただけのテーブルだ。天板は真四角で、90センチ角ぐらいだろう。
天板のボリュームにくらべて、足回りが少々こころもとないが、ざっくばらんな感じが軽井沢の山荘にマッチし、また吉村さんの建物に似つかわしい。それで、私も吉村さんのテーブルをまねてみようと思ったわけである。
しかし、そこは素人の悲しさ。ホームセンターで探しても、厚みが7、8センチあって断面が美しいベニヤ板が見つかるはずもない。それで、厚みが2.4センチのものを5千円で買う。それを、ホームセンターで真っ二つに切断してもらった。
ざっとサンドペーパーをかけてニスで塗装した。それに、ホームセンターで市販されている、ねじ込める木の丸い足と取り付ける金具を買ってきた。
90センチ角の天板が2枚に長い足を1セット、短い足を1セット用意した。1つをテーブルとして、1つを座卓として使うようにした。
これはこれでなかなか使い勝手のいいものだった。冬の寒いときは、座卓の上にふとんをかけて、テーブルの天板を足をはずしてのせる。こたつのできあがりである。小さなホットカーペットを中に置いてみたら、それだけで結構暖かい。
いろいろなバリエーションが楽しめる。麻雀をしたこともあった。

「小さな森の家」建築資料研究社 本体2,330円