WBC世界フライ級タイトルマッチ
内藤大助×亀田興毅 戦
ヤルヤル詐欺といわれて久しい亀田興毅が、王者内藤に挑戦するようだ。過去の流れからいって、またドタキャンをするかもしれないが、まずは実現に向けて両陣営の方向が一致しているようである。ここでおさらいしてみよう。
亀田興毅とは

亀田三兄弟の長男。父親の史郎のもとで我流ともいえるボクシングをしこまれた。TBSの強力なバックアップもあり、2006年8月、WBA世界ライトフライ級チャンピオンのベルトを手にした。
その後、2階級制覇を目指し、フライ級のチャンピオン達を挑発し続けるが、実際試合をすることはなかった。そして実に3年ぶりにWBC世界フライ級王者、内藤に挑戦することになった。
亀田バッシングについて
亀田家の人柄、態度については、ここでは詳細を述べることはない。ここではバッシングされる理由について事実関係を列記する
ライトフライ級、王座決定戦の経緯
WBA世界ライトフライ級のチャンピオンだった、ロベルト・バスケスが階級を上げるためにチャンピオンベルトを返上した。その空位を争うのは通常、同じランクの上位ランク者である。そして、1位ファン・ランダエタと2位亀田興毅により、決定戦が行われた。
これを聞くと、至極当然であるが、実際は、ランダエタはその下の階級、ミニマム級の選手で半年前に引退していた。そしてその後一度も試合することなくWBAライトフライ級1位にランキングされた。
さらに亀田興毅は、フライ級の選手だった。ランダエタとは、実に体重で2階級の差のある選手だった。まさに亀田興毅をチャンピオンにさせるためにお膳立てされたようなタイトルマッチだった。
ファン・ランダエタ戦

ところが、そのファン・ランダエタ戦、開始早々の1ラウンド。ランダエタの合わせたような右フック(ランダエタはサウスポー)、を顎に受け、ダウンしてしまう。その後、ダウンすることはなく、判定に持ち込まれる。
判定は2-1で亀田興毅の勝利となる。しかし、この判定に疑問を感じた人から問い合わせが中継したTBSに5万件も電話がかかったという。
なぜ、TBSにそれほど電話が集中したかというと、亀田は、少年の頃からTBSが密着してきたいわば、丸抱えのネタだったからだ。
亀田大毅、内藤に挑戦
2007年10月、ボンサクレックからWBC世界フライ級のベルトを奪った内藤の初防衛戦の相手は、弟の大毅だった。もし、大毅が世界タイトルをとったら最年少チャンピオンという状況だったのが理由。
亀田大毅は、直前に世界挑戦資格の世界15位にランクされた。直前の両陣営のやりとりが話題になったが、試合は、内藤の一方的な試合となる。
そして12ラウンド、大毅は内藤を投げ飛ばすという暴挙をはたらく。さらにセコンド、史郎、興毅から反則の指示があり、一家は処分を受けることとなった。
前哨戦を繰り返す興毅
内藤が三度目の防衛戦、清水との激戦を制した直後、リングに上がり「今度、俺な」と内藤に直接申し込んだ。しかし、これもパフォーマンスで、実際、拳を交えるようなことはなかった。
たびたび行われる、試合は世界前哨戦と称して、一線を退いたような選手か、下の階級の選手との試合を繰り返した。
暫定王座決定戦の画策
2008年12月、WBA世界王者坂田が、タイのデンカオセーンに敗れる。敗れた直後、「満を持して挑戦します」と興毅がコメントしたが、デンカオセーンのマネージャー問題もあり、試合が行われることはなかった。そして、WBAに対して、暫定王座決定戦の働きかけをする。しかし、JBCがこれを認めることはなかった。もし、決定戦が認められたとしても実際戦ったかどうかは不明である。なぜなら、相手はメキシコの強豪、オマール・サラドだったからだ。
内藤大助とは
内藤大助は、日本チャンピオン、東洋太平洋チャンピオンを経て、3度目の世界挑戦で、世界チャンピオンになる。負けたのは、世界挑戦で退けられた2回のみ。
相手は2回ともタイのポンサクレックである。日本人相手に負けたことはない。タイトル奪取もポンサクレックから、そして2回目の防衛戦もポンサクレック。都合4回戦っていて、1勝2敗1引き分けである。ポンサクレックはフライ級史上最高の17回、防衛した名チャンピオンで、その相手と互角に戦っている。
スタイルは、変則ともいえる特異な動きで、フェイントをまじえて相手を翻弄させる。しかもリーチが長いので、遠心力を使ったハンマーのように振り下ろすフックは一発で相手をしとめる威力を持つ。
運動神経、目、足、いずれも良く、攻防一体となった動きは、予測不可能である。しかし、度重なる激戦のため、目じりを切りやすく、激しい前後の動きでバッティングをすることが多く、出血により試合をとめられることもしばしばである。内藤の唯一ともいえるウイークポイントである。
内藤の世界戦
1.世界初挑戦 2002.4
王者ポンサクレックの地元タイで行われる。フライ級タイトルマッチ史上最短の34秒でKO負け
2.世界挑戦2回目 2005.10
王者ポンサクレックに対して、7回負傷判定負け。
3.世界挑戦3回目 2007.7
引退覚悟で臨んだ試合。王者ポンサクレックに対して、「どこからでてくるのかわからない」と称される変則のフックが良く当たる。3-0の判定勝ち。
4.防衛戦@ 2007.10
亀田大毅との初防衛戦。3-0の大差判定勝利(前述)
5.防衛戦A 2008.3
ポンサクレックとのリターンマッチ。双方、お互いに知りつくした相手で一進一退の攻防が繰り返される。判定は三者三様のドロー。タイトル奪取の際の内藤の出来が素晴らしく、フロックだったという声もあった。しかし、2戦続けてポンサクレックと好ファイトを見せ、内藤の実力が世界チャンピオンにふさわしいものだと印象づけた。
6.防衛戦B 2008.7
日本チャンピオン 清水智信のアウトボクシングに翻弄され苦戦するも、10ラウンド、フェイントを交えた左フックが清水の顔面に炸裂。KO勝利。
7.防衛戦C 2008.12
亀田興毅戦が暗礁にのりあげ、急遽、山口真吾との対戦が決まる。試合は、内藤の一方的な試合になるが、11ラウンド、山口が内藤の連打を受けて棒立ちになったところ、レフリーストップ。TKO勝利
8.防衛戦D 2009.5
中国の熊朝忠との対戦。上海での開催ということで進められていたが、会場が確保されていなかったことが判明、前日に東京に変更。ドタバタもあってか、内藤本来の切れがなく、格下相手にダウンを奪われる始末。しかし、その後、落ち着いて的確にパンチを当て、3-0の判定勝利。
世界戦の予想
亀田興毅の戦い方により、結果は変われど内藤圧勝は間違いない。
ランダエタ戦で軽いパンチが顎にかすっただけで倒れたように、興毅は、ボクサーとしては致命傷ともいえるグラスジョーの持ち主だ。それを自覚しているので、パンチの強い相手との試合を避けている。亀ガードともいえる極端に顔面をガードし、ボディをがらあきにしたスタイルでは、顔面にパンチをヒットさせるのは難しいかもしれない。
しかし、ガードばかりしていて勝てるものではない、パンチを出さなければ勝てない。パンチをだせば、カウンターが入る。内藤は、フライ級の選手としては極端にリーチが長い、同時にパンチをだしたにしても内藤のパンチのほうが当たる。
また、内藤は右利きの選手だが、興毅はサウスポーである。お互いが構えたときに利き腕が遠い位置にある。相当踏み込んでいかなければ利き腕のパンチは当たらない。リーチの差が内藤に有利となる。内藤が4度対戦しているポンサクレックは、サウスポーで、内藤のサウスポー対策はできていると考えてよい。
大毅戦のように亀ガードで逃げ回れば、大差の判定。打ち合いになれば、内藤の早いラウンドでのノックアウト。興毅がアウトボクシングを展開し、足を使ったとしても、内藤にダメージを与えることができず、中盤には餌食になるだろう。
亀田と内藤の実力
実際、亀田興毅の実力は未知である。なぜなら、今までフライのウエイトで指標となる試合をしたことが皆無だからだ。明らかに実力の劣ると思われるウエイトの軽い階級の対戦者に対しては圧倒的な力を発揮する。しかし、それで本当に実力がある証明にはならない。亀田興毅が強いというのは、犯罪でいえば、状況証拠の積み重ねに過ぎない。力のある相手と戦ったことがないからだ。だから逆説的になるが、本当に強い相手と対戦した場合、いい勝負をする可能性がないとはいえない。
現に内藤は、どんな相手と対戦しても接戦になる傾向がある。難攻不落といわれたポンサクレックをくだしたかと思えば、格下の相手に対しても苦戦する。内藤のサービス精神のあらわれというわけではあるまい。相手の力に合わせた試合をしてしまうのだ。亀田興毅にも、その傾向があるとしたら、内藤とは善戦が期待できる。しかし、今まで一度も強い相手と試合したことのない興毅が、百戦錬磨の内藤に勝てるのか。あるいは勝てないまでにしても試合ができるのか。
内藤の試合を見ていると、序盤の動きは固くぎこちない。スロースターターというよりは、あがり症のきらいがある。しかし、じきにペースをつかみ最終的には、実力を見せ勝利を手にする。これは、横綱が土俵際まで攻め込ませてから、ゆったりと反撃にでて最後に寄り切るのと似ている。豊富な練習量に裏打ちされた、実力と体力がなければ、最初に土俵際まで攻められたときに、土俵を割ってしまう。内藤の苦戦からの逆転は、真の実力の裏返しなのである。
本当に実現するのか
亀田興毅と内藤の実績、対戦相手を考えれば、実力の差は明らかだ。内藤は前戦、熊朝忠に苦戦した、それを見て、内藤衰えたり、と判断したのだろうか。私は、前戦、内藤が苦戦したのは、内藤の力が落ちたというよりは、ボクシングに専念できる環境になかったことが原因とみている。また、仮に内藤の力が落ちていたとしても、今までの貯金は亀田興毅を倒すにはおつりがくるぐらい残っているように思う。
それは、間近でみている、父親の史郎とて同じことだろう。息子の実力はわかっている。今回、内藤と対戦することにより、強いとされている亀田興毅の実力が、白日の下にさらされることになる。そういう決断ができるだろうか。今までの経緯からすると、やるとは思えない。亀田家が追いつめられているのは事実だ。
有力ジムだった協栄ジムを出て、自前の亀田ジムをつくった。有力プロモーターのジョー小泉氏とも袂を分かった。特別な契約をしていたTBSからも、特別な扱いを解消され、交渉しようにもプロが存在しない。もう全てが自分たちの言いなりで事が運ばなくなった。今までのツケは大きすぎた。
そして、最大の切り札がこの内藤戦である。この最後のカードを切る勇気が亀田家、とりわけ亀田史郎はもっているだろうか。