◇第14回◇
日本外交と外務省(その2)
我国の対中国、韓国や北朝鮮外交について考えてみたい。
対中国、韓国に対する我国の外交は、これまで謝罪外交の繰り返しであった。謝るのは1回だけでよいはずだ。
謝罪外交を繰り返えす度に 相手国に理不尽な外交カードを与えているようなもので、私にはどうしても理解できない。
対北朝鮮との関係については、先方も我が国との国交を積極的に望んでいるとは思われないし、我が国も北朝鮮と国交を結ぶメリットは 当面ほとんどない。
何も無理してこちらから積極的にアプローチする必要はないし、先方がその気になった時に、じっくり考えればよい。
今は、日本人の拉致問題の解決に全力を注ぐべき時だと思う。
具体例について考えてみた。
今年春、台湾の李登輝前総統の病気治療のための来日ビザ発給について、中国は強硬に抗議してきた。
我国は、これは人道的な問題だからと何度も中国に弁解し、厳しい条件をつけて恐る恐るビザを発給した。(オッカナビックリ外交)
その後、李登輝氏はアメリカ入国のビザ発給を申請したが、アメリカは何のためらいもなく あっさりとビザを発給し、李登輝氏はアメリカで講演することもできた。これに対し、中国はちょっと抗議しただけだった。
私人としての来日のどこが悪いのか、アメリカと比較するまでもなく、正しい事には毅然とした態度をとるべきである。
最近 (8月15日) また、アメリカは台湾の現職行政院長 (首相) 張俊雄氏の入国ビザ発給を決めたが、中国は、今のところ何の反応も示していない。
今年5月初旬、北朝鮮の金正日総書記の長男金正男が偽造パスポートで密入国しようとした事件で、政府は“金正日総書記の長男らしき者”を身元確認もせずに即座に第三国に出国させて、これが最良の方法だったと述べているが、大部分の国民は納得していないだろう。
偽造パスポートでの密入国は明らかに犯罪行為である。一方北朝鮮政府は、そんな事はあり得ない、事件は日本のでっち上げだと言っているのだから、身元確認は勿論、国内法による処分の手続きを堂々と進めるべきであった。
その中で、北朝鮮からの何らかの意思表示を待って政治的解決を図るというのが筋ではないか。(オッカナビックリ、ウヤムヤ外交)
歴史教科書、靖国参拝問題に関しては、本ホームページ第10回 (歴史教科書問題を考える) 第11回 (小泉さんの靖国神社参拝問題) で採りあげたが、私は この二つの問題は、明らかに内政干渉だと思っている。
最近一部 (公明党、社民党等) に、地方参政権を在日外国人に付与する動きがあるが、今回の理不尽、且つ執拗な内政干渉を通じ、これらの国の在日外国人に参政権を与えることの危険性が より一層明白になった。
地方分権が強く叫ばれている今日、これら在日外国人に 地方参政権を認めれば、彼等の本国政府 (中国や韓国、北朝鮮) の意向が、我が国の地方行政に影響を与えないとは言いきれないからである。
今回の歴史教科書、靖国参拝問題に関して、我が国外交の不手際について考えてみた。
今年7月下旬、田中外務大臣が韓国、中国の外務大臣と会談した時、首相の真意を伝え、相手方の理解を求めるべき立場の外務大臣が、小泉さんに参拝中止を説得する旨 相手国外相に述べたことは、閣内不一致どころか、総理から見ればウラギリ外交そのものではないか。
一瞬 これは中国外相の発言か日本外相の発言かと疑ったほどである。
我が国外交史上例のない汚点であり、国辱ものと言っても過言ではないと思う。
その後、与党幹事長、更に自民党の野中元幹事長等が 相次いで、相手国に理解を求めるためと称して中、韓両国を訪れたが、これは著しく現状認識を欠いたもので、火に油を注いだ結果にしかならず、行かない方がよかった。(ベンカイ外交)
与党幹事長等は政府機関ではないのだから、政府からの命を受けて (例えば政府派遣特使等) 行ったのならともかく、そうでなければ これは二重外交になり、おかしな話でもある。
靖国参拝に強く反対している公明党の幹事長も加わっているのだから、総理の意を受けて行ったとは思えないのだが…。
自民党の野中元幹事長が、中国の要人と親しいから自分の言うことは聞いてくれるかもしれないと思ったとしたら、とんでもない思い違いである。
情に訴えるとか、コネを使う等日本人的発想が外交の場で通用しないことは、百もご承知だと思うのだが…。
中国外交の特徴についても考えてみた。
今春、アメリカの偵察機と中国の戦闘機が空中衝突した事件があったが、中国側は まだ原因も分からない内に、即座にアメリカが一方的に悪いと激しく攻撃していたのに、その後は、そのことは もう忘れたかのように、アメリカの国務長官訪中の際は、何とかアメリカとの友好関係を維持したいと躍起になっていたようだ。
靖国参拝問題についても、中国は激しい非難抗議を繰り返していたが、8月15日が近づくと、せめて8月15日だけは避けてくれとトーンダウンしてきた。
小泉さんが8月13日に参拝したため、中国は、日本はある程度中国の意向に従ってくれたと言うようになった。(中国には中国らしい戦略が初めからあったのである)
8月9日、金大中大統領は、与党、新千年民主党最高委員会で「新しい歴史教科書をつくる会の教科書の採択率が低いのは、我々の強硬対応を日本のマスコミが社説などを通じてそのまま報道してくれた結果だ(強攻策は成功)。今後も韓国政府として強硬対応を続けていく」(8月10日読売)と述べているが、韓国には韓国の戦術があるわけだ。
このような最近の我が国外交の例を見ても、我が国が相変わらず弁解、弁明外交に終始し、更に情報分析、戦略、戦術の欠如や外交の一体性、一貫性に いかに欠けているかがよく分かる。
しかも、この状態が今尚、続いているのだから、国民にとっては誠に不幸なことだと言わねばならない。
国内問題で与野党激論するのは結構なことだが、外交問題では超党派体制で臨んでもらえれば、日本外交も少しは良くなると思うのだが。
外交問題で、与野党がこんなに足の引っぱり合いをしている国が他にあるだろうか。
外務省の一連の不祥事に関しては前回の冒頭で触れたが、田中外務大臣率いる外務省について少し考えてみた。
田中真紀子氏が外務大臣に選任されたのは、小泉氏の自民党総裁選挙の際の論功人事だと思われるが、これは小泉総理の明らかなミスキャストだと思う。
今年5月の連休明けの記者会見で、真紀子氏はアメリカの国務副長官と会わなかった言い訳に「連休中は、大臣就任のお祝い品の片付けやらで休みも取れず、パニックになっていたから…」と弁解していたが、大臣に就任しただけでパニックになるようでは、国に一旦緩急ある時はどうなるのだろう。
仮にそれが事実であったとしても、大臣が口にすべき言葉ではない。
また、外務省の不祥事に厳しく対処する意欲は分かるが、次官の大臣室への出入禁止等外務省の幹部職員全てを最初から敵にまわすというやり方は、大臣どころか組織の長として失格だと思った。
先ず大事なことは、自分の政策や意見を部下に十分理解させ、大臣の意向に沿って部下の能力をフルに発揮させる体制を作ることである。
いくら権限があっても1人では何もできない。
これは役所でも会社でも、組織の長に立つ者が当然心掛けるべき「いろは」の「い」だ。
先に述べた対中、韓 外相会談での不適切な対応、参院選応援演説不祥事の党紀委員会での処分等も重なり、今や真紀子外相の影も薄くなった。
外務省不祥事に関する人事も官邸主導で行われた。(真紀子外相は柳井駐米大使の留任を希望し、そのことを外務省職員を集めて訓示し、公然と官邸人事に反旗をひるがえしたりしたが、デンバー総領事の公金流用事件等を考えると柳井氏の更迭は当然だと思う)
田中外相の地盤沈下は、外務省の地盤沈下につながってきた。小泉首相の靖国神社参拝日程の検討に際しても、本来なら外務省の意見を聞くべきなのに、それはなかった。
8月16日自民党の山崎幹事長が、総理の靖国参拝の真意の説明などのため東南アジア諸国を訪問したが、外務省頼りにならずということもあったのかもしれない。
本来外務大臣が取り仕切っていた省幹部職員人事も、田中大臣ではできなくなったし、外務省の現状は、国民の期待に応えて十分な外交機能を発揮できる体制にはなっていない。
外交は一刻たりともゆるがせにできない。
小泉総理の聖域なき構造改革は、専ら経済、財政分野に重点が置かれており、国民の期待も大きいが、外交については未知数、あまり得意分野とは思われない。
それだけに、外務大臣には最も優秀、有能な人物を当てる必要があり、新大臣のもとで早急に体制を確立してもらいたいと思っている。
その上で世界の常識にマッチした力強い外交を期待したい。
去る9月11日、アメリカで同時多発テロによる大惨事が発生した。
アメリカは報復措置を検討している。
これに対し、同盟国である我が国がどう対応するかを見守りたい。
事件直後、イギリス、フランス、ロシア等の大統領、首相がいち早く国際テロと闘う強い決意を表明したが、我が国では12日に総理が、記者会見で安全保障会議の決定事項として6項目を発表した。
この決定事項の1番目は、邦人の安否の確認であり、2番目が邦人対策、国際テロについては5番目に「国際テロについては、米国をはじめとする関係諸国と力を合わせて対応する」と述べただけで、イギリス、フランス、ロシア等の首脳の発言に比べると いかにも迫力を欠き、一国平和主義、自国民優先主義的で違和感を感じた。
邦人の安否の確認や邦人対策に万全を期すことは、国として極めて当然のことであり、総理が内外に向かってわざわざ真っ先に述べることではない。(邦人の安否の確認や邦人対策に万全を期すという、極く当り前なことでさえ、全閣僚が集まる安全保障会議に図らねば 決められないというのだろうか)
こんな調子だからアメリカも、日本にはあまり期待していないようである。(2001.09.15)
次回は〔第15回〕
「構造改革をめぐる諸問題」(2001.10.01)
【出来事】- 9月11日 台風15号関東地方に上陸。
- 9月11日22時頃(日本時間) アメリカで同時多発テロ発生。ハイジャックされた民間航空機2機がニューヨーク世界貿易センタービル2棟に次々に激突。同じく1機がワシントン郊外の国防総省に激突。又同じく1機がピッツバーグ近郊に墜落。大惨事となった。
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