9月4日、政府行政改革推進事務局は、各省庁から出された特殊法人 (74) や認可法人 (86) の廃止、民営化に関する見直し案回答を公表した。
これを見ると、廃止、民営化を基本とする小泉首相の考え方は ほとんど無視された形で、各省庁の官僚達が改革に背を向け、既得権益擁護のため如何に組織防衛に躍起になっているか、また その背後にいる族議員の抵抗勢力の強さも よく分かった。
小泉構造改革の最大の正念場だと思う。
小泉首相は、道路公団等抵抗が多いところから先にやるという意気込みを示しているが、扇国土交通相が、9月21日 総理に、道路公団、本四連絡橋公団等の民営化の方針を示したことは大きな前進だと思う。
これを機に他の省庁所管の特殊法人の民営化や廃止にも弾みがつくことを期待したい。
いずれにしてもこの問題は、抵抗勢力にひるまず是非やり遂げてもらいたいものだ。
最近の不況や株安に鑑み、先ず景気回復を図るため、今年度の国債発行30兆円以内にとらわれず、大幅な補正予算を組むべしという意見が与党内部からも多く出ている。(本予算では、国債発行28,3兆円だから、30兆円以内に収める為には、1,7兆円しか残枠はない)
景気回復先行論者のように、バブル崩壊までの かっての我が国経済を頭に描きながら、それと比較して現状を考えると、まさに危機的状況と言えるだろうが、しかし、我が国の経済は既に成熟期に達し、構造的にも新たな局面を迎えており、過去を基準にして現状を考えるべきではないと思う。
今や政府の財政出動で景気が良くならないことは、過去10年の経験で十分実証済みである。
私は、現状を不況ではあるが 危機的状況と捉えるべきではないと思っている。
ここで景気対策のため安易に補正予算を組むことは、来年度の国債発行30兆円以内という小泉首相の公約がなし崩しにされる危険性があるのみならず、構造改革の後退につながる危険性を はらんでいると思う。
特に、去る9月11日に発生したアメリカの同時多発テロにより、景気低迷が更に加速され、大幅補正予算編成の圧力が一層強まると思われるが、それでも私は、今年度の補正予算はあくまで緊急止むを得ないもの、構造改革の為に必要なものに限るべきだと思う。
構造改革に伴う痛みは色々考えられるが、早くも痛みに耐えられないと音をあげ、既に抵抗しているのが前述の各省庁の官僚組織だ。
痛みの中で一番大きいのは失業問題だと言われている。
民間では、日立、東芝など大手総合電器メーカー等が既に大量の人員整理を発表している。
かって、斜陽化した炭鉱の人員整理や閉山に伴う失業問題は、非常に深刻な様相を呈したが、最近のリストラは少し様子が違うように思われる。
この就職難の時に、企業が希望退職を募集すると予定人員よりも応募者が多く出る傾向が見られるのは、なぜだかよく分からない。
しかし、この問題はいずれ深刻な問題になると思う。
政府は、構造改革に伴う痛みは2〜3年は耐えてもらいたいと言っている。
しかし、私には、この痛みはケースによっても違うが、とても2〜3年で解消できるとは思えない。
人によっては長期間に亘って大変なダメージを受ける場合もあるだろう。
構造改革を行う上で 最も重要なのがセーフティネットだし、また、最も難しいのもセーフティネットだ。
何十万人、何百万人という雇用の場を作るのは至難の技だと思う。
IT関連で何名、介護関連で何名等と机上で作るのは簡単だが、問題は求人、求職のミスマッチだ。
職種、年齢、給与、地域等々のミスマッチをクリアーすることは困難だ。
求職者にも相当な努力と覚悟が必要になってくるだろう。
政府はセーフティネットについて色々考えるだろうが、実際には雇用保険の給付期間の延長や職業訓練の充実ぐらいしかないだろう。
民間企業も自らの構造改革、即ちリストラは止むを得ないとしても、その際政府のセーフティネットばかりに頼ることなく、再就職先の確保に全力を尽くす等自らセーフティネット作りに努力すべきである。
これも企業の大きな社会的責任の一つだと思う。
最近、与党内にインフレターゲット論がある。
デフレ、スパイラルに陥るのを防ぐため、一定の物価上昇率を目標にした金融政策の主張である。
物価は本来需要と供給の関係で決まるものだが、これを人為的に (金融面から) 物価を上昇させようというものである。(借金をしている者は得をする。特に政府や地方自治体の借金666兆円は返済し易くなる。預貯金は目減りすることになる)
経済の現状に鑑みると、この理論は分からないでもないが、大きな危険も伴う。
最も心配なのが、インフレになった時に、これを制御できなくなることだ。
今、民間各企業が懸命になって構造改革や不良債権処理に努力している時、インフレ傾向になったら、折角取り組んでいる構造改革に水を差すことになってしまう。
物価が上昇すれば 景気が良くなるとは 必ずしも言い切れないし、あちこちに歪みも出てくるだろう。
景気が悪い中で 物価が上昇するというスタグフレーションに陥る危険性もあり、そうなったら大変なことになる。
したがって、私はインフレターゲット論は慎重に考えるべきだと思っている。
構造改革が実現したら景気も回復し、かってのような活気溢れるような経済社会になるだろうか。
私はそんなに甘い考えは持っていない、むしろ否定的だ。
その理由は本ホームページ第8回「どう考える 日本経済の現状」で述べたが、いずれ私の考えを もう少し詳しく書いてみたいと思っている。
また、構造改革は今回一回やれば良いと言うものではなく、その後も経済、社会の進歩や変化に応じて絶えず考えていかねばならない問題だと思う。
政府は、構造改革の必要性を説明する時、「構造改革をしたら こんな社会になるのですよ」と説明するよりも、「今、構造改革をしなかったらどうなるか、日本経済は取り返しがつかない破滅の道を進むことになりますよ」と説明した方が、国民には理解し易いと思う。