◇第17回◇
国際テロ組織撲滅と難民救済
去る9月11日に発生したアメリカの同時多発テロに関しては、全世界がこれを非難し、多くの国がアメリカの武力行使を支持するとともに、これに協力、支援する姿勢を示した。
10月8日未明、アメリカは、アフガニスタンのタリバンの軍事施設等に対し、巡航ミサイルや空爆を行い 武力攻撃を開始した。イギリスも同時に武力攻撃に加わった。
フランス、ドイツはアメリカの要請があれば、いつでもこの武力攻撃に参加協力する用意があることを表明し、カナダやオーストラリアも 同盟国 米国に軍事協力する方針である。ロシアもこの武力攻撃を強力に支持する旨を表明している。
我が国は憲法の範囲内で 即ち武力以外の面で、できる限りの協力、支援を行うという姿勢を示してきたが、これはアメリカに協力、支援というより、国際社会の共通の敵、国際テロ組織を壊滅するために、アメリカや関係諸国と協力して できるだけのことをすると言った方が適切かもしれない。
アメリカ大統領は、これはもう戦争だ、武力による報復と言っていたが、正確に言えば武力行使ではあっても 戦争ではないし(戦争は国と国との争い)、報復という言葉は適切ではない。
また、テロ攻撃は、これまでのような派手な暴力行為だけとは限らない。
現に、アメリカでは炭疽菌の郵送事件が多発し(アフリカ、南米でも)、主に連邦議会、ホワイトハウス、国務省等の公的機関やマスコミ関係がターゲットになっているようだが、被害は一般市民にまで及んでいる。
多数の感染者や死亡者も出ており、全米を大きな不安と混乱に陥れているこの犯罪行為は、組織テロによる凶悪犯罪であることには間違いない。
オサマ、ビン ラディン氏やアルカイダ等のテロ組織との関係は確認されていないが、送られてきた文書からみると、イスラム原理主義者の犯行である可能性が強いと思われる。
地下にもぐったこの種のテロは、今後、全世界、とりわけ日本を含む先進諸国でも発生する可能性は十分あると思わねばならない。
炭疽菌対策は勿論、国際社会は あらゆることを想定した対応策を考えておかねばならないが、最も基本になるのは目的や理由の如何を問わずテロは絶対に許さないという
大きな国際与論であろう。
長期に亘るテロ組織壊滅作戦は、幅広い国際的な連携や協力なくしては遂行できない。
戦争なら、相手国が降伏するまで徹底的に叩けばよいわけで、その際 相手国々民も戦争に協力しているのだから、民間人にもある程度の犠牲が出ても仕方がないかもしれない。
しかし、今回の相手はオサマ、ビンラディン氏やその一派(アルカイダ)のテロ組織、それをかくまったり、支援している組織(タリバン等)である。
テロと無関係な一般市民には できるだけ被害が及ばないような戦術が、特に要求される。
既に、これまでの武力攻撃に対し、アラブ諸国の中から民間人に被害が及ぶとして反発もでている。
一般市民に更に多くの死傷者がでると、アラブ諸国は一層反発を強めるだろうし、国際社会の支持を失うことになる。
これまでの攻撃作戦を見る限り、アメリカもこの点には随分神経を使っているようではあるが、作戦が広範囲に亘るため、誤爆等により民間人にも犠牲者が出ていることは残念だ。
アメリカには、一般市民の犠牲者を最小限に抑える更なる努力が求められるし、大切なことは武力攻撃の終点と結末を冷静に考えておくことだ。
アフガニスタンでは、ソ連の侵攻、内戦、長期に亘る干ばつに加え タリバン政権の非人道的な圧政も重なり、既に多くの難民が発生し、その一部はパキスタンをはじめ周辺国に流入していたが、更に今回の戦禍による難民の発生は 膨大な数になることが予想される。
難民の悲惨な実態は テレビ等マスコミ報道で見るまでもないが、これから冬を迎え、今のままでは相当数の凍死者がでるとの予測もある。
武力によるテロ撲滅作戦を国際社会が支持するならば、難民の救済にも、国際社会がこぞって手を差し伸べるべきだ。
武力行使ができない我が国としては、難民救済は国際テロ撲滅作戦の支援協力の一環として果たし得る最大のものだと思うし、国際社会からの期待も大きいと思う。
難民救済には主として自衛隊が当ることになるが、難民は安全なところにだけ居るとはかぎらない。
戦場以外なら、多少の危険地帯でも難民救済活動を展開すべきだと思う。
また、自らを守るための武器使用は勿論、難民を救済、保護するために必要な範囲での武器使用は当然許されるべきだと思う。
そうでなければ、実効ある救済活動は不可能だし、外国からは またまた日本は安全なところにだけ居て、難民救済の格好を示しただけだ と評価もされないだろう。
本件に関し、衆議院で、社民党々首土井たか子氏は、「総理は自衛隊員の戦死を黙認するつもりか」と質問していたし、参議院の委員会では、ある社民党女性議員は「自衛隊員は、そんな危険なところに行くつもりで入隊したのではない。雇用契約違反ではないか…」「アフガニスタンを武力攻撃しているアメリカこそ、テロ国家ではないか」等と非常識というより頭の程度を疑いたくなるような愚劣な質問をしていた。
これが国民から選ばれた国会議員の発言かと思うと情けない。
自国の兵士の安全を願わない指導者など、どこの国にもいないし、安全が完全に保障されているところなら わざわざ自衛隊を派遣する必要もない。
自衛隊の使命を一体どう考えているのだろうか。
更にまた、国会論議を聞いていると、「野戦病院が攻撃されたら…」等々、議論がまことに幼稚である。
仮に野戦病院を設置するとしても、できるだけ戦闘に巻き込まれない場所に設営することや万一攻撃された時の臨機応変な対応等は、実践部隊に任せなければ実効ある活動はできない。
ここで政治は、自衛隊が戦闘行為に巻き込まれないという原則を、はっきり示せば十分だと思う。
目的が難民救済に限定され、且つ国際的に許されるなら、アフガニスタン領内に於いても自衛隊の活動はできるし、憲法に抵触するものではないと思う。
私は、国際テロ撲滅作戦の遂行と同時平行的に、難民救済も十分行われるべき、即ち武力行使と難民救済は表裏一体の関係と捉えている。
そうでなければ、国際テロを完全に消滅させることはできないし、今回の事件が単なるアメリカの報復紛争事件に終わってしまうことになる。
今回の武力攻撃が終了し、一応の目的が達成された時、アフガニスタンにどういう政権ができるのか まだ分からない。
新しい政権ができても、政治的、社会的安定を取り戻し、難民や貧困問題を解消するには まだまだ時間がかかる。
今回、大変な苦渋を蒙ったパキスタンも政治的、社会的な混乱や不安は当分残るだろう。
その時点で、日本には大いに貢献する分野があると思うし、また国際社会もそれを期待している。
APECに出席した小泉首相は、10月20日上海で、アフガン復興支援について、日本は主導的役割を果たしたい旨表明している。結構なことだと思う。(2001.11.01)
次回は〔第18回〕
「マスコミについて」(2001.11.15)
【出来事】
- 10月15日 小泉首相訪韓 金大中大統領と日韓首脳会談
- 10月17〜21日 APEC(アジア太平洋経済協力会議)、於上海(17〜18日閣僚会議 20〜21日首脳会議)
- 10月25日 プロ野球日本シリーズ、ヤクルト優勝(対近鉄戦4勝1敗)
- 10月29日 テロ対策関連三法案(テロ対策特別措置法案、自衛隊法改正案、海上保安庁法改正案)成立
|