◇ これまでの云 い た い 放 題 ………◇ これまでの云 い た い 放 題 ………◇ これまでの云 い た い 放 題 ………
【2002/01/15】



◇第22回◇
医療保険制度改革について(その1)

 昨年、医療保険制度改革についての方向性が明らかになった。
 その主な内容は
  • サラリーマンらの自己負担は 必要な時に3割に引き上げる。(政府は2003年度からと言っているが、自民党厚生族は反対しているので流動的)
  • 2003年度からサラリーマンらに総報酬制(ボーナスも保険料算定の基礎に含める)を導入。
  • 2003年度から政府管掌健康保険の保険料をアップする。
  • 2002年度診療報酬は、2.7%引き下げる。(内本体部分1.3% 薬価等1.4%)
  • 高齢者医療の自己負担は定率1割(高所得者は2割) 通院の場合自己負担限度額 原則12,000円、入院の場合限度額 原則42,000円とする。(2002年10月から)
  • 高齢者医療の対象を70才以上から75才以上に段階的に引き上げる。
  等である。
 尚、注目されていた高齢者医療費伸び率抑制制度(人口増加率や経済成長率を勘案して医療費伸び率を抑制する)は見送りになってしまった。

 我が国の医療保険制度は 昭和36年に国民皆保険を達成し、世界に誇るべき制度としてうまく機能してきたが、高齢化とバブル崩壊等により保険財政がおかしくなり、医療保険制度改革の必要性については、実は10年以上も前から関係者の間では強く叫ばれ続けてきたのである。

 国民医療費は、ここ10年毎年ほぼ1兆円づつ増加し、現在では年間31兆円を超えている。 (平成元年度19兆7,290億円⇒平成11年度30兆9,337億円に)
このままいけば高齢化のピークを迎える2025年には、81兆円 (内55%は老人医療費) になると推計される。これは今の国家予算に匹敵する額だ。
 国民所得の伸びの範囲内で、医療費も伸びるのなら問題はないのだが、医療費の伸びの方がはるかに大きい。(国民所得、国民医療費、夫々平成元年度を100とすると平成11年度の国民所得は119であるのに対し医療費は157と伸びている)
 こんなに医療費が大幅に伸び続けた要因は
  1. 高齢化が急速に進んだこと。 (老人医療費は平成元年度 約5.6兆円⇒平成11年度 約11.8兆円に倍増している)
  2. バブル崩壊後も診療報酬 (医者が受け取る額) をほぼ毎年アップしてきたこと。
  3. 医療の高度化、その他乱診乱療など医療費の無駄使い。
    などが挙げられる。
 その外にも、先進諸外国に比べて我が国の場合、入院日数が著しく長いこと、医療費に占める薬剤費の比率が高いこと (薬価引き下げにより最近多少改善されつつある)が、高い医療費の要因ともなっている。

 保険財政の現状はどうなっているだろうか。
  • 組合管掌健康保険(大企業が単一で又はいくつかの企業が一緒になって健康保険組合を作っているもの)
     年々増加する老人保健拠出金が、保険料収入の30〜40パーセントに達してもはや限界にきていること、不況のため保険料算定の基礎となる標準報酬(被保険者の給料)が伸びず、またリストラなどで被保険者が減少して、保険料収入が伸び悩んだり、減少したりしている。
    収入は減少するのに、上昇し続ける拠出金や医療費支払のため、ほぼ7割の健康保険組合が赤字となっている。
    保険料率をアップする組合が続出し、解散に追い込まれる組合も出始めている。
  • 政府管掌健康保険 (政府が保険者になっており、主に中小企業の被用者が加入)
     事情は ほぼ上記組合管掌健康保険と同じである。来年度も7,000億円の赤字見通しであり、これまではバブル期の積立金 (事業運営安定資金) で赤字補填をしてきたが、来年度は底をつくため2003年度には、保険料率を上げることが決まっている。
  • 国民健康保険 (市町村が保険者で上記の被用者以外の者が加入)
     被保険者には低所得者や無職の者も多く、それだけ保険料収入も上がらないため、保険財政は特に厳しいところが多く、一般会計から補填せざるを得ない市町村も多い。
    全国市長会や町村会は健康保険の一元化を主張している。
 このように、医療保険財政が深刻な状況にあるのは まぎれもない事実である。

 これについての これまでの政府の対応は
先に述べたように、医療保険制度の抜本改革については10年以上前から強く叫ばれていたにもかかわらず、その都度、日本医師会 (主に開業医が加入) やこれと癒着した族議員の抵抗に押しつぶされ、政府は ほとん何もしてこなかった。
最近では、平成12年には医療保険制度の抜本改革を行うと政府は明言し、関係者に大きな期待を持たせたが、これまた先延ばしになっていた。

 医師会の力 特に政治力は、かっての故武見太郎に象徴されるように、絶大なものがある。 我が国の医療保険制度は、医師会に牛耳られてきたと言っても過言ではない。医師会の了解なくして医療保険制度の改正はできなかったのである。
 バブル崩壊後一般社会が不況に喘いでいる時、厚生省は医師会の圧力により、ほぼ毎年診療報酬を上げてきた。薬価を値下げした時も、値下げ分は患者に還元すべきなのに、診療報酬引き上げの財源に当てる始末だ。
ある時は自民党幹事長と医師会長が丸秘覚書まで結んで医師会の意向を尊重した。

 病院のサロン化ということがある。
或る医院の待合室での老人たちの会話
「○○さんは今日はみえていないですね」 「○○さんは今日は風邪で体調が悪いので来ないと言っていたわよ」
という具合で、老人たちは夫々診察を受け、飲みきれないほど幾種類もの薬が詰まった紙袋をもらって帰っていくという本当の笑い話である。
老人の患者負担は、1回800円で5回目以降は何回通院しても無料なのだから(または月上限3,000円 大病院は5,000円)、こんなこともあるわけだ。
 社会的入院という言葉がある。
これは、加齢により身体的機能が衰えたり、ボケたりで家族が面倒を見きれいため、治療の必要はないのに病院に入院させる、即ち養老院代わりに病院を利用することである。
これらは、老人医療費の無駄遣いに大きく寄与? してきたことは間違いない。
一昨年創設された介護保険制度により、社会的入院はなくなり、老人医療費はかなり減ると言われているがまだ実績は出ていない。

 国民医療費が毎年1兆円づつ伸びているというが、一般の人々の医療費は あまり伸びていない、伸びているのは老人医療費で、これが医療費全体を押し上げているのである。
したがって、医療保険制度を本当に改革しようとするならば、老人医療にメスを入れないかぎり実効は上がらない。
 開業医の立場からは、増収を図るには、一般人の医療費があまり伸びないとすれば、老人医療をターゲットにして増収を図るということになるのだろう。
このため、以前老人自己負担無料から 一部定額負担を導入した時にも 医師会は猛反対をしたし、また定率負担にした時も、医師会の強い抵抗のため 低額の負担上限額を設けざるを得なかったのである。(2002.01.15)(次回につづく)

 次回は〔第23回〕「医療保険制度改革について(その2)」(2002.02.01)

 【出来事】
  • 1月1日 欧州単一通貨ユーロ流通開始
  • 1月9日 小泉首相 ASEAN加盟五か国(フィリピン マレーシア タイ インドネシア シンガポール)歴訪