◇第26回◇
「うちわで あおげ」の巻(少年時代の思い出 V)
中学の時、校内に無線部を作ったことは前回すでに述べた。
新築された校舎に校内放送設備が導入されることになった。
市内のKラジオ店が設備一式を請負うことになり、各教室にスピーカーが配置され、放送室は1階玄関横の小部屋が当てられ、そこに放送機材が置かれた。
我々も Kラジオ店には よく出入りしていたので、顔見知りの技術者達(店員)が工事を行った。
これで伝達事項などを、全教室に一斉に放送したり、ラジオ放送(当時はNHKのみ)やレコード音楽を教室で聞けるようになった。
しかし、この校内放送設備が有効に活用された記憶はあまりない。
前回述べた通り、我々無線部員は、こと電気やラジオのことに関しては 先生方に大変信頼が厚かったため、放送室や放送機器の管理は事実上我々に任された。
私達だけは 放送室の鍵も自由に使って出入りできたし、先生は必要な時以外は滅多に入ってこなかったため、昼休みや放課後は、部室とともに、ここも溜まり場にして自由にレコードを聞いたりして楽しんだものである。
ところがある時、無線部の中核3人(私以外は仮にK君とS君とする)で良からぬ企み(いたずら)を思いついたのである。
放送室の丁度真上が、我々の教室になっているため、放送室から教室に線を引いて 授業中に こっそりラジオが聞けないかというものである。(当時は携帯ラジオ等は、勿論ない時代の話である)
ラジオを聞くのが目的ではなく、要するにスリルを味わいたいということだ。
もしバレたら、叱られるのは勿論、先生達からのせっかくの信頼も失い、放送室への出入りも禁止されてしまうだろう。バレないようにするにはどうすればよいか。
まず放送室から2階の教室にビニール線を引くためには、教室の床(放送室の天井)に穴をあけねばならない。自分の腰掛けの丁度下あたりの床に、細いビニール線が通るくらいの小さな穴をあけるのだが、木造校舎であったため、ハンドドリル(ラジオの工具)を使うと以外に簡単に穴をあけることができた。
ビニール線を放送室のアンプのモニター用スピーカの接続部分につなぎ、2階教室の片方は、片耳式のレシーバー(受話器)につなげばよい。
おおかたの準備は前日に整え、いよいよ実行にとりかかった。床から出ているビニール線はバレないように上着の中から袖を通し、先端をレシーバーにつないだ。
レシーバーと言っても今のようなプラスチック製の小さなイヤホーンではなく、直径5〜6センチもあり、これを手のひらにおさめ、先生に分からないように耳に当てるのには苦労した。
放送室のアンプのスイッチは、前の休み時間にすでに入れてある。
何食わぬ顔で片手を耳に当て、ラジオを聞こうとするのだが、雑音が多くてよく聞き取れなかった。
最初のうちは多少聞き取れたが、次第におかしくなった。何かトラブルが起こっているような気がしないでもなかった。
授業が終わるのを待ちかねて、我々3人は放送室に急行した。
放送室の戸を開けた途端異様な焦げ臭い匂いがした。
電気をつけると室内一面に白い靄がかかっている。あわててアンプのスイッチを切り、外側の窓を開けた。(廊下側の窓も開けたほうが、換気には有効だが、廊下に匂いが流れてしまう)
窓を開けただけでは、匂いはなかなか消えない。
S君が叫んだ、「うちわであおごう」。
我々3人は、必死になって団扇であおいで換気につとめた。あとで思い出すと、その光景は滑稽でもあるのだが、その時は本当に必死だったのである。
トラブルの原因は、規格外の使い方をしたため、アンプが加熱したものである。正確に言うと、アンプのアウトプット トランスが加熱し、絶縁紙が焦げて多少発煙したというものだ。(このトラブル状態がもっと続けば、ぼやになる危険性は十分あったと思う)
心配はアンプ(放送機器)が故障していないかということだった。
加熱した部品が冷めたころ、再びアンプのスイッチを入れ、点検してみたところ、全く正常に作動した。
これでやれやれ、3人は大いに胸を撫で下ろした。この種のいたずらは二度とやるまいと反省した。
それにしても、放送室や放送機器の管理を14〜5才の生徒に任せてしまうとは、当時の中学校もおおらかだった。お陰で我々は中学時代を大いに満喫することができた。
その後S君と私は、同じ高校に進学し、同高校の無線部に入部するが、ここでも何かしでかすことになる。(2002.03.15)
次回は〔第27回〕
「文化祭のマル秘事項」(少年時代の思い出 W)(2002.04.01)
【出来事】
- 3月3日 準大手ゼネコン 佐藤工業が会社更生法適用申請(負債総額4,499億円)
- 3月4日 徳島県知事 円藤寿穂氏を収賄容疑で逮捕(東京地検特捜部)
- 3月6日 衆院本会議で2002年度予算案可決
- 3月11日 衆院予算委員会 鈴木宗男衆議院議員を証人喚問
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