◇ これまでの云 い た い 放 題 ………◇ これまでの云 い た い 放 題 ………◇ これまでの云 い た い 放 題 ………
【2002/06/15】



◇第32回◇
政府、自民党の“規制緩和”の実態

 小泉さんは総理就任に当り、「聖域なき構造改革」「規制緩和」などの公約を掲げ、国民の大きな支持を得た。
政府、自民党の言う「規制緩和」の中身はどんなものか。
郵便事業への民間参入問題と医療保険制度改革の中で示されたレセプトの直接審査を健保組合等に認める問題について考えてみた。

 来年度からの郵政事業公社化のための郵政公社関連法案は、今国会の重要法案の一つとして審議中であるが、与野党というより与党内部で綱引きが行われている。
 特に、郵便事業への民間業者参入のための法案については、自民党郵政族議員は徹底抗戦の構えだ。
郵政族議員の反対の理由は
民間業者では、僻地では同じような集配サービスはできないとか 親書の秘密が保たれない等々と言っている。
しかも郵政族議員はダイレクトメールも信書扱いにすべきだと主張しているが、ダイレクトメールがどうして信書になるのだろうか、全く理解に苦しむ。
 族議員たちの反対の真意は、郵政公社の郵便事業は 民間業者のサービスには太刀打ちできず、国の郵便事業がダメージを受けると言うのが本音だと思う。
かって、「クロネコヤマト」や「ペリカン便」によって、郵便小包は大きな打撃を受けたが、その二の舞は踏みたくないということだろう。
 その背景には、全国の特定郵便局の組織を基盤とする選挙の時の集票力を 守ることにあるのは間違いない。
野党も郵政事業の構造改革や規制緩和にはあまり積極的ではない。自民党と同じ事情がある、即ち、全逓や全郵政などの労働組合が大きな票田になっているからだ。(これら郵政関係の労働組合は、郵政公社関連法案に反対を表明している)

 一方郵便事業参入の最右翼と目されている「クロネコヤマト」は、政府案についてさえ、これでは規制があまりにも厳しく、郵便事業への参入は断念せざるを得ないと述べている。
 政府原案の条件の概要は
  • 事業計画の策定や変更に総務省の許可が必要
  • 全国に10万個所以上のポストの設置
  • 郵便料金(全国一律80円にすること)や配達日数の規制
  • 親書の秘密保持
  • 等々が条件となっている。
 これでは、今の郵便局のやり方をそのまま踏襲させようとするもので、民間の活力や智恵、独創性を引き出すという考えは微塵も感じられない。

 事業計画の策定や変更をする場合に、公社の郵便事業を握っている総務省の許可を必要とするということは、事業を行うに当り、競争相手の社長の許可を必要とするようなもので、これでは公正な競争は到底出来ない。
集配方法や料金などは、全て民間企業に任せ、民間の創意工夫を引き出すようにすべきだ。

 小泉総理は、民間でできることは民間に任せるべきだと言っていたではないか。
例えば、僻地の集配が民間業者ではできないならば、そこは民間に任せられないところだから、国の郵便事業でやればよい。
それでは、国の郵便事業は、ますます民間企業に太刀打ちできなくなると郵政族は言うだろう。それでもいいではないか。
僻地の郵便事業は採算が合わなければ、そこには多少の税金を使っても国民は文句を言うまい。

 民間郵便事業に対する規制は、最低限に絞り、あとはユーザー (国民) の選択に委ねるべきだ。
親書の秘密が守られない業者は、国民からそっぽを向かれるだろうし、 料金が高かったり、配達が遅かったり不便な郵便は、国民は利用しないだろう。また、多少料金が高くても、配達が早かったり、指定時間に配達する等サービスが良ければ、そちらを選ぶ人も居るかもしれない。
いずれにしても、民間では ユーザーに受け入れられない企業は存続し得ないのだから…。

 5月29日東京のバイク便大手の「ソクハイ」が、来年4月から首都圏で特定サービス分野で郵便事業に参入する方針を明らかにした。
信書便法案の特定サービス分野の条件は、@3時間以内の配達 A1個1,000円以上の料金 B長さ、幅、厚さの合計90pを超えるか、4sを超えるもの @〜Bのいずれかを満たせば良いということになっている。
 「ソクハイ」は、現在バイク等で首都圏企業間の急ぎの書類等の配送業務を行っており、3時間以内の配達は今のままで できるのだから、同社が信書便の特定サービス分野に参入するといっても、特に目新しいことではない。
 信書便の特定サービス分野参入に、この三つの条件をつけておけは、今の郵便事業とは全く競合しない、即ち、郵便事業には影響がないわけである。
 これだけ見ても、口では規制緩和をして郵便事業への民間参入への道を開くと言いながら、本当は郵便局を競争に晒さないで、守っていこうと言う意図がはっきりしている。



 このように郵便事業への民間参入問題一つ見ても、政府、自民党が言う規制緩和の実態がどんなものかがよく分かる。
そこには民間活力の活用とか国民生活の利便性など、国民の側に立ったものではなく、旧態以前たる枠の中でしか考えない古い体質であるばかりか、族議員と官僚や業界との癒着 ( この場合は、郵政族議員と旧郵政省、郵便局 ) による既得権益の確保、自己保全のための集票力確保に汲々としている姿は実に情けない。
 郵政3事業は、来年度に公社化されることになっているが、その後は、小泉さんの公約通り、早く完全民営化してもらいたいと思うのだが、この調子ではおぼつかない。

 今回の医療保険制度改革の中で、レセプト(診療報酬明細書)の審査を健康保険組合が直接できるように、規制が緩和され、これで 不正水増し請求や過誤請求が減少すると期待されていた。
 ところが、厚生労働省は、この直接審査について、厳しい条件をつけており、これでは健康保険組合が直接レセプトの審査をすることはできないと言われている。
 その条件の概略は次の通り。 【 】内はそれに対する私見。
  1. トラブル処理は当事者間で行うこと
    【健康保険組合が直接レセプトを審査して、不正請求や過誤請求を発見した場合は、診療側に是正を求めることになるのだが、そこでトラブルが発生することは、十分予想される。
     健康保険組合がレセプトを点検、審査して水増し請求や不正請求が発見され、トラブルが発生した場合、国の公的機関 (厚生労働省) が乗り出すのは当たり前ではないか。
    これではまるで厚生労働省が「健康保険組合が直接レセプト審査をやりたければ、やってみなさい。当局は一切関知しませんので、トラブルが起きても知りませんよ」と言っているもので、健保組合等の直接審査を阻止しようとする意図があまりにも露骨だ。】
  2. 全てのレセプトを審査対象にすること
    【健康保険組合が直接レセプトを審査する際、膨大なレセプトの中から、例えば10万円以上とか30万円以上の高額請求レセプトを抽出して審査してもよいはずだし、これまでの実績から不正請求や過誤請求が多い傾向の診療機関のレセプトを重点的に審査しても良いはずだ。
    それでも今の社会保険診療報酬支払基金によるいい加減な審査よりは、はるかに実効が上がるはずだ。】
  3. 個人情報の守秘義務の服務規程を設けること
    【個人情報の守秘義務は、すでに現行健康保険法にも規定されており、健康保険組合等の職員は、これを忠実に守っているはずで、今回これを条件にする意味はない。】

 このような厳しい条件をつけた厚生労働省の意図はどこにあるのだろうか。
名目だけ規制緩和をしたが、実質的には支払側 (健康保険組合等)が直接レセプトを審査するのを阻止しようという意図がありありと見える。
 それは厚生労働省傘下の特殊法人「社会保険診療報酬支払基金」を 守り抜くためであることは間違いない。
 「社会保険診療報酬支払基金」は、全国都道府県に存在し、厚生官僚の有力な天下り先になっているし、全国組織になっているため厚生族議員の大きな票田になっている。(社会保険診療報酬支払基金の職員は強力な労働組合を組織しており、このため野党側にも自民党と同じ事情があり、この規制緩和には、野党も積極的でない)
 この特殊法人は、レセプト審査を独占しているが、健康保険組合等から、多額の審査手数料を取っているのに、審査の実効はあまり上がっていない。
 そこには、「社会保険診療報酬支払基金」による杜撰な審査により、利益を得ている診療側 (医師会) と厚生労働省、厚生族議員との癒着の構造がはっきり見える。
 将来は「社会保険診療報酬支払基金」も民営化すべきであり、またレセプト審査に民間参入を認めることにすれば、低コストで有効な審査が可能になると思うし、それだけ国民負担も軽くなる。
 尚、「社会保険診療報酬支払基金」については、本ホームページ〔第23回〕医療保険制度改革について(その2) 参照

 無駄な医療費を少しでも削減し、将来に亘って医療保険制度を維持するための方策が 強く求められているのに、ここでも政、官、業 (医師会) 癒着の構造が優先している。
 政府も自民党も「規制緩和」を盛んに強調しているが、いざ蓋をあけてみれば その実態は、この通り
これでは、小泉政権や自民党の支持率が下がるのも当然だ。(2002.06.15)

 次回は〔第33回〕「サッカーワールドカップ日韓大会閉幕」(2002.07.01)

 【出来事】
  • 6月4日 ワールドカップサッカー 日本 ベルギーと対戦 1対1で引き分ける
  • 6月9日 ワールドカップサッカー 日本 ロシアと対戦 1対0で日本初勝利
  • 6月11日 気象庁 東北地方まで全域(除く 北海道)の梅雨入りを発表(九州 山口地方は10日)
  • 6月13日 在北京の韓国大使館領事部に亡命目的の北朝鮮住民2人(56才の父親と15才の子供)が駆け込んだが 父親は中国側に連行される これを阻止しようとした大使館側と中国側がもみ合いとなり 大使館側と記者等数人が負傷 韓国はウィーン条約違反と中国側に強く抗議
  • 6月14日 衆院厚生労働委員会 健康保険法改正案等医療制度改革関連法案を与党3党で強行採決 賛成多数で可決
  • 6月14日 ワールドカップサッカー 日本 チュニジアと対戦 2対0で日本勝利 H組1位で決勝トーナメント出場へ(ベスト16入り)