◇第35回◇
外形標準課税
今年3月、東京地裁は、東京都が導入した大手銀行に対する外形標準課税は地方税法違反とし、都側の敗訴判決を下した。納付済みの税金725億円の返還、18億円の賠償金の支払を命じた。
資金量5兆円以上の大手銀行18行のみを課税対象にするのは、税の公平、中立の原則に反するし、予想された妥当な判決だったと思う。
東京都は直ちに控訴したし、銀行側は判決が確定するまでは税金を払い続ける意向のようだ。
判決確定までどれくらいの年数がかかるか分からないが、都は、もし敗訴が確定すれば、納付済み税金の返還のみでなく、膨大な法定利息や賠償金を支払わねばならなくなる。全ては都民の負担になり、石原知事の最大の失政の一つになるだろう
一方、銀行側は、税金を払い続けた方が得だ。敗けて元々、勝訴すれば、労せずして大儲けができる。
法定利息はかなり高い。この低金利の時代に、これほど高利回りの資金運用先は他にないからだ。
大阪府も東京都と同種の外形標準課税を決めていたが、急遽 これを凍結することにしたのは、賢明な対応だったと思う。
政府も法人事業税の中に、全企業を対象にした外形標準課税の導入を検討中だ。(政府税調)
これは広く薄く全企業に課税する、その分 法人所得税の実行税率を軽くすると言っている。
利益を上げている企業には 減税になるが、赤字企業やあまり利益を上げていない企業には 増税になるというわけだ。
これに対し、特に中小企業は、この不況の中で四苦八苦しているのに、新たな課税ではやっていけないと猛反対をしており、日本商工会議所をはじめ 経営側は 概ね反対している。
全国知事会等は安定した財源が得られるとして賛成だ。
税金には、公平性、中立性、普遍性など いろいろ言われるが、要は国民が理解する理に叶った課税であるべきだ。
財政が悪くなったからと言って、安易に増税したり、取り易いところから取る、すぐ新しい課税源を探して課税するというような手法は採るべきではない。これでは国民の理解は得られない。
東京都の大手銀行を狙い撃ちした外形標準課税などは、著しく公平性、中立性を欠き、取り易いところから取るという安易なやり方で税の在るべき姿から逸脱しており、非難されても仕方がないだろう。
今話題の外形標準課税について、総務省は、企業に活力を与え、景気回復に寄与するためとか、赤字黒字を問わず全ての企業は、地域で道路や下水道を使ったり、ごみ収集など色々な面で恩恵にあずかっているのだから、応益負担として税金を払うのは当然だ等と説明している。
本当にそうだろうか。それは行政側の論理で、企業側から見れば必ずしもそうはならない。
法人事業税を支払わない企業といえど、そこに存在するだけで地域には大きな貢献をしている。
固定資産税等は払っているし、雇用されている従業員は所得税や住民税を払っている。本人や家族はその地域で買い物をしている。
工場が撤退する時、その地域は 必ず反対運動を展開するし、閉山した炭鉱地域のほとんどが衰退してしまった例を引くまでもない。
不況のため、今 多くの企業が赤字となり、法人事業税収入が激減してきた。それなら赤字企業にも課税しようというわけだが、あまりにも短絡的だ。
ついこの間まで、多くの地方公共団体では、地域活性化を図るため工業団地を造成し、盛んに企業誘致運動を展開していた。
いろいろ便宜を図るから…とか、中には税金をまけてやるから是非我が町に と言って誘致活動をしたところもある。
ところが不況が深刻化して、企業誘致どころか今ある企業も赤字で税金を払わないとなると、今度は
手の平を返したように、赤字企業からも外形標準課税で税金を取りたてると言うのだから、まことに場当たり的で一貫性がない。
総務省が色々理屈を言ってみても、本当の狙いは、税収の安定確保ただ一点にあることは間違いない。
今、深刻な不況のなかで、多くの企業は生き残りをかけて ぎりぎりの努力をしている。コスト削減、合理化、リストラ…etc。
それに比べると、お役所は、国、地方を問わず まだまだ親方日の丸だ。
不況で税収が減り、財政が厳しくなると、安易に税収確保に目をつける。これでは不況に喘いでいる企業は、たまったものではない。
国、地方公共団体の財政の重要性もよく分かる。国、地方の膨大な借金が、国民の将来の大きな不安材料になっていることも確かだ。
しかし、国や地方は、その前にやるべきことを、まだまだやっていない。
国は行政改革の一環として省庁再編などを行ったが、公務員の数は一向に減らないし、形だけで 実態は全く変わっていないではないか。
まず国、地方の政治家が模範を示し、議員の歳費削減や定数削減を実行する等 自らも国民の痛みを分かち合ってこそ、真の行政改革ができるのではないか。
自分の身の保全ばかりを考え、不祥事ばかり起こしている政治家のもとでは、お役所の行政改革などできる筈がない。
国、地方の財政について国民の理解を求めるなら、その前に国や地方自治体の努力の姿を見せることが先だ。(2002.08.01)
次回は〔第36回〕
「お 盆」(2002.08.15)
【出来事】
- 7月16日 台風7号 関東地方の伊豆半島 房総半島南部を通過 洪水等被害もたらす
- 7月20日 四国 近畿 東海 関東甲信地方の梅雨明け宣言(九州 中国地方は21日)
- 7月21日 大相撲名古屋場所千秋楽 大関千代大海14勝1敗で優勝
- 7月24日 関脇朝青竜(高砂部屋) 大関に昇進
- 7月31日 第154通常国会(延長国会)閉会
|