◇第36回◇
お 盆
8月15日と言えば、日本人にとってはお盆だ。
元々、7月15日がお盆なのだが、太陽暦を採用した明治6年からは、地方によって、新暦に合わせた7月の場合と従来の季節に合わせた1月遅れの8月に分かれ、一般的には東京など都会では7月に、地方では8月に、あるいは西日本では旧盆が多い等と言われている。
しかし、やはり昔からの旧暦に則った8月の方が馴染みがあるように思う。
「盆正月」とか「盆と正月が一緒に来たようだ」という言葉があるように、お盆は、正月とともに日本の昔からの国民的二大行事とも言える。
お盆の期間は13日〜16日とされ、先祖の霊魂が帰ってくるので お供え物をして、先祖を供養するというものだ。
13日を迎え盆と言い 迎え火を焚いて先祖の霊を迎え入れ、16日は送り盆と言い 送り火を焚いて送り出す習慣がある。有名なものとしては、京都の大文字山の送り火がある。また、精霊流しなども一般的である。
お盆の起源は相当昔に遡るようだ。
お盆は、仏教行事「盂蘭盆会(うらぼんえ)」に由来する。
釈迦の弟子目蓮が、他人を邪険にした罪で 飢餓道に落ちて地獄の苦しみを味わっている母親を救うために、釈迦に教えを乞い、その教えに従って 僧侶達に食べ物を施して母を救ったという故事が起源と言われている。
「盂蘭盆会」のことは、日本書紀にも記されており、その起源は7世紀初頭の推古天皇時代(606年)と言われ、室町時代以降庶民にも定着していったというから相当古い。
昔(戦前)、特に地方では、地域に根ざした風習もいろいろあったようだ。
私は 少年時代外地 (北朝鮮) で育ったが、そこではお盆といっても特別のことはしなかったと記憶している。
当時のお盆の思い出は、夏休みに母に連れられて九州の実家に帰省した時の記憶ぐらいだ。
8月10日頃になると、物置から提灯を取り出し、箱から出して組み立てるのだが、それがとても珍しくて楽しかった。
仏壇の前に置かれた5〜6対の提灯に火が灯ると、これが また実に見事できれいなのである。
15日には、親戚の者たちが集まってくる、祖母たちが作ったご馳走でもてなす。
満腹した一同は、暑い最中で しばらく一服休憩だ。
午後4時頃になると暑さも和らぐので、揃って墓参りということになる。
お盆になると、暑い中で蝉の声とともに「めーらんかい…」と言う子供達の声が 遠くから聞こえてくる。
お盆が近づくと子供達は、村の地蔵さんの横に 竹や丸太と布で盆棚という休憩所らしきものをつくる。
お盆の期間中子供達は そこに詰めて、通行人達に向かって「めーらんかい(参らんかい)」「めーらんかい、○○の地蔵さんにめーらんかい」と声を合わせて叫ぶのである。
田舎のことだから、通行人といっても顔見知りの人が多く、何がしかのお賽銭をやってお参りしてやる、子供達はそのお返しに、飴や駄菓子をくれるという具合である。
私も駄菓子欲しさに、親から小銭をもらって行ったものだ。
このような風習は、もうとっくの昔になくなってしまい、今では見られない。
北海道で数年暮らしたことがあるが、遠くから聞こえてくる盆踊りの唄は、何となくうら悲しく聞こえる。北海道では8月15日になるともう秋だ。
短い夏が終わり、長い冬が もうそこまで忍び寄っているような気になるからだろう。
お盆前は、お中元のシーズンということになっているが、お中元とお盆とは どんな関係があるのだろうか。
お盆は、暮とともに1年の一つの区切りとも考えられてきた。1年の前半の終わりが盆、後半の終わりが暮というわけだ。丁度今の会計年度の上期、下期のように。
この半年間無事に過ごせたと感謝の念を持って、親戚やお世話になった人の家を訪れ 贈り物をするという慣習は、「盆礼」と言って、すでに江戸時代初期の頃から庶民に定着していたそうだ。(贈り物としては、素麺、麦粉などの食物などが多かった)
お中元という言葉は道教の三元節からきたものと言われている。
竜王の孫のえらい3兄弟の誕生日が、夫々1月15日(上元)、7月15日(中元)、10月15日(下元)で、7月15日の「盂蘭盆会」(お盆)と中元が重なるため、「盆礼」が「お中元」になったというわけだ。
最近では、昔ながらのお盆の風習もすっかり変ってしまった。いや、ほとんどなくなってしまったと言った方がいいだろう。
今はお盆と言えば、盆休を故郷で過ごすための帰省ラッシュで、新幹線も飛行機も満員になり、道路は渋滞し、都会から地方への まさに民族の大移動、そんな形で我々の生活に結びついている。
今の若者達の間では、盆休 (夏休) をどう有効に使うか、レジャーや旅行にどう使うかということの方が関心事だろうが、それもよかろう。
また、お盆の時ぐらい、昔のお盆の風習や意義について考えてみるのも悪くはない。(2002.08.15)
次回は〔第37回〕
「首都機能移転問題」(2002.09.01)
【出来事】
- 8月5日 住基ネット(住民基本台帳ネットワークシステム)運用開始
- 8月8日 第84回全国高校野球甲子園大会開幕
- 8月9日 田中真紀子衆院議員 綿貫衆院議長に議員辞職願を提出 辞職
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