◇ これまでの云 い た い 放 題 ………◇ これまでの云 い た い 放 題 ………◇ これまでの云 い た い 放 題 ………
【2002/09/01】



◇第37回◇
首都機能移転問題

 首都機能移転問題については、すでに昭和30年代頃から学会や研究機関等で とり上げられていたそうだが、我が国の高度経済成長に伴い 東京一極集中が進み、脚光を浴びてくるようになった。
  国会開設100年を迎えた平成 2年、衆参両院で「国会等移転に関する決議」が行われ、平成4年12月に「国会等移転に関する法律」が議員立法により成立した。
これに伴い「国会等移転調査会」が発足し、これが平成8年には法改正により、移転先候補地選定等を任務とする「国会等移転審議会」となり今日に至っている。

 首都機能移転は、首都移転とは異なる。
皇居を移転するものではないし、東京のこれまでの経済や文化の中心的機能を移転するものではないからだそうだ。
 国会(衆議院や参議院等)、行政の中枢機能(各中央省庁等)、司法の中枢機能(最高裁判所等)等を、少なくとも今の東京より60キロ以上離れた地域に移すもので、現在の東京が有している首都機能の一部を移転するものだと説明されている。

 首都機能移転の必要性については、東京の一極集中が過度にすすみ、弊害が出ている等 色々考えられるが、国土交通省はその意義と効果について次のように説明している。
  • 国政全般の改革の促進
    国会等の移転は、国政全般を見直す重要な転機となる。
    国会等の移転と諸改革を「車の両輪」として推進することにより 改革を加速、定着させ、行政組織の効率化や地方分権にも寄与する…etc。
  • 東京一極集中の是正
    東京の過密状況は、通勤混雑、交通渋滞だけをみても、既に許容限界に達している。
    国政の全般的改革により、東京を頂点とする序列意識が変化し、地方の自立性も高まる…etc。
  • 災害対応力の強化
    もし、一極集中している東京が大地震にでも襲われたら、日本の中枢機能は全て停止し、深刻な危機を招来する。
    安全性の高い地域への国会等の移転により、政治、行政、経済、文化等の中枢が同時に被災することを防ぐことができる…etc。

 移転先については「国会等移転審議会」で審議されてきたが、まだ固まっていない。
候補地としては、北東地域、東海地域、三重・畿央地域が挙がっていたが、その中で北東地域の「栃木・福島」及び東海地域の「岐阜・愛知地域」を有力候補地としている。

 首都機能移転を実行するとなると、これは莫大な費用を要する壮大な国家事業になると思われる。
この点について、国土交通省は次のように説明している。
 建設開始後10年程度で国会を中心に移転する第1段階 (人口10万人、面積1,800hr) で総額4兆円、うち公費負担2兆3,000億円程度。
その後は、更に数10年かけて段階的に整備し行政機関全てが移転する最終段階 (人口58万人、8,500hr) で総額12兆3,000億円、うち公費負担4兆4,000億円程度と試算している。
これらの費用は一挙に支出するものではなく、長期に亘って支出するもので、近年の我が国の年間行政投資額 約50兆円に比べても大した額ではなく、十分負担可能な額だと説明している。
 尚、今年5月に完成した新首相官邸との関係については、移転地に官邸が移るまでには10数年かかり、その間は新官邸が必要。
移転後は 今の官邸は、政府の東京に於ける拠点としての役割を果たすことになる。
移転先官邸が、大規模災害等で機能不全に陥った場合、今の官邸はバックアップ施設として機能させることができる等と説明している。

 尚、最近“議員会館”の建て替え問題が取り沙汰され、すでに国土交通省では検討に着手しているようだ。
これは首都機能移転問題と密接な関係があるのだが、この点について国土交通省は、まだ見解を明らかにしていない。共産党や社民党が、首都機能移転問題がはっきりしてから取り組むべきだと言っている程度だ。
 自分たちの問題だから、100億単位の費用がかかろうとも、国の予算全体からみれば微々たるものだ ということで、たいした議論もなく最終的には各党とも賛成して実現するだろう。
しかし、これは 不況の中でささやかな生活をしている庶民感覚とは、随分かけ離れたものだ。
( ちなみに現在の議員会館にも、議員やその家族が利用できるプール等の立派な施設が整えられているというが、一般の国民には、ほとんど知られていない。
先日からモスクワ大使館改築に際し、プールを作ることが批判されたが、この現実を見ると国会議員には これを批判する資格はないと思うのだが…)
 


   以上が首都機能移転に関する政府 (国土交通省) の説明の概略である。
国土交通省は、首都機能移転の意義と効果の中で、第一番目に「国政全般の改革が促進できる」ことを挙げているが、首都機能移転と国政の改革 (行政改革) とは関係がないはずだ。
国土交通省が国政の改革と首都機能移転を結びつけて説明する真意はどこにあるのだろうか。
  行政改革をはじめ諸改革は、今直ぐやるべき急務ではないか。
まさか国政の改革を、首都機能移転に合わせ、10年〜数10年かけてやろうということでもあるまい。
それとも、場所を移し、新しい建物を作って気分一新しないと改革は できないとでも言いたいのだろうか。
 改革の重要性や緊急性について、このような悠長な考え方が 政治や行政の中に少しでもあるとすれば、小泉さんの聖域なき構造改革などできる筈がない。

 移転費用について、総額12〜13兆円 (内公費負担4兆4.000億円) と低く見積もっているが、とてもそれでは収まるまい。ちなみに移転に反対している東京都は、20兆円強と試算しているが、これも正しいとは思われない。
 これまでの例から見ても国の試算が正しかったケースは ほとんどない。
これは道路公団の例をみればよく分かる。はじめから高速道路の建設が認められるように 甘い試算をしてきた結果、今では40兆円もの債務を抱え、どうにも身動きがとれない状況になっている。
今回の首都機能移転費用の試算も、道路公団的発想で極めて甘い見積もりによるものと言わざるを得ない。
 今の我が国の政治、行政は「場当たり主義」的傾向が強く、数年先を見通しての政策さへ できないのが実情であるのに、甘い見通しのもとに首都機能移転を進め、あとの責任は誰が取ると言うのだろう。

 10年以上かけて国会を移転し、行政機関全てが移転し 最終的に移転が完了するまで 更に数10年かかると言うが、国の政治、行政の中枢機関に、そんなに長期間の変則的な状態が許されるだろうか。
まず政治家や官僚たちが音を上げるのではないか。いや、それは次の世代の政治家や官僚達だ、では済まされない。

 我が国が置かれている現状を考えると、今首都機能移転を論じる時ではない。
確かに一極集中過密化により、交通渋滞や大気汚染をはじめ、市民生活にも さまざまな問題が生じている。
中でも、林立するコンクリートの高層ビル、冷暖房、自動車の排気ガス等々によるヒートアイランド現象は、これからの東京にとって大きな問題だ。
東京では、すでに年々気温が上昇するなど気象の変化が起きており、生態系にも異変が生じている。
だからと言って、国の機関だけが 新天地を求めて移動するというのは如何なものだろうか。
 都市機能が損なわれているのなら、機能回復の対策を講じるべきだ。交通渋滞や通勤混雑をどう解消するか、大気汚染対策をどうするかetc。
ヒートアイランド現象についても 研究や対策の検討が行われているようだ。
 東京は首都なのだから、東京都任せにせず、国と都が協力して首都整備を図るべきだ。(ちなみにアメリカの首都ワシントンは、連邦政府直轄地となっている)
 東京には 国の中枢機関が集中しているのだから、東京都は 国に対して相当の応益負担を求めてもおかしくはないし、国も首都機能の回復、整備、応益負担のための支出なら問題はないと思う。
大手銀行を狙いうちした外形標準課税より、こちらの方がはるかに筋は通っている。
首都機能移転に要する莫大な費用とエネルギーを考えれば、その何分の一かを東京に投下すれば、首都東京は蘇るのではないか。

 少子高齢化が進み、これからは人口が減少の一途をたどる中で、国は莫大な借金を抱え、今尚 毎年30兆円以上の国債を発行しなければやっていけないという現実を直視してもらいたい。
 首都機能移転等という 遠い将来の悠長なことを考える余裕はないはずだ。
我が国には、もっともっと重要な問題が山積している。
「国会等移転に関する法律」はこの際棚上げにし、移転に関する作業は中止すべきだ。
最近、与党首脳の間で首都機能移転問題は、その是非を再検討すべきだということになったようだが、好ましい方向だと思う。(2002.09.01)

 次回は〔第38回〕「首相公選制 (その1)」(2002.09.15)

 【出来事】
  • 8月18〜19日 日朝赤十字会談 ( 8月25〜26日対北朝鮮外務省局長級協議)
  • 8月21日 第84回全国高校野球甲子園大会決勝戦 明徳義塾(高知代表)が知弁和歌山(和歌山代表)を破り優勝
  • 8月26日 郵政公社初代総裁に生田正治氏(商船三井会長)の就任が内定
  • 8月30日 日朝首脳会談のため 小泉首相の9月17日の日帰り訪朝日程公表