◇第43回◇
不祥事と責任 (その2)
約3兆8,000億円もの借金を抱え 事実上破綻状態にある本州四国連絡橋公団では、橋の通行料だけでは、借入金の返済どころか金利さえも賄えない状態だという。
この借金は、いずれ国民の負担となって跳ね返ってくる ( 税金で負担するか、他の高速道路の通行料から支出するか、いずれにしても国民負担になることは間違いない )
一体誰が、採算性を度外視して本州 四国間に3本もの橋を架けたのか。
責任の所在は全く曖昧のまま、その 後始末だけが道路関係四公団民営化推進委員会等で議論されている。
政治や行政の失政の例は挙げるとキリがないが、いずれも責任の所在は曖昧のままである。
十分な事後検証と責任の所在を明確にしないと 今後も同じ過ちが繰り返される。
不祥事というより、国の重大な失政と責任について、オウム真理教と狂牛病のケースについて考えてみた。
オウム真理教については、既に平成元年前後から各地で不可解な行動が目立ち、地域住民とのトラブルや入信した子供と親の隔絶など大きな社会問題になっていた。
その後、違法行為は次第にエスカレートし、数々の殺人を含む多くの事件を起こしている。
平成元年11月の坂本弁護士一家殺人事件、平成6年6月の松本サリン事件、同年12月の大阪でのVXガス殺人事件等々である。
この間、上九一色村ではサリン等毒ガス製造化学プラントを建設し(平成6年7月)、遂に平成7年3月の地下鉄サリン事件に至るのである。
オウム真理教の不可思議な行動や違法行為が始まってから 地下鉄サリン事件に至るまでの約7年間、警察庁や公安調査庁は 一体何をしていたのかと言いたい。どんな調査をし、どんな情報を得ていたのだろうか。
坂本弁護士一家殺人事ついては、当局は最初からオウム真理教に目をつけていなかったし、松本サリン事件にいたっては、被害者を犯人として誤認逮捕するという常識では考えられない失態を演じている。
一般の人々でさえ、相当前からオウム真理教は おかしいと思っていたのに、当局は“信教の自由”を侵害するとの批判を恐れて情報収集を行わず、対策を怠ってしまった。即ち、オウム真理教に目を瞑ってしまったのである。
オウム真理教について十分な情報収集をしていたならば、事件の大半は未然に防止されたはず、少なくとも前代未聞の大惨事 地下鉄サリン事件は絶対に起こらなかったであろう。
まさに官僚機構の事なかれ主義、責任回避主義がもたらした悲劇と言えよう。
警察庁や公安調査庁の幹部の責任は極めて重いと思うのだが、この点についての検証や責任問題は全く議論されないし、マスコミも取り上げない。これでは国民の不安は解消されない。
更にオウム真理教が摘発された後も、この危険極まりない集団に対する破防法適用については社民党、共産党など左翼政党や進歩的文化人と称する連中が猛反対し、結局適用されなかった。一体この国はどうなっているのだろう。
BSE (狂牛病) 問題について考えてみたい。
イギリスでは1986年以降 狂牛病の発生が問題になり、1992年にはその発生がピークに達し ( 37,000頭の狂牛病を確認 )、ヨーロッパで大問題になった。
EUが 日本にも狂牛病上陸の可能性ありと指摘していたのに、農水省はこれを無視し、肉骨粉の輸入禁止など必要な措置を怠った。
我が国における狂牛病の発生は、国民に食生活の不安をもたらし、酪農家や食肉業界が蒙った損害は計り知れないものだった。
我が国に狂牛病をもたらした行政の不適切な対応に関して、野党は国会で武部農水大臣の罷免を求めたが、農水大臣は対策に万全を期すことが、責任をまっとうすることだ等と居直って責任を認めなかった。
狂牛病の発生に慌てた農水省は、国民の不安を解消するため、国産牛の政府買い上げ措置を行った。
農水省が狂牛病の発生を阻止できなかったため、ここでも無駄な税金が使われることになった。
しかも この買い上げ措置を業界丸投げで行ない、その結果、雪印食品、日本ハム等の偽装事件が発生した。
なぜ農水省が自ら買い上げを行わなかったのかという追及に対して、武部農水相は、緊急を要するため やむを得なかったと述べるだけで 些かの反省もない。
武部農水相の態度を見ていると、例えば当初の日本ハムの役員らの社内処分に対し、これでは国民は納得しない、営業自粛の解除は当分認めないと胸をはって言っていたが、これでは まるで民間会社の生殺与奪の実権は自分が握っていると言わんばかりである。
狂牛病発生を阻止できなかった自らの責任は棚に上げて「これでは国民は納得しない」とは よくも言えたものだ。国民が納得しないのは農水省の責任回避の姿勢だ。
日本ハムの責任の取り方に国民が納得しなければ、日本ハムは消費者にそっぽを向かれ、市場から退場させられてしまう。国民の納得云々は大臣が言う言葉ではないし、営業自粛は、文字通り 自ら行うもので営業自粛の解除は認めない等と言うのは、少し思い上がった発言ではないか。
農水省は、雪印食品や日本ハムなど民間企業を唯一最大の悪者に仕立てあげることにより、自分たちの責任を ぼかし回避しようとしているとしか思われない。
政治家や官僚は、その立場を考えると民間人より はるかに責任は重いはずだ。
政治や行政の失政や不祥事については、なぜそうなったのか、どうして事件は起こったのか等を絶えず検証し、常に責任の所在は明確にされなければならない。
政治家や官僚たちの無責任体制は、我が国をとんでもない方向に導いていく。
今、政治家や官僚たちの無責任が国民の不信を買っている。早く信頼を回復して欲しいものだ。(2002.12.01)
次回は〔第44回〕
「2002年を顧みて」(2002.12.15)
【出来事】
- 11月15日 中国共産党総書記に胡錦濤氏が就任
- 11月18日 国連大量破壊兵器査察団の先遣隊がイラクのバクダットに到着
- 11月21日 高円宮さま ご逝去
- 11月24日 大相撲九州場所千秋楽 大関朝青龍優勝(14勝1敗 13日目に決める)
- 11月27日 国連大量破壊兵器査察団 イラクに対する査察開始
- 11月29日 民主党鳩山代表 自らの出処進退や野党結集問題について記者会見
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