◇第49回◇
イラク問題 北朝鮮問題
イラクと北朝鮮、いずれもアメリカから 悪の枢軸と呼ばれた国だ。
この二国には共通点が多い。
イラクは、1990年 国境を超えてクウェートに武力侵攻したし(湾岸戦争)、化学兵器も使った国だ。
北朝鮮は、1950年突如38度線を超えて韓国に侵攻し、朝鮮戦争を引き起こした。また事前通告もなく 1993年には 日本海に向けてミサイル発射実験をしたり、1998年には 日本列島に向けてテポドンの発射実験をして三陸沖の公海上に落下させるなど 危険極まりない行為を平然と行っている。
言わば両国とも前科がある危険な独裁専制国家であることで共通している。
イラクは、かってイラン、イラク戦争の時 マスタードガスを使用したり、自国のクルド人に対し 化学兵器を使った実績があるし、湾岸戦争終結時に イラクが所有しているとされる これら生物化学兵器を含む大量破壊兵器の破棄を 国際社会に約束した。
しかし、イラクは国連による大量破壊兵器査察に非協力であったため、国連は武力行使を圧力に 昨年11月から本格的な査察を行なっている。
イラクは、査察に一見協力的に見えるが、疑いを晴らすべく 積極的に協力しているとも思えず、今だに灰色である。
アメリカ、イギリスは、これ以上査察を継続しても意味がない、武力攻撃に踏み切るべきだと強く主張しているのに対し、フランス、ドイツ、ロシア、中国は 戦争は極力避けるべきで、更に査察を継続すべきだと主張し、両者は鋭く対立している。
確かに、これ以上査察を継続しても意味はないだろう。イラクは、広い国土の中に 見つからないように隠すことは容易にできるからだ。
しかし、これまでの査察では大量破壊兵器を所有しているという確たる証拠は見つからず、その可能性だけで武力行使⇒戦争に踏み切るのは如何なものか。
査察をいつまでも継続することにより イラクを国際監視下に置き、仮にイラクが大量破壊兵器を所有していたとしても、これを使用できないように封じ込めておけば、当面 平和は保たれる。
フランス、ドイツなどの主張もよく分かる。
さて、日本は、アメリカの武力攻撃を支持すべきなのだろうか、フランスのように反対すべきなのだろうか。
これは難しい問題だ。それは 今北朝鮮の脅威があることを併せ考えると 軽々しくは決められない。
北朝鮮は昨年秋 自ら米朝枠組み合意違反を認めて以来、IAEA(国際原子力機関)の核施設の監視体制を排除したのを皮切りに、NPT(核拡散防止条約)からも脱退し、核開発を進めているものと思われる。(今月27日には、凍結していた実験用原子炉の再稼動に踏み切っていたことが判明した)
遠距離弾道ミサイル等を含む大量破壊兵器の準備も進めているだろう。
このように、北朝鮮は 事態を一層深刻化させる一方だが、全てはアメリカの責任だと挑発している。
アメリカは、イラク問題を抱えているためか、北朝鮮の問題は 外交で解決すると言って、今のところ冷静を装っている。
2月12日 IAEAは北朝鮮核問題を 国連安保理に付託したが、当面制裁措置は行われないようだ。
イラクは、大量破壊兵器については 灰色とは言へ、国連の査察団も受け入れ 国際社会の監視下にあるのに対し、北朝鮮は、野放し状態で 勝手気ままに 益々危険な方向にエスカレートしつつある。
今やイラクより北朝鮮の方が はるかに危険な国だと思う。特に我が国にとってはその感が強い。
北朝鮮の核問題は、単なる脅しやジェスチャーではなく、朝鮮戦争がそうであったように、最終的には 核兵器の武力によって 朝鮮半島の統一を図ろうとしているのかもしれない。
北朝鮮が名実共に核保有国、大量破壊兵器保有国となってからでは 手遅れになってしまう。
北朝鮮核問題の国連安保理付託に際し、ロシアが北朝鮮を刺激するので反対だと主張したのは極めて遺憾だ。
まさかアメリカをミサイルで攻撃することはないだろうが、孤立化を深める北朝鮮は、事を起すために日本へ発射することは十分あり得る。我が国は 現実に起こり得る危機に対して 十分備えておく必要がある。
仮に我が国が、北朝鮮からミサイル (核弾頭もあり得る) 等で攻撃された場合、それを防ぎ 反撃する態勢や能力はあるだろうか。残念ながらノーである。
国連や国際社会が助けてくれるだろうか。これも又ノーだろう。それを待っていたのでは手遅れだ。
北朝鮮を刺激したくないロシアや中国のような国は、我が国が相当な被害を受けてから「まあまあ平和的に、話し合いで…」等と言いだすに違いない。
唯一頼りになるのは、日米安保条約を結んでいるアメリカしかない。
日本有事の場合、アメリカが どれだけ日本を守ってくれるか、その保証はない。しかし、それに頼るしかないのが、日本の置かれた現状だ。
今世界の関心事は イラク問題にどう対処すべきかということだ。
日本としての立場は どうあるべきなのだろうか。
我が国は、中東諸国とは良好な関係にあるし、石油も中東諸国に依存している。
中東で戦争が始まり、この地域が不安定になることは 我が国の国益にも反する。
この点から見れば、あくまで平和的に と言うフランスやドイツの主張に組すべきかもしれない。
しかし、日本が、武力行使を巡って アメリカと対立しているフランスやドイツ、ロシア等と一緒になってアメリカに反対する立場を表明したらどうなるだろう。
北朝鮮から攻撃を受けた場合、アメリカは真剣に日本を防衛してくれるだろうか。
そちらの戦争には協力しないでおきながら、こちらが危なくなったら戦争して守ってくれ では筋が通らない。
したがって、我が国が置かれた状況を考えると、アメリカの立場を否応なしに支持しなければならないのが現実なのである。
これでは我が国は、国際社会の中で主体性を持った行動はできないことになる。
憲法前文には「…国際社会において名誉ある地位を占めたいと思ふ。…」等と書かれているが、全く空々しくて日本がそんな立場になれるはずがない。
しかし、これは、自分の国をも自力で守れない、防衛面では アメリカの保護国である軍事小国 日本の宿命であることを認識する必要がある。(軍事大国になれと言うのではない。外国からの武力攻撃に対しては 自ら守れるだけの態勢は必要だということだ)
それにしても日本は暢気だ。現実に北朝鮮の危機があるというのに、今だに有事法制反対を叫び、防衛庁の省への昇格反対を主張する輩が居るし、国民にも一向に危機感はない。
北朝鮮については、アメリカの方が余程危機感を持っている。アメリカでは、北朝鮮は アメリカ本国をも攻撃可能なミサイルを持っているのではないかと 真剣な議論が行われているし、有事に備えて極東方面への警戒態勢も進めている。
どちらが正いいのだろうか。(2003.03.01)
次回は〔第50回〕
「我慢と忍耐の教育」(2003.03.15)
【出来事】
- 2月18日 韓国大邱市で放火による地下鉄車両火災 死者推定200人以上重軽傷者多数の大惨事となる
- 2月18日 北京の日本人学校に日本への亡命を求めて北朝鮮人4人が駆け込む
- 2月22日 中国瀋陽の日本総領事館に 北朝鮮から脱出した日本人妻とその娘が保護を求める
- 2月22日 来日中のパウエル米国務長官と小泉首相 川口外務大臣が夫々イラク問題 北朝鮮問題について会談
- 2月24日 日銀次期総裁に福井俊彦氏(元日銀副総裁 富士通総研理事長67才)が内定(3月20日任命予定)
- 2月24日 北朝鮮 地対艦ミサイルを日本海に向けて発射実験
- 2月24日(現地時間)米英両国がスペインとともに国連安保理にイラクへの武力行使を容認する新決議案を共同提出
- 2月25日 韓国 盧武鉉新大統領就任式(小泉首相出席 日韓首脳会談)
- 2月27日 北朝鮮 実験用原子炉(黒鉛減速炉5,000KW)を再稼働させたことが判明
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