◇ これまでの云 い た い 放 題 ………◇ これまでの云 い た い 放 題 ………◇ これまでの云 い た い 放 題 ………
【2003/05/01】



◇第53回◇
アメリカのイラク戦争

 去る3月20日から始まった米英による対イラク戦争は、僅か3週間余りでイラク全土が制圧され、終焉した。米英から見れば概ね予想通りの展開だったと思う。
 米英軍によるイラク攻撃に関しては、フランス、ドイツ、ロシアや中国などが、もっと査察を続けるべきで、国連決議なきイラク攻撃は 正当性を欠くとして反対し、世界の世論を二分した。
元共産圏の東欧諸国の多くが、アメリカの強行姿勢を支持したことも見逃せない。
戦争が早期に終結したためか、米英によるイラク攻撃の是非論は、あまり聞かれなくなり、イラクの戦後の復興や暫定統治の主導権争いに関心が集まってきた。

 イラク問題は、1991年の湾岸戦争の停戦に関わる安保理決議など国際社会との取り決めを、イラクが遵守してこなかったことにある。
即ち、イラクは、生物化学兵器、核兵器や弾道ミサイルなど大量破壊兵器の廃棄、そのための国連大量破壊兵器廃棄特別委員会(UNSCOM)や国際原子力機関(IAEA)の査察に協力せず、遂には査察を不可能にしてしまった。
 このため、国連は昨年11月、改めてイラクに大量破壊兵器の廃棄を求め、査察に関する国連安保理決議1441を採択し、同月下旬より国連による査察が始まった。
アメリカは、これまでのイラク側の態度に鑑み、クウェートやペルシャ湾に20万人にも及ぶ兵力や空母等を派遣し、イラクに軍事圧力をかけた。
イラクは、安保理決議1441を受け入れ、査察に一見協力的な姿勢を見せたが、開示を小出しにするなど、国連が求めている無条件、無制限の査察受け入れや国連決議の全面的 即時遵守には程遠かった。
 イラクが曲がりなりにも、査察受け入れの態度を示したのは、アメリカの強力な軍事圧力があったからだ。

 フランス、ドイツ、ロシア、中国などは、査察を更に数ヶ月続けるべきで、今 武力攻撃を行うべきではないと主張し、イラク戦争に反対してきた。
 査察を続ければ、成果はあっただろうか。
強力な軍事力によってイラクに圧力をかけ続けて査察を行えば、成果はあるかもしれない。
しかし、アメリカは 膨大な兵力をいつまでも中東に留め置くことはできなかっただろう。
アメリカが撤退してしまえば、これまでのフセイン政権のやり方から見て、イラクは査察への協力どころか 国連決議も全く無視してしまうだろう。
査察継続を主張する国々が、アメリカに替わって兵力を動員し、軍事的圧力をかけながら査察を続けると言うのなら まだしも、自らは何ら犠牲を払わず、ただ査察を続けよと言うだけでは無責任だと思う。国連の機能失墜につながるだけだ。
 あれから(湾岸戦争終結から) もう12年も経過しているのに、イラクは今だに国連決議を守ろうとしない、このままでは国連の権威や国際秩序は 維持できない、もはや限界だと考えた米英の武力攻撃は理解できる。

 イラク戦争に関しては、米英という大国が小国イラクを攻撃するというので、イラクに同情する向きもあるが、実は小国イラクのフセイン独裁政権こそが 世界平和にとって最も危険な存在だった。
世界の平和を乱す脅威は、小さい芽のうちに摘み取っておかねばならない。
それは国際社会、即ち国連の役割だ。今回のイラク問題で国連の権威は かなり失墜し、機能不全に陥った。その役割をアメリカ一国が担っているように思える。(勿論イギリスも)
 米英によるイラク攻撃は、昨年11月に採択された安保理決議1441があるのだから、新たな国連決議がなくても、国連憲章に違反する不当な攻撃だと断定することはできないと思う。
もし、アメリカがフランス等に同調し、イラクから手を引いてしまったら、フセイン独裁政権はそのまま存続し、イラクの脅威や危険は益々エスカレートしていくことになったに違いない。
 今回の米英によるイラク攻撃は、単に悪の枢軸フセイン政権を消滅させたに留まらず、サダム フセインより もっと危険な北朝鮮の金正日政権にも大きな影響を与えた。
イラク戦争開始後 北朝鮮は、これまでアメリカとしか話合わないと かたくなに主張していたのに、協議の形式にはこだわらないと言い出したり、韓国に南北閣僚級会談を提案するなど 態度を軟化させているように見える。(4月23〜25日には米 朝 中3ヶ国協議が北京で開催されたし、4月27〜29日には南北閣僚級会談が平壌で開催された)

 今、アメリカ一極支配についての危惧や批判も出はじめている。
確かにアメリカの一極支配は好ましいことではない。世界の警察官はアメリカではない、それは国連の重要な仕事だ。
世界の平和を脅かす危険な国に対して 国連は、今回米英がイラク政権に示したように毅然たる姿勢で臨み得る体制を確立すべきだ。
 そのためには、世界の国々 特に大国と言われる国は、自国の立場や利害にとらわれることなく、国際社会の役割を果たすべきである。そのことがアメリカの一極支配を打破し、国連の機能強化に繋がる。これはアメリカも望んでいることだろう。 

 我が国政府は、米英のイラク攻撃を支持した。
北朝鮮の脅威があり、我が国の安全保障の面からも、同盟国アメリカを支持せざるを得ないと言われるが、仮に我が国の安全問題を抜きにしても、アメリカの行動には合理的理由があり、支持したのは正しかったと思う。

 イラク戦争終結後の復興や統治が問題になっている。
イラクの復興には各国の支援体制が必要であり、これは国連中心で行われるべきだろう。我が国も、体力に見合った応分の支援を行うことは当然である。
イラク人による政権ができるまでの暫定統治をどうするかが、まず問題である。
戦争に反対した仏、独、露などは、 暫定統治はあくまで国連が行うべきで、アメリカが行うべきではないと主張していた。
形の上では、国連による統治になるとしても、実質的には、実際に血を流し多くの犠牲を払った米英主導になるのは止むを得ないだろう。
更に、イラク人による本格政権樹立も、対立する部族や派閥の存在を考えると、簡単にはいかない。
戦争終結は 第1段階が終わったに過ぎない。むしろ問題はこれからだ。(2003.05.01)

 次回は〔第54回〕「外務省は拉致問題を軽視するな」(2003.05.15)

 【出来事】
  • 4月16日 国連人権委員会 EU 日本 米国などが共同提案した北朝鮮の人権状況非難決議を賛成多数で採択
  • 4月18日(現地時間) 米国務省で北朝鮮核問題等について日、米、韓 局長級協議(北朝鮮が使用済み核燃料再処理が最終段階にある旨発表したため 米国は4月23日から北京で開催予定の米中朝協議について開催を再検討すると発言)
  • 4月19日 北朝鮮 韓国に南北閣僚級会談を4月27日〜29日平壌で開催することを提案(韓国政府応諾)
  • 4月23日 北朝鮮核問題等に関する米 朝 中3ヶ国協議 於北京(25日迄) 北朝鮮 すでに核兵器を保有していることを明言
  • 4月26日 小泉首相欧州5か国(イギリス スペイン フランス ドイツ ギリシャ)訪問に出発(各国と首脳会談)
  • 4月27日 韓国 北朝鮮 第10回南北閣僚級会談 於平壌(29日迄)