◇第54回◇
外務省は拉致問題を軽視するな
拉致問題については、現地に取り残された子供達家族の返還問題、死亡したとされる被害者の真相究明、損害賠償や責任追及問題等何一つ進展していない。
それにもかかわらず、北朝鮮は、拉致問題は昨年9月の小泉訪朝で解決済みだと突っぱねている。
これに対する日本政府の対応は、十分とは言えない。
相手が応じてこないのだから、当面打つ手がないでは済まされない。
政府や外務省の対応は、北朝鮮に遠慮しているのか、消極的ではないか と感じている国民も多いはずだ。国連の人権委員会に、形式的に提訴するようなことだけでは駄目だ。
今年3月初旬、拉致被害者家族代表横田滋さん達がワシントンを訪問し、米政府高官等に面会したり、マスコミや市民にも拉致問題を訴え理解を求めた。
その後も、4月にはロサンゼルスを訪れ、主に日系アメリカ人との対話集会等で 幅広く訴えて 理解を深めることができた。
アメリカ市民の反応は、「アメリカでは到底考えられない。自国民が外国に誘拐拉致されるようなことがあれば、アメリカ政府はあらゆる手段を使って救出するだろうし、厳しく対処するだろう」と日本政府の生ぬるい対応に首をかしげる人が多かったそうだ。
また4月22日、拉致被害者家族代表 横田早紀江さんや有本嘉代子さん達は、ジュネーブの国連人権委員会で意見陳述を行い、同時に海外にも 拉致問題を訴え 成果を挙げた。
これら一連の拉致被害者家族の行動を、外務省は どう受け止めているのだろうか。
外務省 当てにならずという被害者家族達の止むにやまれぬ気持での行動だということを 外務省は理解しているだろうか。
今、全国各地に「北朝鮮に拉致された日本人を救出する会」が数多く組織されている。これは、政府は 拉致問題について もっと積極的に毅然とした対応をしてもらいたいという 国民運動とみてよい。
最近(4月)、拉致問題に関して 外務省の不適当な対応が またまた明るみにでた。
拉致問題に関する国連人権委員会の要請に応じて外務省は回答書を提出したが、それは英文でわずか十数行で、「新しい有用な情報はなく、現時点では 追加的情報を提供することは困難」と、極めて素っ気ない、おざなりな内容だったというのだ。
国連人権委員会の要請に応えて説明することは、拉致事件を国際社会にアピールする絶好の機会であるはずだ。
外務省は、昨年11月に人権委員会に資料を提供しており、その後は新たな有用な情報はないと判断したため、などと弁解していたが、これこそ外務省の拉致問題に対する消極的な姿勢を露呈したものだ。
11月以降だって死亡したとされる被害者の遺骨として北朝鮮が提供した遺骨は、別人のものだったし、百数十項目に亘る北朝鮮に対する質問状のこと、拉致を指示した北朝鮮工作員を、警察庁が国際手配した等々。書くべきこと、訴えたいことは沢山あるはずだ。
この問題は、安倍官房副長官が 外務省に回答書の書き直しを命じて一応ケリがついた。
外務省の外交文書を 官邸から指摘され、書き直しを命じられるとは、外務省も地に落ちたものだ。
かって外務省幹部の中に「たった十人程度の拉致問題で、北朝鮮との国交正常化が止まっていいのか」と放言した官僚がいたが、今でもその体質が残っているように思えてならない。
政府や外務省には、中国や韓国がそうであるように、北朝鮮をあまり刺激すべきでないという考え方が 根強いように思われる。
去る4月23日〜25日の米、朝、中協議の中で、北朝鮮が核兵器を保有していることを明言しても、小泉首相は、日朝ピョンヤン宣言違反だとは言わない。これ程はっきりしているのに…。
多分小泉首相は、我が国が日朝ピョンヤン宣言違反だと決めつけてしまうと、北朝鮮を刺激し、相手とのパイプが切れてしまうことを懸念しているのだろうが、先方は 核兵器保有をはっきり明言しているのだから、もはや我が国の態度を曖昧にすべきではない。(日本政府としては、北朝鮮の核兵器保有をまだ確認していないと言うのなら、我が国独自で早急に相手国に確認すべきだろう)
イラク問題が一段落し、北朝鮮の核問題が 世界の大きな関心事になってきた。それは結構なことなのだが、拉致問題がその陰に隠れて取り残されてしまうのではないかという懸念がある。
4月23日から北京で開かれた核廃棄に関する米、中、朝協議の中で北朝鮮が示した提案の中には、日本の経済援助、北朝鮮の意図する手続きによる対日国交正常化を求めていることも 含まれているという。
勿論 こんな身勝手な提案を 我が国が受け入れるはずはなく、政府も受け入れられないと言っている。
しかし、将来、核問題協議が最終段階を迎えた時、拉致問題について 北朝鮮が、「一時帰国の約束を日本側が破ったのだから、一旦北朝鮮に帰した後に、本人達の自由意思に基づいて人道的に処理する。」と これまでの主張を 言いだす可能性が強い。
核廃棄協議の大詰めの段階で、最後に拉致問題だけが残った時、中国やロシア更には韓国までもが、核廃棄協議をまとめるために、北朝鮮の言い分について、わが国に譲歩を求めてくることも考えられる。
こんなことも想定して、万全の戦略を考えておくべきだ。
そのためには、拉致問題が非人道的 凶悪な国家犯罪であり、今なお続いている不当な主権侵害行為であることを、国際社会に強く訴え続けていくと共に、仮に将来 北朝鮮が核廃棄に応じても、拉致問題が解決しなければ、北朝鮮との正常化は勿論、経済支援等 (米など人道支援も含めて) は 一切行わないということを、国際社会に鮮明に示しておくべきだ。
拉致問題のために、核問題の解決が遅れることがあっても、それは致し方ないということを再確認しておく必要がある。
拉致問題は 相手が相手だけに大変難しい問題だが、我が国にとっては、これほど重要且つ深刻な問題はない。
それだけに政府、外務省には、しっかりした対応を国民は願っている。
それにしても、外務省の姿勢は頼りない。あれだけ厳しい批判を受けてきたのに、外務省の体質は 一向に変わっていないではないかと言いたい。
このままでは、外務省への国民の信頼は益々失われてしまう。外務省の奮起を促したい。(2003.05.15)
次回は〔第55回〕
「北朝鮮の核廃棄をめぐって」(2003.06.01)
【出来事】
- 5月1日(日本時間2日未明) ヨルダン・アンマンのクイーンアリア国際空港の出発ターミナルで毎日新聞写真部記者が保有する金属製物体の爆発事件発生 1人死亡3人負傷
- 5月11日 大相撲夏場所初日(両国国技館)
- 5月12〜13日(現地時間 日本時間13日) サウジアラビアの首都 リヤドの外国人居住地区3か所で連続爆弾テロ事件発生 死者29人(含 犯人9人)負傷者は邦人3人を含む190人以上の惨事となる 国際テロ組織アル・カーイダの犯行との見方が強い
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