◇第68回◇
2003年を顧みて
最近、地球温暖化が進み 地球規模的な異常気象が問題になっているが、今年もその例外ではなかった。
昨年は、ヨーロッパの一部を 何百年に一度という最悪の洪水が襲ったが、今夏は、ヨーロッパ大陸では 熱波と乾燥に見舞われ、フランスでは 猛暑による死者が1万人以上に達したと言われている。このため 小麦等の穀物生産も打撃を受けたそうだ。但し、葡萄は 暑さのため糖度が高く、今年のワインの質は上々とのことだ。
逆に、我が国では 日照時間不足で冷夏の様相を呈した。
梅雨明けも遅く、関東地方などは 8月2日になってやっと梅雨明け宣言が出され、東北南部は 一度出された梅雨明け宣言が取消され、いつ梅雨が明けたのか 分からなかった。
お陰で、米は不作で、全国平均作況指数は90 (著しい不良) 、青森53、宮城69、北海道と岩手が73など 特に東北、北海道の稲作は惨憺たる有様だった。
これが江戸時代だったら、餓死者も出るほどの飢饉になったかもしれないが、現代では 備蓄米のお陰で、米不足の心配もないというのだから、我々は 恵まれた時代に生きていると言うべきだ。
今年は、星野阪神タイガースが 18年ぶりにリーグ優勝を果たし、関西地方は大いに盛り上り、経済効果も大きかったようだ。
阪神ファンの熱狂振りは大変結構なのだが、あの汚い道頓堀川に 警察の制止を振り切って飛び込んだ人が5,300人、溺死者まで出る現象を どう見るべきなのだろうか。
日本シリーズ終了後、星野仙一監督は、健康上の理由で監督を辞任した。読売ジャイアンツの原辰徳監督も辞任したが、両監督の辞任は対照的だった。
景気回復が叫ばれて久しいが、今年も 我が国経済には、実感できる程の景気回復は見られなかった。
10数年も続いている不況が 構造的なものであることは間違いない。
グローバル化した世界経済の中で、これまでの経済や産業の構造が 通用しなくなったというのなら、構造改革を実現するしかない。
景気回復の特効薬がないとすれば、時間がかかるのは止むを得ない。
しかし、一時 7,000円台にまで落ち込んだ日経平均株価は 最近10,000円前後まで回復しているし、12月の日銀短観 ( 企業短期経済観測調査 ) による業況判断指数も 大幅に改善しており、景気に 多少明るさが出はじめていることも確かだろう。
来年に繋がって欲しいものだ。
自民党では、9月に総裁選挙が行われ、引続き小泉さんが総裁に就任した。( 任期3年 )
民主党は 9月下旬に、自由党を吸収合併した。小沢自由党を抱え込んだ民主党が 今後どう変っていくか、注目されるところだ。
今年は 11月9日に総選挙が行われたが、小泉連立与党は、絶対安定多数を確保し、政局に変化はなかった。
マニフェスト選挙で、政権奪還を目ざした民主党は 40議席増やして躍進した。逆に共産党、社民党、保守新党の小数党は 大敗を喫した。
マスコミは、これを二大政党時代への幕開けと報じた。
社民党の土井たか子氏は、責任を取って党首を辞任、後継党首には、福島瑞穂氏が就任したが、前途多難だ。
保守新党は 解散し、自民党に合流したため、小泉政権は、従来の三党連立から公明党との二党連立政権になった。
三党連立と二党連立政権では、その在り方も多少変わってくるかもしれない。
今年の国際問題の関心事は、相変わらずイラク問題と北朝鮮問題だった。
今年3月20日、米英は、大量破壊兵器の無条件、無制限の査察受け入れに非協力的だとして、イラクに対する武力攻撃に踏みきった。戦争は僅か3週間で終り、フセイン政権はあっけなく終焉した。
しかし、その後は 時間の経過とともにテロ事件が頻発し、治安が悪化、最近では収拾困難な状況に立ち至っている。
これは、フセイン残党の仕業、イスラム過激派やアルカイダなど国際テロ集団によるもの等と言われているが 確かなことは分からない。
攻撃の対象も米英軍に留まらず、スペイン、イタリア、ポーランド等の親米諸国、国連施設、国際赤十字、警察、イラク人にまで及び 無差別化の様相を呈している。
また テロ事件は、イラク国内に留まらず、サウジアラビア、トルコ、アフガニスタン等でも起きている。
地対空ミサイルによる米軍ヘリ撃墜事件は頻発し、民間航空機にまで被害が及んでいるし、施設や車両に対するロケット攻撃、自爆テロも頻発している。
主な事件を挙げてみると
8月19日 在バグダッド国連事務所に対する自爆テロで、デメロ国連事務総長特別代表を含む国連スタッフら17人が死亡、負傷者多数。
11月12日 イタリア国家警察部隊使用の建物に対する自爆テロで、27人の死者と負傷者多数。
11月15日 トルコのイスタンブールで2つのユダヤ教礼拝所に対する同時爆弾テロで、23人の死者と負傷者多数。
11月20日 トルコのイスタンブールで英国領事館と英系HSBC銀行付近2ヶ所での同時爆弾テロにより 英国総領事を含む30人の死者と負傷者数百名。
11月21日には、報道機関が滞在している民間ホテルにも ロケット弾が打ち込まれる…etc。
12月13日午後8時頃(現地時間)、米特殊部隊は、遂にフセイン元大統領の身柄を拘束した。これにより テロは沈静化するのではないかとの見方もあるが、期待はできないと思う。
我が国も テロの標的になっていることは確かだ。
国際テロ組織「アルカイダ」系の組織が、犯行声明の中で、米国及びその同盟国の日本、英国、イタリア、オーストラリアへのテロを計画中であるとか、日本が自衛隊を派遣するなら、我々の攻撃は 東京の心臓部に達する等と言い、11月18日には 日本大使館に向けての発砲事件もあった。
遂に11月29日には ティクリート付近で、車で移動中の日本人外交官2名 ( 奥克彦参事官、井ノ上正盛三等書記官 ) とイラク人運転手が襲撃されて死亡するという痛ましい事件が発生し、政府に衝撃が走った。
( この日は、スペイン情報機関員らの車も襲撃され 7人が死亡した外、コロンビア人が殺される事件も発生。翌30日には 韓国人技師らの乗用車も銃撃を受け、韓国人2人とイラク人1人が死亡 韓国人2人が負傷する事件も起きている )
政府は、去る12月9日、イラク復興支援のための自衛隊派遣に関する基本計画を閣議で正式に決定した。
現地の治安悪化や外交官が殺されたことで、自衛隊派遣を中止すれば、テロに屈したことになり、テロの思う壺だ。それは、結果的にテロに加担し、協力したことになる。
小泉首相は、自衛隊派遣はあくまでも人道復興支援のためであり、航空自衛隊は、米軍などの武器・弾薬は輸送しないと明言している。
しかし、今 イラクにとって最も緊急な課題は、テロ根絶、治安回復である。即ち、治安回復なくして 復興なしだ。
米英軍のテロ掃討作戦や治安維持に、自衛隊が できる範囲で協力することも、イラク復興支援活動の一環として重要な仕事だと思うのだが…。
危険地帯であるイラクに 自衛隊を派遣するのだから、テロ対策には 特に万全を期すべきことは、言うまでもない。
北朝鮮の核開発問題をめぐる6カ国協議が 8月27日〜29日に 北京で行われたが、全く進展はなかった。
この協議の中で、北朝鮮は、既に核兵器を保有していることを ほのめかしたり、核実験の実施に言及したり、ボクシングに例えれば 北朝鮮の優勢勝ちにさえ見える。
北朝鮮の友好国である中国やロシアは、圧力をかけるどころか北朝鮮のご機嫌を損なわない配慮を優先するのだから、こうなるのは当前だ。
こんな調子では、協議を何度繰り返しても意味がない。
アメリカが示す北朝鮮の「安全保証」に関して 北朝鮮側との折合いがつかず、年内開催と言われていた次回6カ国協議は 来年に持ち越されることになった。
協議をまとめるためには、北朝鮮の安全を保証することも必要かもしれないが、同時に 対抗措置についても考えねばならない。中国、ロシア、韓国が反対ならば、日米だけでも経済制裁を行うべきだ。
日本としては、北朝鮮問題は 拉致問題抜きには考えられない。
今年は、拉致被害者の願いも空しく、まともな交渉もできず、現地に残された子供達家族の帰国も実現しなかった。
北朝鮮は、相変わらず拉致問題は解決済みと言ったり、国連の場で ジャップ ( 日本人に対する蔑視語 ) 発言をしたり 常軌を逸した行動を取っている。
しばらく運休していた“万景峰号”も8月に7ヶ月振りに新潟港に入港し、その後も自由に往来している。
こんな調子でいいのだろうか。多くの国民が日本外交の無力感を感じているはずだ。
相手が交渉に応じてこないなら、こちらから アクションを起こすべきだ。
拉致問題を打開するために、北朝鮮には 経済制裁を行うべきだし、万景峰号の自由な来航も 禁止措置を取るべきだ。
経済制裁をしても、我が国には失うものは殆んどない。北朝鮮に人質として残されている子供達の安全が心配だが、むしろ拉致被害者の方々が 万景峰号の入港禁止、経済制裁を…と訴えていることを 政府はどう受け止めているのか。
我が国は、拉致問題は 6カ国協議で採り上げてもらいたいと言っているが、中国やロシアは、北朝鮮に配慮して、それはできない、日朝2国間で解決すべきだと言っている。
関係国が、6カ国協議で拉致問題を採り上げないと言うのなら、それは仕方がない。
そうなれば、仮に核問題が解決しても、拉致問題は 取り残されることになる。
拉致問題が解決しなければ、仮に核問題の協議がまとまったとしても、それは日本抜きの解決であること。
米韓等関係国が経済支援をしても、我が国としては、拉致問題未解決では 国交正常化は勿論、経済支援などは一切できないということを 関係諸国に はっきり示しておくことが必要だ。
北朝鮮核問題の解決が 日本抜きで できるのか、できるとすれば どんな形になるのかについて、政府は 今から検討し、対応を考えておくべきだ。
(2003.12.15)
次回は〔第69回〕
「2004年を迎えて」(2004.01.01)
【出来事】
- 12月1日午前11時 テレビ地上波デジタル放送が東京、大阪、名古屋の三大都市圏でスタート
- 12月6日 11月29日イラクで殉職した外交官 奥克彦氏、井ノ上正盛氏の奥 井ノ上両家と外務省との合同葬 於青山葬儀所
- 12月9日 政府 自衛隊のイラク派遣の基本計画を閣議決定
- 12月11日〜12日 日本と東南アジア諸国連合(ASEAN)10カ国の特別首脳会議開催 東京宣言を採択 於東京
- 12月13日(日本時間14日) イラクのサダム・フセイン元大統領の身柄を米特殊部隊がティクリート南方で拘束
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