◇第69回◇
2004年を迎えて
政府は、昨年12月 イラクへの自衛隊派遣に関する基本計画を決定したが、その自衛隊派遣の是非をめぐる論争の中で、新しい年を迎えた。
内政問題では、引続き景気対策、年金等 社会保障問題、財政問題、地方分権、更には道路公団民営化、郵政公社民営化等々 小泉内閣にとっては今年も難問山積の年と言えそうだ。
イラクでは、米軍の掃討作戦にもかかわらず、テロは増加する一方で、このままでは ゲリラ化し、泥沼化してしまう。
イラク統治評議会は、今年6月までに イラク人による暫定政府を樹立したいと言っているが、そのためには 治安の回復が不可欠だ。しかし、それまでに治安が回復する見通しはない。
アメリカに反対する人達は、アメリカは イラクから即時撤退し、イラク人による政府が作られるべきだと主張する。
しかし、テロが頻発し、最悪の治安状態の中で、イラク人によるまともな政府など できるはずがない。
今、アメリカをはじめ 国際社会が イラクから撤退したら、イラクは、フセイン残党やアルカイダ等の国際テロ組織の巣窟になってしまうだろう。
アメリカ撤退論は、まことに無責任な主張と言わなければならない。
今 イラクの緊急課題は、テロを一掃して治安を回復することだ。治安回復なくして、イラクの復興もイラク人による政府樹立もあり得ない。
アフガニスタンのタリバン政権崩壊後、鳴りを潜めていたアルカイダ集団が、最近テロ活動を活発化させているようだ。
アルカイダによるテロ破壊活動は、アフガニスタンの復興も妨害している。
テロ撲滅は、国際社会共通の深刻な課題であるはずだ。
2001年9月11日のアメリカ同時多発テロ事件の際は、テロ撲滅に あれほど国際社会が結束していたのに、その後は イラク戦争の是非をめぐる米、英と仏、独、露等の対立が尾を引き、テロ対策に 国連が機能していないのは遺憾だ。
今年は、テロ根絶に向けての国際社会の協力体制を 早急に確立して、国連主導による強力なテロ撲滅作戦に 期待したい。
イラク復興支援のための自衛隊派遣は、現地の治安悪化のため、航空自衛隊の先遣隊が 去る12月26日に出発しただけで、全ては今年に持ち越された。
現地の治安悪化や外交官殺害事件を理由に、我が国が 自衛隊を派遣しないことになれば、それこそテロに屈したことになり、テロの思う壺だ。また、世界30数カ国が イラクに派兵していると言うのに、日本は 一国平和主義で国際社会をも省みない無責任国家だというレッテルを貼られてしまうだろう。
今回の派遣地域 イラクは、テロ攻撃の危険があるだけに、安全対策には 特に万全を期さねばならない。
安全を確保するには 十分な武器や装備が必要であり、これを制限するようなことがあってはならない。政府は、自爆テロ対策として 無反動砲や個人携帯対戦車弾の持込を決めているが 当然のことだ。
また、隊員の行動を、例えば正当防衛や緊急避難以外に発砲してはならない等と細かく規制すべきではない。
隊員の行動がどこまで許されるかは、現地の実態に即して 現地部隊に任せるべきである。
憲法9条を理由に 携行する武器を制限したり、隊員の行動を予め規制する、即ち隊員の手足を縛った状態にしては 隊員の安全は絶対に確保出来ない。
今年7月には、参議院選挙が行われる。
前回2001年の参議院選挙では、小泉人気で自民党が圧勝した。今年も 前回と同じように自民党圧勝なら、衆参両院で 自民党が単独過半数を占めることになる。
しかし、旧態依然たる今の自民党では、むしろ敗北する可能性の方が大きいと思う。
昨年の総選挙で躍進した民主党の上昇ムードが、今年の参議院選挙まで続き、民主党が どれくらい議席を伸ばすかが焦点だろう。
民主党が 半数近くの議席を獲得すれば、いよいよ二大政党時代近しと言うことになるし、民主党にとっては試金石だ。
もし万一、与党が過半数を割るような事態になれば、政局は 混乱を来たし、政界再編に発展する可能性もある。
北朝鮮問題については、昨年8月、6カ国協議が開催されたが、進展がないまま 時間だけが経過し 2004年を迎えることになった。
対話と圧力と言いながら、圧力の部分は一向に見えない。
北朝鮮の出方や動きに期待するだけでなく、もはや こちらからアクションを起こすべき時期に来ている。
そのためには、関係諸国が一致して制裁措置を発動することが 最も望ましいのだが、中国、ロシアにはその気は全くないし、多分韓国も同じだ。
日米だけでも、経済制裁等の措置をとるべきだと思うのだが、この点になると、我が国政府も慎重で、あまり積極的ではないようだ。
アメリカもイラクの激化するテロ、治安対策に追われ、北朝鮮への対応が手薄になることが懸念される。
第2回目の6カ国協議については、今年早い時期 ( 1月中にでも ) に開催することで 仲介役の中国と北朝鮮が一致したと言われている。仮に開催されたとしても、前途多難、簡単に解決しそうにもない。
これまで、拉致問題が、北朝鮮との間で全く進展しなかったのは、日本は どんなに主権を侵されても、何もできない国だと なめられているからではないか。
北朝鮮側としては、拉致問題の解決を急ぐ必要はない、将来、日本から経済支援を引き出すための外交カードとして 温存しておいた方が得だと考えているのではないか。
今年は、是非 北朝鮮に対する経済制裁措置や万景峰号の入港禁止措置を講じるなど、こちらからアクションを起こして 我が国の毅然たる強い姿勢を 示してもらいたいものだ。
唯々、話し合いで…と言い続け、相手の出方を待っているだけでは、事態は全く進まない。
自民党では、北朝鮮への経済制裁を可能にするため、外国為替・外国貿易法( 外為法 )の改正案を 来るべき通常国会に議員立法として提出すると言う。( また、北朝鮮船舶の入港を禁止できるようにする法案の取りまとめも、有志議員らによって行われている )
民主党にも、万景峰号など北朝鮮籍船舶の入港規制を可能にする新法を国会に提出する動きがある。
これらの法案は、与野党とも 基本的には 賛成のはずだし、与野党全会一致で法案を成立できれば、北朝鮮への迫力も強くなるというものだ。
法案成立後は、これに基づいて 経済制裁を実施してもらいたいし、万景峰号の自由往来も禁止してもらいたいと言うのが、拉致被害者はもとより、多くの国民の心情ではないだろうか。
議員立法による外為法改正の動きについて コメントを求められた小泉総理は、経済制裁も可能だと言う選択肢を持つことは良いことだと発言するに留まり、制裁実施については 慎重な姿勢を示している点が気になる。
拉致問題については、今年も、もっともっと与論を高めていく必要があるようだ。
今年は、オリンピックの年だ。8月13日から29日まで、オリンピック発祥の地アテネで第28回オリンピック大会が開かれるというから、甲子園の高校野球大会と重なる。
今年の夏は、暑い最中、テレビにかじりつくことになりそうだ。
昨年、バルセロナ世界水泳選手権 平泳ぎ100メートル、200メートルで世界新記録で優勝した北島康介選手が どんな活躍をしてくれるか期待される。
また、昨年、アジア野球選手権で優勝してアテネ五輪出場権を得た長島日本チームも楽しみだ。日本は、まだ野球で金メダルを取ったことがない。今回は、アメリカが出場しないので 日本にとってはチャンスだ。
ただ、プロ野球が ペナントレースの真っ最中の時期だけに、プロ選手によるベストチームが組めるかどうか些か心配ではある。(2004.01.01)
次回は〔第70回〕
「二大政党時代は来るか」(2004.01.15)
【出来事】
- 12月17日 台湾で今冬初の新型肺炎(SARS)感染者を確認
- 12月22日 前日本道路公団総裁藤井治芳氏 石原国土交通相を相手取り 総裁職解任処分取り消し訴訟を東京地裁に提訴
- 12月22日 政府・与党協議会 道路四公団の民営化案を決定 これに反発した道路関係4公団民営化推進委員会の委員長代理田中一昭氏 松田昌士氏が委員を辞任
- 12月23日 中国重慶市の天然ガス鉱でガス噴出事故発生 死者233人他に重体77人(28日新華社通信)
- 12月26日 航空自衛隊イラク派遣先遣隊 クウェートに向け出発
- 12月26日 イラン南東部で地震 死者は推定4万〜5万人(12月31日現在)
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