◇第72回◇
自衛隊のイラク派遣論争
イラクへの自衛隊派遣の是非をめぐって、今国会で与野党が激しく対立し、紛糾した。
40カ国近い国が部隊を派遣し さまざまな支援を行っている中で、我国も 国際社会の一員として自衛隊を派遣してイラクの復興支援に協力すべきだとする政府の姿勢は正しいと思う。
また、我国は、石油の大部分を中東に依存しており、この地域の安定は 我国の国益から見ても重要なことだ。
自衛隊は、イラクの人々の救援、被害復旧のための医療、給水、施設の整備、物資の輸送等の人道復興支援活動を行うものであり、その活動は あくまで非戦闘地域とし、武器の使用は行わない。政府は憲法の枠内でやることを強調している。
日米同盟の強化と国際協調の両立を図ることが必要とも言っている。
これに対し、野党は自衛隊の派遣自体に反対している。
反対の理由は色々あるが、主なものは
「今のイラクには 非戦闘地域はない。自衛隊は テロ攻撃に遭い、否応なしに戦闘行為に巻き込まれる。これは憲法で禁じている海外での武力行使に当たるから 憲法違反だ。」と言う。
イラクの治安が悪いことは 事実だし、確かに絶対安全とは言えない。
だから自衛隊が行くのであって、治安が十分保たれて 絶対安全なら 民間人が行けばよい。
また、治安が悪いから そこが戦闘地域だとは言えない。
例えば、強盗が多発するので、警察が武器を使ってこれを取締るのを 戦闘とは言わない。
普通 戦闘地域とは 戦争が行われている地域のことを言う。
しかし、イラクではフセイン政権は敗れ、戦争は終わっているのだから 戦闘地域は存在しない。
テロの頻発で 治安が悪化している地域を、戦闘地域と呼ぶこと自体が おかしいのである。
テロは、目的や手段を問わず 反社会的な犯罪行為であり 断固として撲滅しなければならない。
自衛隊が テロ攻撃に遭った時は、武力で反撃するのは当然のことだ。この場合の武器使用は、憲法が禁じている武力の行使とは全く異質なものだ。正当防衛でもあり、憲法問題など 生じる余地はない。
「イラクで大量破壊兵器が見つからなかったから、米英によるイラク戦争は大義を失った。
イラクへの自衛隊派遣は、米英による 不法なイラク戦争や占領に加担することになるから反対だ」という主張がある。
イラクで大量破壊兵器が 発見されなかったとしても、米英によるイラク戦争に 大義がなかったとは言えない。
以前、サダム フセインが 大量破壊兵器を持っていたこと、実際に それを使用した事実があるからだ。
1980年代のイラン、イラク戦争では 化学兵器 (マスタードガス) を使い イラン人約3万人を殺傷しているし、自国民のクルド人に対しても化学兵器を用いて 約5千人を殺害し、約1万人を 負傷させたと言われている。
更にフセインは1990年に、突如国境を越えて クウェートに侵攻するという危険極まりない侵略者だったではないか。
この時の湾岸戦争終結時に、イラクは 大量破壊兵器の廃棄を国際社会に約束したが、国連の度重なる警告にもかかわらず これを無視し続けた。
このため 国連では、2002年11月に、無条件、無制限の査察受入れを求め、決議の不履行は「重大な結果に直面する」と警告した最後通牒とも言うべき安保理決議1441が採択されたが、イラクは 査察に全面的な協力をしなかった。
このため 米英軍は、安保理決議1441違反だとして 武力行使に踏み切ったものだが、仏、独、露、中は もっと査察を続けよと言って対立した。
イラクは 大量破壊兵器を持っていないと断言してイラク戦争に反対した国は 一つもない。イラクの大量破壊兵器については 各国とも不安を持っていたはずだ。
結果的に 大量破壊兵器が発見されなかったとしても、フセイン政権の崩壊により、大量破壊兵器の不安が この世から払拭されたのだから イラク戦争に大義がなかったとは言えない。( フセインが安保理決議1441に基づき、査察に全面的に協力して 大量破壊兵器を持っていないことを証明していたら、イラク戦争は 避けられたはずだ )
“米英によるイラク戦争には 大義がなかった”という主張は、フセイン政権の存続を肯定する意見だが、私はフセイン政権の存続を支持しない。
アメリカも、イラク人による政権樹立を目ざして、大きな犠牲を払いながらも 治安の回復、復興支援を行っているのであり、これを 不当な占領と言うのは、愚かな反米主義者の言うことだ。
イラク問題で我国( 自衛隊 )が、アメリカに協力して何処が悪いと言うのだろうか、全く理解に苦しむ。
「小泉首相は、自衛隊のイラク派遣について十分説明すべきだ」とか「小泉首相は、説明責任を果たしていない」という意見がある。
しかし、これ以上 何を説明せよと言うのだろうか。
「憲法違反だ」とか「戦争に巻き込まれる」等と叫んで かたくなに反対する勢力が、賛成できるように説明せよと言っても、それは無理だ。
「小泉首相は、説明責任を果たしていない」と言うのは、自衛隊のイラク派遣は 絶対反対だと言っているのと同じで、政府も総理も気にする必要はない。
テレビで 国会中継を見ていると、自衛隊のイラク派遣問題に関する議論は 実に次元が低い。
特に 野党の質問内容は、その議員の資質を疑わせるようなものが多い。
旧態依然たる社民党や共産党は論外だが、民主党の主張も支離滅裂だったようだ。
菅直人代表は、自衛隊の派遣は 憲法違反だと決めつけてしまったため 議論は 先に進まなくなった。こうなれば、議論を打ち切り 採決へとなるのは当然だ。
菅代表の衆議院本会議での代表質問“自衛隊派遣は憲法違反”発言に対する党内批判には、「私の発言は あまり気にしなくていい」と弁明しているが、党首の代表質問は そんなに軽いものか。
この点に関しては、菅直人氏は 党の代表失格と言われても仕方がない。
現地で自衛隊は オランダ軍に守られているという。しかし、オランダ軍が テロ攻撃を受けても、日本の自衛隊は オランダ軍を助けないことになっている。
オランダ人から見れば「日本の軍隊を 守るために派兵しているのではないぞ」と言いたくなるだろう。
誰が考えても おかしな話だ。
それは、政府見解で“集団的自衛権はあるけれども 行使できない”ことになっているからだそうだ。
政治家は、こんな理不尽なことに 何の疑問も感じないのだろうか。
こんな理不尽な問題こそ、野党側は 国会で追求すればいいのにと思うのだが、民主党もイラク派遣反対に終始するばかりでは、これを とりあげることもできない。
こんなことでは、民主党は、政権政党には 程遠いという印象を深めるだけだ。(2004.02.15)
次回は〔第73回〕
「平成16年度政府予算と国家財政」(2004.03.01)
【出来事】
- 2月1日 大阪府知事選挙 太田房江氏(52)再選
- 2月3日 イラク派遣陸上自衛隊本隊第1陣(施設部隊約90人) クウェートに向けて出発
- 2月6日 モスクワの地下鉄で走行中の車両が爆発 死者39人(100人に達するとの情報も)負傷者134人(内34人は重態) 当局はテロと断定
- 2月9日 外国為替及び外国貿易法(外為法)改正案 自民、民主、公明等の賛成多数で可決 成立(北朝鮮に対する経済制裁を視野にいれたもの)
- 2月9日 参院本会議 自衛隊のイラク派遣承認案件を自民 公明両党の賛成多数で可決承認
- 2月12〜13日 外務省田中均外務審議官 薮中三十二アジア大洋州局長らによる対北朝鮮政府間交渉(於平壌)平行線で結論出ず
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