◇第74回◇
6カ国協議と拉致問題(その1)
去る2月25日〜28日、北朝鮮の核問題をめぐる第2回目の6カ国協議が 北京で開かれたが、議長国中国が、次回協議を6月末までに 北京で開催すること、作業部会の新設について合意したことを 議長総括で発表しただけで 全く進展はなかった。
6カ国協議とは言っても、実質的な主役は、米朝だ。
アメリカが、ウラン濃縮計画を含む全ての核開発計画について 検証可能で 後戻りできない方法による 完全な廃棄を求めたのに対し、北朝鮮は、ウラン濃縮計画の存在を否定し、核兵器凍結に対する見返り補償を求め 平行線に終わった。
北朝鮮は、核開発問題を外交交渉のカードに使い、相手から経済支援を引出そうという魂胆だ。
悪事をやめるから 補償金をくれと言っているようなもので、こんな身勝手な主張が受入れられるはずがない。
拉致問題についても、全く進展がなかった。
6カ国協議に先立って、2月12〜13日 平壌で行われた拉致問題に関する日朝政府間協議で、北朝鮮は、拉致被害者5人を一旦北朝鮮に返すべきで、家族の帰国については、本人達の意向に基ずいて決めるべきだという旧来の主張を 繰返しただけで、平行線に終わった。
この 日朝政府間協議に点数をつければ、0点 否 マイナス点だろう。
6カ国協議に於ける日朝間協議でも、北朝鮮は2月12〜13日の協議と同じ主張を繰返しただけだった。( 2月25日の日朝協議 )
北朝鮮は、6カ国協議で拉致問題を持ち出すなら、日本は6カ国協議に参加させないと息巻いていたし、6カ国協議には アメリカ担当者を出席させ、日本担当者は除外していたので、北朝鮮には 最初から拉致問題を協議する気はなかったものと思われる。
これまでの日本政府や外務省の拉致問題に対する認識、北朝鮮への対応は、まだまだ甘いと言うべきだ。
拉致被害者の家族達は 今なお北朝鮮に残されたままだし、外にも 3桁の行方不明の人々が拉致されていると言われ、真相は闇の中だ。
しかも、北朝鮮は 拉致問題を対日交渉のカードに使おうとしている。
今尚 続いているこの拉致という我国に対する主権侵害を、政府は 一体どう認識しているのだろうか。
昨年、国会のある委員会で 北朝鮮による拉致は テロ行為ではないか、との質問に対し、小泉首相も川口外相も はっきりテロとは断言できなかった。
拉致をテロと決めつければ、北朝鮮を刺激すると思ったのだろう。
これについて、アメリカでは、ケリー国務次官補は「北朝鮮による拉致は、テロ以外の何ものでもない」 また、ボルトン国務次官は「拉致はテロ行為と言うよりほかはない」と明確に述べ、日本の拉致問題主張を支持している。
これは1例に過ぎないが、政府の対応は 全てこの調子だ。
最近、北朝鮮に対する経済制裁を可能にする「外国為替及び外国貿易法(外為法)改正案」が可決された。( 自民、民主、公明三党による議員立法法案 2月9日参院で可決成立 )
この外為法改正は、北朝鮮への対抗手段として有効だと思う。
しかし、この外為法改正に関する政府の姿勢がおかしい。
小泉首相は「北朝鮮に対抗する選択肢の一つとして カードを持つことは いいことだ」と言うにとどめ、当面は発動しない、発動は慎重にという態度を表明している。
これでは、折角の外為法改正も、死んでしまう。北朝鮮への圧力として有効に働かない。
“今回の外為法改正は、政府が行ったものではない、議員立法によるもので、政府としては、これを発動する気はない”ということを内外に表明しているようなもので 極めて遺憾だ。
“今回の外為法改正は、政府に先駆けて議員立法によって行われたもので、日本国民の世論の反映だ。政府としては、北朝鮮の出方次第では、いつでも経済制裁を発動する用意がある。”
というような政府声明を出せば、外為法を改正しただけで 北朝鮮には 大きな圧力になっただろう。仮に発動はしなくとも…
小泉さんは、この種の問題は感情的にならず、冷静に と言うだろう。
しかし、この場合、それは間違っている。
小泉さんが、当面 発動はしないと言ったため、北朝鮮は プレッシャーを全く感じなくなった。
北朝鮮に いくらかでもプレッシャーを与えようとすれば、本当に発動しなければならなくなる。
第2回目の6カ国協議でも 拉致問題に関する北朝鮮の態度は変わらなかったし、最初から北朝鮮側には 拉致問題を協議する気さえなかった。
これは 北朝鮮側の拉致問題軽視の姿勢と受け止めざるを得ない。
北朝鮮に対する経済制裁の時期は到来している。直ちに改正外為法を活用して 経済制裁を実施すべきだ。
経済制裁という伝家の宝刀を抜いてしまえば、カードがなくなると言う者も居るが、決してそんなことはない。
相手の出方によって 経済制裁を解除するのだから、今度は 解除の条件や時期をめぐって より大きなカードとなり得る。
それとも北朝鮮が、経済制裁をすれば宣戦布告と見做すと言っているのが怖いのだろうか。
それなら何をか言わんやだ。
“万景峰号”等北朝鮮船舶の入港制限を可能にする「特定外国船舶入港禁止法案」が、自民党内で検討されている。
自民党安倍幹事長は 今国会で成立させたいと言っている。早期成立が望まれる。
「特定外国船舶入港禁止法案」にも、慎重論や反対論があるのは遺憾だ。
社民党や共産党は 反対している。
理由は、「北朝鮮を刺激し、日朝関係を悪化させるから…」とか「在日朝鮮人の人権が侵害されるから…」等と言っている。
冗談ではない。拉致という非人道的な国家犯罪を現に犯している国に対し、刺激しないように、そっとしておけ とでも言うのだろうか。
在日朝鮮人の人権と言うが、海の向こうの北朝鮮に拉致された人たちの人権侵害と比べものになるのか。
在日朝鮮人の生活に直接影響を与えるわけでもないし、当分北朝鮮への里帰りができないだけではないか。
在日朝鮮人の人権云々と言う者は、拉致被害者への人権侵害を 在日朝鮮人のそれと 同程度にしか見ていないことになる。
“万景峰号”が、過去、ミサイル等大量破壊兵器への転用可能な機材機器、麻薬 覚醒剤の密輸、外為法違反の大量な円の持ち出し、工作活動への関与など北朝鮮のさまざまな犯罪に利用されてきた事実を併せ考えると 北朝鮮船舶の入港制限措置は当然のことだ。
「特定外国船舶入港禁止法案」が成立したら、改正外為法と同様 できるだけ早く北朝鮮船舶に対し適用すべきだ。(2004.03.15)
次回は〔第75回〕
「6カ国協議と拉致問題(その2)」(2004.04.01)
【出来事】
- 3月2日 イラクの首都バグダッドと中部カルバラで同時テロ 少なくとも死亡182人以上人 負傷550人以上(イスラム教シーア派の伝統行事アシュラを狙ったもの)
- 3月4日 衆院議員佐藤観樹氏(民主党) 秘書給与疑惑(公設秘書の名義借り)で河野衆院議長に議員辞職願を提出 (3月7日愛知県警が逮捕)
- 3月4日 長嶋茂雄氏(読売巨人軍名誉監督 アテネ五輪日本代表チーム監督) 脳梗塞で東京女子医大病院に緊急入院
- 3月5日 平成16年度政府予算案 衆院本会議で可決 参院へ
- 3月11日 スペインの首都マドリードで3駅4列車 同時爆破テロ 200人以上が死亡 1,500人以上が負傷
- 3月12日 韓国国会 盧武鉉大統領の弾劾訴追案を3分の2を上回る賛成多数で可決 180日以内に開く憲法裁判所の弾劾審判で弾劾可否を決定するまで盧大統領の権限行使は停止(その間は首相が大統領権限を代行)
- 3月14日 大相撲春場所初日(大阪府立体育会館)
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