◇第78回◇
イラク人質事件
去る4月8日と4月14日に、イラクで 日本人が武装勢力により 誘拐拉致されるという事件が2件起きた。
いずれも、無事に解放されたことは 不幸中の幸いだった。
4月8日の最初の事件は、武装勢力により 3人の日本人が拉致され、3日以内に 自衛隊を撤退しなければ 人質を殺すと日本政府を脅していたが、15日になって解放された。
4月14日の誘拐事件は、フリージャーナリスト等2名が、武装勢力により 誘拐拉致されたものだが、17日に解放されている。
政府の対応は、自衛隊の撤退はあり得ない、人質救出には 全力を尽くすというもので、この方針を貫いたことは 正しかったと思う。
テロには 屈しないという毅然たる姿勢は、国際社会の支持を得た。
今回、日本中を心配させた誘拐人質事件の全ては、拉致被害者側にある。
今のイラクが、危険地域であることは 周知の事実である。しかも、外務省は、これまでイラクへの渡航自粛や退避勧告を 何度も出している。
それにも拘わらず、本人達が危険を犯して 拉致されたのは、自業自得と言うべきだ。
しかし、本人達が 自己責任でやったのだから、どんな結果になっても自業自得だ、では済まされないのである。
それは、国には、自国民を救出、保護する責任があるからだ。
救出に当たっては、政府の手を煩わせたことは勿論、多方面に多大な迷惑を掛けている。
救出に要した費用も莫大なものになる。全ては税金で賄われるのだから 国民にも迷惑を掛けたことになる。
本人達は、これをどう認識しているのだろうか。
今回の拉致人質事件には、多分に政治的な匂いを感じる。
拉致被害者や家族等 関係者の言動を見ると、これらの人々が、反米、反政府的で 自衛隊派遣反対論者であることは 間違いないようだ。
反戦平和 人道目的で行っているのだから、誰も危害を加えるはずはないと思い込んでいたのだろうが、これは 平和ボケした日本国民の典型だ。
反戦平和、非武装中立にしていれば、攻めてくる国は ないと主張する平和ボケ政党と 相通じるところがある。
イラクで貧しい人々や孤児たちの支援活動をするのは、崇高な仕事だと本人達は思っているようだし、これに同調するマスコミも多い。
個人の力で 一体どれだけの支援ができると思っているのだろうか。思い上がりもいい加減にしてもらいたいものだ。
結果は 多くの人々に莫大な迷惑を掛けただけではないか。
彼らの行為は、1人よがりの自分の欲望を満たすだけのものだ。
本当に、人のため 社会のために尽くしたいなら、わざわざイラクへ行かなくても、国内にも できる事は沢山あるはずだ。
特に最初の3人が人質になった事件での 家族達の行動には、特異なものがあった。
支援団体が直ぐにできたこと、10数万人という署名が短時間で できたのは、いかにも手回しがいい感じを受けたし、連日 派手な記者会見が繰り広げられた。
普通の人では、とても こうはできまい。( やらせではないのか という陰の声があったのも頷ける )
家族や支援団体は、人質救済のために 自衛隊を撤退させよ、総理に会わせろ等と主張し、人質事件の責任は、全て政府にあるような言い方で 常軌を逸したものだった。これが、多くの国民の反撥を招いたのは当然だ。
民主党菅直人氏は、総理は なぜ被害者家族に会おうとしないのか、と責めていたが、総理は家族に会う必要はないし、会うべきではなかった。
総理に面会を求める家族や支援団体の狙いが、自衛隊撤退を迫ることにあるのは明白だったし、総理が 被害者家族に会わなかったのは 正解だ。
今回の事件で、人質解放には、イラク・イスラム聖職者協会が大きな役割を果たしたことになっている。
イスラム聖職者協会が、人質解放に尽力してくれたことは確かだろうが、日本のため、日本人のためにやってくれたと思うのは、間違いだ。
彼らは、犯行グループの武装勢力と共通の考え方で結びついていることは 事実だし、自らの目的のための戦略に従って行動したもので、彼らの目的は 十分達成されたとみてよい。
イラク・イスラム聖職者協会の幹部、アブドル・サラーム・アル・クバイシ氏は、今回の事件に関し、要旨 次のように述べている。
“解放が遅れているのは、小泉首相が 武装グループをテロリストと呼んだことに対して、反発しているからだ。武装グループは 国を守るために戦っているのだから、小泉首相は謝罪すべきだ。” 等と述べ 日本政府を強く批判している。
また、“日本国民が 反戦デモを行っていることに感謝する。日本政府も国民の声を聞くべきだ。” と言って自衛隊撤退を主張している。
外務省は、人質解放に関して イスラム聖職者協会に謝意は述べたものの、内心は複雑だ。
今回の人質事件で、犯人側は、人質に、反米、自衛隊撤退のメッセージを託すことができたし、目的は達したと言っていいだろう。
同じ拉致被害者でも、北朝鮮の場合とは、全く異質なものだ。
北朝鮮の拉致問題は、我国の主権が及ぶ国内に於いてさえ、国は、外国による拉致から国民を守ることができなかった。国の責任は極めて重いと言わねばならず、拉致被害者や家族達は、国に対して相当な国家賠償を求めていいと思う。
これに対し、イラクの人質達は、政府の勧告を無視して、身勝手な行動により 事件に巻き込まれた。国の方針にも影響を与えかねないような重大な事態を引き起こし、各方面に多大の迷惑をかけた。
しかも、家族達は、人質を助けるために、テロに屈して自衛隊を撤退させよと言った。
北朝鮮拉致被害者の家族達は、人質として家族が北朝鮮に取られているのに、テロ国家 北朝鮮に対しては、経済制裁や北朝鮮籍の船舶(万景峰号)の入港禁止など毅然たる態度で臨んでもらいたいと言っており、イラクの人質達とは全く対照的だ。
北朝鮮拉致問題については、もっともっと国民世論を高め、被害者やその家族の苦痛を早く取り除いてやりたいものだ。
(2004.05.15)
次回は〔第79回〕
「子供の使いと言われた小泉訪朝」(2004.06.01)
【出来事】
- 5月4〜5日 日朝政府間協議 於北京(外務省田中均外務審議官 藪中三十二アジア大洋州局長らが出席)
- 5月7日 福田康夫官房長官 国民年金保険料の未納問題で官房長官を引責辞任 後任は細田博之官房副長官が昇格就任
- 5月9日 大相撲夏場所初日(両国国技館)
- 5月10日 民主党の菅直人代表 保険料未納問題で党代表の引責辞任を表明(党両院議員懇談会)
- 5月12日 北朝鮮の核問題をめぐる6か国協議の作業部会開催(14日まで) 於北京
- 5月14日 韓国憲法裁判所 盧武鉉大統領の弾劾訴追を棄却
- 5月14日 政府 小泉首相が金正日総書記と会談するため22日に訪朝すると発表
- 5月14日 民主党の小沢一郎氏 菅代表の後任の代表就任を受諾
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