◇第83回◇
第20回参議院議員選挙
去る7月11日、第20回参議院議員選挙が行われた。
自民党は、最低目標とした51議席(改選議席は50)には及ばず、49議席にとどまったのに対し、民主党は、改選議席38議席を大幅に上回り、自民党よりも多い51議席を獲得した。
獲得議席数から見れば、民主党の大躍進、自民党の敗北と言えるだろう。
共産党は、改選議席15議席を大きく下回り、選挙区では0、比例区のみの4議席にとどまった。
社民党は、比例区のみ ようやく改選議席2議席を確保したにとどまった。
共産、社民の衰退傾向は更に進み、もはや国民の支持を失ったとみてよい。
今次参院選挙の争点は、年金問題と自衛隊イラク派遣問題だったと言われている。
民主党は、去る6月に成立した年金関連法は、参院選挙の結果、国民の支持を得られなかったのだから 白紙撤回すべきだ、また、自衛隊の多国籍軍としてのイラク派遣も国民の支持は得られなかったと主張している。
本当に年金問題と自衛隊イラク派遣問題が選挙の争点だったのだろうか。
年金問題は、野党の猛反発の中で強行採決で成立させたものだし、自衛隊派遣は、去る6月 訪米中の小泉さんが 多国籍軍派遣の国連決議を受けて 直ちにブッシュ大統領に 引続き自衛隊派遣の継続を表明した。
民主党は、このいずれも国会無視だと反撥を強め、この2点が選挙の争点だと主張し、これにマスコミがのっただけではなかったのか。
年金問題は、少子高齢化のため、このままでは破綻する制度を、将来に亘って維持できるための抜本改革をどう構築するかという難しい問題だ。
政府案は、保険料値上げの上限を定め、給付額減額についても最低限を定め、これを段階的にやっていこうというものだ。
民主党は、消費税の引上げ(3%)で財源を賄うというだけで、それ以上の具体案は示していない。民主党は、年金一元化も主張しているが、これは自民党と今後の検討課題として合意済である。
今回の選挙の結果、国民が、政府与党の年金改革法を否定し、民主党の消費税3%引上げを簡単に支持したとは思えないのである。
一般国民の中に、年金改革の内容や本質を理解している者がどれだけ居るだろうか。
政府与党の考え方は、既に成立している法律を読めば分るが、民主党の考え方は、消費税の引上げだけで、それ以上の具体案は示されていないのだから、評価できないし、両者を比較しようがないのである。
ただ今回の年金議論を通じて国民の目に明らかになったのは、年金を所管する社会保険庁の不始末や体質だ。
天下りのための保養施設グリーンピア等を各所に作り、ここに国民から預かった保険料積立金を投資して回収困難に至らしめて莫大な損失を蒙ったり、保険料積立金流用による官舎や公用車の購入等々がマスコミで報道され、国民の大きな不信と怒りを買った。
しかも、誰も責任を取らないのだから、国民はこの怒りを一体何処にぶっつければいいのだろう。
政府与党への批判票は、年金改革に対してではなく、このような社会保険庁の体質や厚生行政に対するものだったと見るべきだろう。
したがって、今次選挙で与党政府の年金改革が否定され、野党民主党の政策が支持されたとは言えない。
だからと言って先日成立した年金関連法が、国民に支持されたとも言えない。
法案成立後に、昨年の合計特殊出生率が1.29に落ち込んだことを発表をすると言う不手際もあったが、それを抜きにしても抜本改革には程遠く、今後更なる改革の必要が叫ばれている。
しかし、民主党が主張しているように、既に成立した年金関連法を白紙撤回すべきではない。それは、改革を更に遅らせることにしかならず、党利党略的で無責任な態度と言わざるを得ない。
民主党が本当に責任ある政党なら、白紙撤回を求めるのではなく、建設的で具体的な抜本改革案を示すべきだ。
自衛隊のイラク派遣問題については、去る6月の国連決議( 多国籍軍の派遣 )以前から、大多数の国民のコンセンサスを得ていた。国連決議による多国籍軍になっても、従来通り日本政府の指揮下で活動し、今までと何ら変わらないのだから、ここで急に民意が変わったとは思われない。
国民が自衛隊のイラク派遣反対の意思を示したとは言えない。
それよりも、民主党の小沢一郎氏の持論は、国連決議があれば、例え戦闘行為であっても自衛隊は参加すべきであると言っていたが、今回は鳴りをひそめている。小沢一郎氏の考え方については⇒第16回「危機管理について」の末尾部分「自由党小沢一郎氏の自衛隊派遣論拠の主張について」参照
岡田代表が最近渡米し、自衛隊派遣問題について現地で喋ったことが、すぐ党内で物議をかもすようでは、民主党は自衛隊派遣問題を含む安全保障政策についての統一した方針や政策を持っていないと言うべきである。安全保障という国の基本政策についての意見がバラバラ、ここに民主党の最大の欠陥がある。
今回の参院選で、民主党の政策が国民から積極的に支持された見るべきではない。
自民党批判票が、共産党、社民党に流れず、全て民主党に流れたと見るべきだろう。今回の民主党の勝利は、言わば敵失によるものと言うべきだ。
しかし、昨年の総選挙、今回の参院選を見ると民主党は着実に勢力を伸ばしており、二大政党化に向かいつつあることは確かだろう。
自民党は、かってのような、強い集票組織力は失ってしまった。そこを小泉人気でカバーしてきたが、最近ではその小泉人気にも かげりが出てきた。
2年後のポスト小泉を考えると、このままでは自民党の危機が目に見えてくるようだ。
民主党は、相手党の批判ばかりしていては、国民の信頼は得られない。
国民に積極的に支持される現実的な政策を作り上げ、自民党に代わり得る政権担当能力を早く示してもらいたいものだ。
(2004.08.01)
次回は〔第84回〕
「原子爆弾」(2004.08.15)
【出来事】
- 7月16日 厚生労働省 2003年の日本人の平均寿命を発表 女性85.33歳(世界第1位) 男性78.36歳(アイスランド 香港に次いで世界第3位)
- 7月18日 福井県で集中豪雨による被害発生
- 7月18日 大相撲名古屋場所千秋楽 横綱朝青龍が13勝2敗で優勝
- 7月18日 曽我さん一家4人 ジャカルタより政府チャーター機で日本に到着 ジェンキンス氏は都内の病院(東京女子医大病院)に入院
- 7月20日 東京大手町で気温観測史上最高の39.5℃を記録(これまでの記録は94.08.03の39.1℃) 千葉県市原市牛久では40.2℃を記録
- 7月21日 小泉首相 韓国盧武鉉大統領と首脳会談 於韓国済州島
- 7月22日 北陸 東北地方が梅雨明け
- 7月27日 東京地裁 UFJ信託銀行の売却白紙撤回をめぐり 住友信託銀行が UFJホールディングスと三菱東京フィナンシャル・グループの統合交渉差し止めを求めた仮処分申請を認め 交渉の中止を命じる決定を下す
- 7月30日 第160臨時国会召集 参院議長に扇千景氏(自民党) 副議長に角田義一氏(民主党・新緑風会)を選出
- 7月31日 台風10号 高知県に上陸
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