◇第86回◇
テロは世界共通の敵
9、11アメリカの同時多発テロから満3年が経過し、全米各地で追悼行事が行われた。崩壊した世界貿易センタービルからの遺体確認作業は、まだ続いているという。
しかし、その後もテロは収まる気配がなく、世界各地で頻発している。
ロシアでは、去る8月24日から9月1日までの僅か1週間の間に テロが4件も発生し、多くの人命が失われた。
即ち、8月24日(日本時間25日未明)には、モスクワのドモジェドボ空港を飛び立った旅客機2機が、ほぼ同じ時刻に墜落し、両機の乗員乗客89人全員が死亡した。
両機の残骸から爆発物の成分が検出されたし、イスラム過激派団体が犯行声明を出した。両機とも自爆テロによるものと断定された。
8月31日(日本時間9月1日未明)、モスクワ市の地下鉄リガ駅入口付近で、自爆テロによる爆発で10人が死亡 50人以上が負傷するという事件が発生した。
これは、爆薬を身に付けた女性が警官の目から逃れようとして、地下鉄入口付近で爆発させたらしい。
このテロリストは、本当は 地下鉄車内など もっと混雑した場所を狙っていたはずだ。警官に見つかって失敗したと思われるが、計画通りに爆発させていたら、もっと大きな惨事になっていただろう。
最も残忍なテロが、9月1日、ロシア南部の北オセチア共和国で発生した。武装集団が始業式中の学校を占拠し、児童や教師 親など約1,200人(推定)を狭い体育館に押し込め、これを人質に 立てこもった事件である。
9月3日にロシア特殊部隊が人質救出作戦を展開、制圧したが、多くの子供達を含む330人以上が犠牲になり、700人以上の負傷者を出した。
(注、死傷者の正確な数は判明していない。死者の数は、4〜500人説、600人説などがある。行方不明者が260人居るとか負傷者の中には重体が数十人いると言われ、最終的に 死亡者は相当な数になると思われる。)
事件の生々しい映像は テレビで世界中に報道されたし、助かった子供達の口からは、テロリスト達の数々の残忍非道な行為が語られ、世界を震撼させた。
犯人側は、3日間、人質達に食料はもとより、水も与えなかった、トイレにも行かせなかった、中には自分の尿を飲んだ人もいたと言う。
犯人の言うことを聞かなかったり、声を出して話をする者などは、大人、子供、男女を問わず、その場で射殺されたと言う。
特殊部隊が学校に突入した際には、銃撃戦となり、犯人達は逃げ惑う人質に銃を乱射し、また仕掛けられた爆弾により 多くの死傷者が出たようだ。
逃げ惑う幼い子供達の背中に銃を向け、何のためらいもなく引き金を引く行為は、もはや人間の仕業ではない。
その後、インドネシアでもテロ事件が発生した。去る9月9日、首都ジャカルタのオーストラリア大使館前で自動車による自爆テロがあり、9人(10人との説もある)が死亡、180人以上の人が負傷した。
オーストラリア政府首脳は、これはオーストラリアを狙った爆弾テロだと述べている。
目撃者の話によると、爆発後 きのこ雲が上がったという。これが核爆弾だったらと思うとぞっとする。
テロリスト達が大量破壊兵器を入手すれば、現実に起こり得る話だ。
「泥棒にも3分の理」と言う諺があるが、テロには1分の理もない。
如何に立派な大儀があろうとも、無関係な一般人を標的にしたり、巻き添えにするテロ行為は、決して許されない。
アメリカの9、11同時多発テロや今回のロシアの学校占拠人質事件のように、多くのテロは、あえて行う残虐な行為によって 国際社会の関心を引こうとするもので、もうこれは人類に対する犯罪と言うべきだろう。
一昨年だったと思うが、国会の党首討論で自由党の小沢代表が、小泉総理に質問をしていた。
パレスチナの自爆テロでは、幼い少女が爆弾を身につけて、純粋な気持ちで大儀のために自らの命を犠牲にしようとするもので、これは一般のテロとは区別すべきではないか。この自爆テロは、ある意味では崇高なものではないか、総理はどう思うか、と質した。
小沢一郎も馬鹿げた質問をするものだと思った。
これに対し小泉純一郎は、自爆テロをはっきり否定せず、曖昧な答弁をしていた。どうしてテロは許せないとはっきり言えないのだろうか。
小沢も小沢なら小泉も小泉だ、実に情けない2人だと思った。
関係がない人々を巻き添えにするテロは、それが男であれ女であれ、大人であれ子供であれ、またそれにどんな理由や大儀があろうと決して許されるべきではない。
マスコミ論調には、ロシアのプーチン大統領がチェチェン問題を力で抑える政策だけでは、テロは解決しない。チェチェンの反対勢力(独立派や武装勢力)とも話し合って問題解決を図る必要があるのではないか、と言うのがある。
この意見こそ、まさにテロ支援の態度だ。テロが国の政策に影響を及ぼすことになれば、それこそテロの思う壺だ。
もっと愚かな評論家もいる。日本は、イスラムと敵対関係にないのだから、日本が、ロシアとチェチェンの反対勢力の仲介をしたらどうか と言うに至っては 開いた口が塞がらない。日本はテロ支援国家ではない。
今回のロシアの一連のテロ事件が、未然に防止できず、悲惨な結果に終わったことは極めて遺憾だ。プーチン大統領自身も認めているように、治安機関のテロ対策が不十分だったことは確かだ。
学校占拠人質事件での特殊部隊の実力行使は、偶発的なもので、計画的なものではなかったと言うが、それにしてもあまりにも犠牲者が多すぎた。人命尊重の観点からみると、当局の事件への対応には 大きな欠陥があったと言うべきだろう
しかし、プーチン大統領が、あくまでテロに妥協することなく 毅然として立ち向かっていく姿勢を示したことは、評価すべきだ。
プーチン大統領のテロに屈しない強い姿勢を国際世論も 一致して評価している。
今回のロシアの学校占拠人質事件の犯人の中には10人のアラブ人がいたと言うし、ロシアの一連のテロ事件には、国際テロ組織が関与していることは確かだろう。
国際化したテロは、もはやアメリカやロシアだけの問題ではない。
国際社会は、一致して共通の敵 テロ撲滅を更に推進していかねばならない。
テロの危険性は我国も決して例外ではない。(2004.09.15)
次回は〔第87回〕
「たかがプロ野球」(2004.10.01)
【出来事】
- 8月31日(日本時間9月1日未明) モスクワ市の地下鉄リガ駅入口付近で自爆テロによる爆発で10人死亡50人以上が負傷 過激派組織「イスランブリ旅団」がインターネットサイトで犯行声明
- 9月1日 ロシア南部の北オセチア共和国で武装集団が学校を占拠 生徒や教師 親など約1,200人を人質に立てこもる
- 9月1日 北朝鮮住民29人が第三国への亡命を求めて北京市内の日本人学校に駆け込む
- 9月1日 浅間山が噴火
- 9月3日 ロシア南部の北オセチア共和国ベスランの学校占拠事件 ロシア特殊部隊が人質救出作戦を展開制圧するも 爆発や銃撃戦で死傷者多数(死者約330人以上 負傷者700人以上)
- 9月7日 大型台風18号 長崎市付近に上陸 沖縄から北海道まで被害甚大(死者31人 行方不明14人)
- 9月9日 ジャカルタ(インドネシアの首都)のオーストラリア大使館前で自動車による爆弾テロ 9人死亡 180人以上が負傷
- 9月9日 北朝鮮北部の両江道で大規模な爆発が発生(詳細不明)
- 9月12日 大相撲秋場所初日(両国国技館)
- 9月13日 小泉首相 ブラジル メキシコ アメリカの3か国歴訪に出発
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