◇第89回◇
「宅急便」と「ゆうパック」
今回、郵政公社は、コンビニエンス ストア、ローソンと業務委託契約を結び、ローソンで「ゆうパック」を取り扱うことになった。
これに対し、ヤマト運輸は、公社に対し、独占禁止法による不公正取引だとして、ローソンでの取扱いや不当廉売の停止を求めて東京地裁に提訴し、郵政公社とヤマト運輸は厳しく対立している。
ヤマト運輸は、「クロネコヤマトの宅急便」で有名になったが、同社の創立は以外に早く 大正時代に遡る。
宅急便を始めたのは、昭和50年代前半からであるが、当初は運輸省(陸運局)が宅配便事業に難色を示し、認可を得て全国展開に至るまでには、陸運局の認可が下りず難航、紆余曲折があったようだ。(陸運局が認可を渋ったのは、郵便小包を保護するためとしか考えられない。)
宅急便事業開始の初日(昭和51年1月20日)は、取扱個数は 僅か2個だったと言う。それが昭和58年度には、1億個を越えたと言うのだから、その発展振りは目ざましい。
その間には、さまざまな創意工夫、企業努力があっただろう。
その後も、スキー宅急便、ゴルフ宅急便、クール宅急便等 様々なサービスが開発され、我々の生活を大いに便利にしてくれた。
もし、民間宅配便がなかったら、我々は未だに小荷物を送るのに 郵便小包しか手段がなかったかもしれない。
今 はやりの言葉「民間活力」が、それこそ十分発揮された結果だと言える。
一昨年(2002年) 郵政事業の公社化を控えて、政府は、民間業者の郵便(信書便)事業への参入条件を定めた。
政府も、いよいよ本格的な規制緩和に踏み切るのかと期待したが、蓋を開けてみたら、逆に規制強化だった。
例えば、全国に10万個所以上のポストを設置すること、郵便(信書便)料金を全国一律80円にすること、配達日数の規制、事業計画の策定や変更には総務省の許可が必要等々。
規制緩和の一環として、民間業者の郵便(信書便)事業への参入を認めると言いながら、その参入条件を厳しくして、民間活力どころか、事実上 民間業者を締め出してしまった。
これらの規制が、郵政公社の郵便事業保護のためであることは明々白々だ。
民間で出来ることは、民間で、という小泉さんの公約とは正反対のことが行われている。
このため、ヤマト運輸をはじめ 大手宅配業者は、郵便(信書便)事業への参入を諦めてしまった。当然だ。
日本郵政公社は、今回のヤマト運輸との問題について、「ゆうパック」の宅配市場のシェアは6%しかないのに、「クロネコヤマト」は30%を越えている。したがって、ヤマト運輸を不当に圧迫するような状況にはないと反論している。
昔は、郵便小包が全てであった、即ち、シェア100%であったのが、6%にまで落ちぶれたのは、お役所仕事が如何に非効率的で進歩がなかったかを物語っており、郵便事業民営化の必要性が叫ばれる根拠にもなっている。
税制面等で 国から さまざまな優遇措置を受けている郵政公社が、民間がこれまで切り拓いてきた市場で 競争をしかけるのは、フェアプレーではないと言うのが、ヤマト運輸の主張である。
確かに 民間企業のヤマト運輸と、国の関与のもとで 法人税の免除や信書業務の独占等、国の保護を受けている郵政公社とは、公正な競争関係にあるとは とても言えまい。
ヤマト運輸側としては、全国チェーンのコンビニエンス ストア等との提携による集荷手法を初め、数々のサービスは 自分達が苦労して開発してきた貴重なノウハウだという思いもあるだろう。そこに政府系のマンモス事業体が不公正な競争を挑んできたと感じるのは無理もない。
郵政公社は、各所に特定郵便局というネットワークを持っているのに、あえて民間宅配業者が提携しているコンビニエンス ストアに狙いをつけなくても… と考える人も多いだろう。
郵政公社は、不公正な競争によって民間宅配業者を圧迫すべきではない。バックに国を持つという優位な立場で、民間企業が これまで切り拓いてきた分野に進出して 勝負を挑むのは、公正な競争とは言えない。
郵便事業が完全に民営化されるまでは、民間企業と公平 公正な同じ土俵で競争する関係にはならない。
それまでは 郵政公社は、事業の拡大を狙うよりも、これまでの官営時代の業務を見直し、必要ならリストラを行う等民間企業並みの体質改善を図るべきである。
郵政公社は、来るべき民営化に備えて、今の内に優位性を利用して郵便事業に力をつけておこうという意図かもしれないが、民間企業との不公正な競争によって郵便事業を優遇すべき理由は全くない。
極論を言えば、郵政公社の郵便部門が仮に潰れても、民間企業で必ずカバーできると思う。一時的には、多少の混乱はあっても、国民生活に不自由を来たすことにはならないだろう。
「民間でできることは民間で」という小泉さんのスローガンとは裏腹に、規制緩和の名のもとに、公社、公団等の公営事業が保護され、逆に民間いじめになっているケースが多いのが実態だ。
規制緩和は、民間企業に対して行われるべきもので、官(含 公社、公団)については徹底した構造改革とリストラが求められる。
官は民を補完すべきもので、いやしくも官が民を圧迫するようなことは、絶対あってはならないことだと思うのだが…。(2004.11.01)
次回は〔第90回〕
「小泉さんの北朝鮮政策を斬る 〔T〕(日朝平壌宣言)」(2004.11.15)
【出来事】
- 10月20日 台風23号 高知県に上陸 関西 東海 関東など日本列島を縦断 (死者行方不明は90人以上 平成になって最悪)
- 10月23日 新潟県で震度7(川口町)の地震 被害甚大 上越新幹線も脱線 (「平成16年新潟県中越地震」と命名)
- 10月25日 プロ野球日本シリーズ 西武ライオンズが対戦成績4勝3敗で中日ドラゴンズを下し優勝
- 10月26日 イスラム過激派組織がイラクで日本人(香田証生氏 福岡県直方市出身24才)を拉致 自衛隊の48時間以内撤退を要求(10月30日遺体で発見)
- 10月27日(日本時間28日) 米大リーグのワールドシリーズ ア・リーグのボストン・レッドソックスがナ・リーグのセントルイス・カージナルスを4連勝で下して優勝
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