◇第90回◇
小泉さんの北朝鮮政策を斬る 〔T〕(日朝平壌宣言)
2002年9月 小泉総理が訪朝し、北朝鮮の金正日が拉致問題を認めて謝罪してから 2年余りが経過した今、改めて我国政府の北朝鮮への対応を検証してみると、我国外交には ほとんど評価すべき点は なかったというのが率直な感想だ。
評価する点があるとすれば、一昨年 日本の総理大臣として初めて小泉さんが訪朝したという事実だけである。
しかし、その時 金正日と どんな話合いがなされたのかは、我々は知る由もないが、日朝平壌宣言を見る限り、北朝鮮主導の会談であったことは確かなようだ。
日朝平壌宣言を小泉さんは高く評価しているようだが、我国から見れば、国益に反する 北朝鮮主導の屈辱的な外交文書と言わざるを得ない。
その日朝平壌宣言の問題点の分析から始めよう。
- 日朝国交正常化を早期に実現させることが、日朝平壌宣言の最初に書いてあり、2002年10月中には国交正常化交渉を再開することが確認されている。
【問題点】
日朝間には、拉致という深刻な問題があるのに、小泉さんは、北朝鮮の筋書き通り、最初から日朝国交正常化のために訪朝したことがよく分る。
日朝間に、特に懸案事項がなければ、国交正常化のための首脳会談は意義があるだろう
しかし、北朝鮮の拉致という国家犯罪により、我国の主権侵害行為が現に続いている中で、日朝国交正常化と言う発想が、どうして先に出てくるのだろうか。
小泉さんの姿勢には、(拉致問題よりも)日朝国交正常化に重点があるように見受けられる。
宣言文の最初に日朝国交正常化実現のことが書かれていることから見ても、これは当初からの方針で、正常化交渉の障害になっている拉致問題をうまく片付けて、小泉さんが目ざすものは あくまで国交正常化であることが読み取れる。
(北朝鮮との国交正常化は、北朝鮮側には大きなメリットがあるが、当面 我国にとって国益に資するところは全くない。小泉さんは一体何を考えているのだろう。)
- 日本側は、過去の植民地支配によって、朝鮮の人々に多大の損害と苦痛を与えたという歴史の事実を謙虚に受け止め、痛切な反省と心からのお詫びの気持ちを表明した、と書かれている。
しかも、国交正常化の後 幅広い多額の経済支援を行うことを既に平壌宣言文で約束している。
1945年8月15日以前に生じた事由に基づくの両国及びその国民のすべての財産及び請求権を相互に放棄するとの基本原則に従い、国交正常化交渉において これを具体的に協議すると書いてある。
【問題点】
戦前の日朝併合時代の問題について、相手方に損害や苦痛を与えたと一方的に決め付け、日本側は お詫びの気持ちを表明したと記載されているが、あまりにも一方的で理不尽、屈辱的ではないか。
しかも、国交正常化後の経済支援まで ここで約束するとは、非常識極まりない。
当時日本政府が、日本の一部であった朝鮮のために、インフラの整備をはじめ、莫大な投資をしていることをどう評価するか。
1945年8月15日以前に生じた事由に基づく財産及び請求権を相互に放棄する…云々と書いてあるが、1945年8月15日以後、日本人の全財産は、朝鮮人に略奪されたり、盗まれたり 或いは止むを得ず現地に置いてきたものである。朝鮮人が 終戦により財産上の利益を得たことはあっても、損失を蒙ったことはない。
したがって、「相互に放棄するとの基本原則に従い…」という表現はおかしいのである。(細かいことだけど、外務省は こんな事実もよく認識して対処してもらいたい)
- 金正日は、口頭では、拉致問題を認め、謝罪したと言うが、日朝平壌宣言には、「らち」の「ら」の字も出てこない。「謝罪」の「謝」の字も出てこない。
小泉さんに言わせると拉致の部分は、「日本国民の生命と安全にかかわる懸案問題については、朝鮮民主主義人民共和国側は、日朝が不正常な関係にある中で生じたこのような遺憾な問題が 今後再び生じることがないよう適切な措置をとることを確認した。」とあるのがそれだと言う。
【問題点】
そんなバカな話があるか。
小泉さんが、ここが拉致の部分だと言うから分かるのであって、小泉さんの説明がなければ何の事か分らない。
拉致問題が北朝鮮による国家犯罪であったこと、金正日が謝罪したことを、どうして平壌宣言文に書き入れなかったのか。我国にとって、この部分が最も重要な問題ではないか。
一方、北朝鮮側の言い分については、2項で「戦前の日朝併合時代の問題については、相手方に多大の損害と苦痛を与えたとか、歴史の事実を謙虚に受け止めて反省とお詫びの気持ちを表明…云々」と一方的に、極めて具体的に書かされているではないか。
これ程 屈辱的な文書はない。
また、小泉さんが言う通り、金正日が拉致問題を認め、これが宣言文に書かれていると言うならば、北朝鮮は 平壌宣言に則り、拉致被害者全員(含 家族)を即刻帰国させ、速やかに原状回復をはじめ 適切な措置をとるべきではなかったか。
拉致被害者の家族が帰国するまでに、どれだけの期間を要したか。拉致問題に対する対応は不誠実極まりないではないか。
これでは、日朝平壌宣言違反行為は、今も続いていることになる。
この点から見ても、日朝平壌宣言は、既に北朝鮮側により、一方的に破られているのである。
拉致被害者の家族の帰国問題さえ外交カードに使ったではないか。
それにも拘わらず 今年5月22日、総理大臣自らが、25万トンの米支援と1,000万ドルの医薬品のお土産を持って、被害者の家族たちを迎えに行くという愚かさについては別に述べる。
(小泉さんが言う通り、北朝鮮が拉致を認め、謝罪したと言うのなら、北朝鮮政府高官が付添って 拉致被害者や家族を丁重に 日本に送り届けるのが常識だろう。)
- 日朝平壌宣言では、朝鮮半島の核問題の包括的な解決のため、関連するすべての国際的合意を遵守することを確認したことになっている。
【問題点】
北朝鮮は、国際的合意を遵守すると確認しながら、2001年の米朝枠組み合意に反し、核兵器の開発を既に進めていると言い出し、一方的にIAEA(国際原子力機関)による監視体制を排除したり、NPT(核拡散防止条約)から脱退し、今日の北朝鮮核開発問題に発展している。
この点からも、日朝平壌宣言は、当初から破られていたのである。北朝鮮は、初めから日朝宣言を真面目には考えていなかったことになる。
日朝平壌宣言を読んでみると、この時の首脳会談は、全て北朝鮮主導で行われたことは明白だ。
日朝平壌宣言の内容も、一方的に北朝鮮側に偏し、我国の国益に叶う部分はない。
無能な外務省の責任はもとより、小泉さんの外交資質が問われる外交文書だ。
小泉さんは、この日朝平壌宣言を高く評価しているようだが、我国にとっては有害無益だ。
先に述べたように、北朝鮮側は 2点に関して 既に日朝平壌宣言を破っているのだから、それを理由に、この宣言は反故にした方が 我国国益には合致する。
特に残念なのは、日朝平壌宣言でも分るように、まず日朝国交正常化ありきの小泉さんの姿勢である。
拉致問題は、日朝国交正常化の障害になっているから解決しなければならない、即ちあくまで日朝国交正常化が主目的で、拉致問題は副次的な問題に過ぎないという小泉さんの考え方には、多くの国民が反発している。
尚、去る11月9日から日朝実務者協議が開催された。今回は平壌で行われ、12日までの予定を2日間延長する等、 従来より かなり突っ込んだ聴き取り調査や協議が行われたと報道されているが、内容については未だ不明である(11月14日現在)。
しかし、拉致被害関係者や日本国民が受入れられるような内容とは とても考えられない。(2004.11.15)
次回は(第91回)
「小泉さんの北朝鮮政策を斬る〔U〕(対話と圧力とは言うけれど…)」(2004.12.01)
【出来事】
- 11月2日 プロ野球パ リーグに楽天参入が決まる(プロ野球オーナー会議で承認)
- 11月2日 アメリカ大統領選挙投票日 共和党のジョージ・ブッシュ大統領が民主党のジョン・ケリー上院議員を破り再選を果たす
- 11月3日 曽我ひとみさんの夫 チャールズ・ジェンキンス氏 司法取引が成立しているため軍法会議で禁固最高30日 不名誉除隊となる
- 11月9日 第3回日朝実務者協議(12日までの予定を14日まで延長) 於 平壌
- 11月10日 国籍不明の潜水艦が沖縄県・先島諸島周辺の日本領海を侵犯 政府は海上警備行動発令 (中国海軍の「漢(ハン)級」原子力潜水艦とみられる)
- 11月11日 パレスチナ解放機構(PLO)議長でパレスチナ自治政府議長ヤセル・アラファト氏死去
- 11月14日 天皇家長女 紀宮さま 黒田慶樹氏(東京都庁勤務)との婚約内定
- 11月14日 大相撲九州場所初日(福岡国際センター)
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