◇第91回◇
小泉さんの北朝鮮政策を斬る 〔U〕(対話と圧力とは言うけれど…)
去る11月9日から平壌で日朝実務者協議が行われた。
今回の協議は 4日間の予定が2日間延長され、相手から提供されたコンテナ7個分の資料をチャーター機で持ち帰るという異例なものであった。
北朝鮮が、これ程大量の資料を提供すること自体理解に苦しむのだが、何とか辻つまを合わせて この辺で拉致問題の幕を引かせようという強い意図の表れだろう。
今回も、北朝鮮のこれまでの不誠実な姿勢は一向に変わっていない。
小泉さんは、今回の日朝実務者協議について「北朝鮮の努力の跡はうかがえるが、まだ日本側として納得できる内容でない点もある。…」と述べている(11月15日)。これが総理大臣の発言かと思うと実に情けない。
「北朝鮮の努力の跡」とは、嘘の説明に何とか辻つまを合わせようと嘘の上塗りの努力の跡ではないか。
「日本側として納得できる内容でない点もある。」とは、納得できる点も多々あると言うことか。
今回持ち帰られた横田めぐみさんのものとされる遺骨が、もし仮に、本物だと証明されたら「ああそうですか、分りました」と言って納得するのだろうか。
それは、めぐみさんが死亡したと言う北朝鮮の説明が嘘でなかったというだけで、単に辻つまが合うか合わないかの問題に過ぎない。
多くの日本人を拉致し、殺しておいて(死亡した人は実質的には殺されたとみるべきだ)、これをどんなに説明しても納得する話ではないだろう。
小泉さんの政治姿勢のみならず、人間性まで疑われる発言だと思って聞いた。
拉致問題の存在を否定していた北朝鮮の金正日が、これを認め 謝罪したこと、一部の拉致被害者や家族が帰国できたことは、政府の外交努力の成果だとか、小泉さんのお陰だと言う人も居るかもしれないが、私はそうは思わない。
これまでの経緯を見ると、全ては 我国との国交正常化を望む北朝鮮の筋書き通りに運んでいる。
もし、日朝首脳会談によって北朝鮮が拉致を認め、本当に謝罪したというのなら、その後の北朝鮮側の対応は、これ程不誠実極まりないものにはならないはずだ。
拉致被害者やその家族の帰国等の原状回復は、即刻 無条件に行われるべきでもので、本来 交渉や協議事項ではないはずだ。
この点について外務省や小泉さんがどんな考えを持っているのか聞いてみたい程だ。
多分、北朝鮮側が、拉致被害者や家族の帰国など原状回復に応じようとしないのだから、対話で解決せざるを得ないと答えるだろう。
交渉や対話を否定する気はないが、それなら相手の不誠実極まりない姿勢に対して、なぜ経済制裁等の対抗措置をとらないのか。
2002年9月17日の第1回目の小泉、金正日首脳会談でどんなことが話されたのかは、我々は知る由もないが、多分小泉さんは、金正日に 我国の主張については、ほとんど話していないのではないか。
それは、前回述べた通り、北朝鮮側に偏した一方的な日朝平壌宣言を見ればよく分る。
予め計画された北朝鮮の筋書き通りに運んだとみて差し支えないだろう。
月日の経過とともに、日朝平壌宣言が禍根を残すものであることが、一層はっきりしてきた。
今年5月22日の2回目の小泉、金正日首脳会談については、事前に山崎拓前自民党副総裁、平沢勝栄代議士と北朝鮮側との接触があったようだが、小泉さんは言うべき事は ほとんど言っていないと思われる。
それは、会談時間の長さからも窺える。午前11時過ぎに始まり12時30分には終わっているから、約90分の会談だった。しかし、通訳を挟むので 実質会談はその半分、僅か40分しかなかったことになる。僅か40分でどれだけの話合いや議論ができるだろう。
我国としては、北朝鮮に要求したいこと、問い質したいこと等、言いたいことは山ほどある。
時間は、どれだけあっても足りない筈だ。それなのに僅か40分で会談を終えるとは…。
この時は、既に経済制裁を可能にする外為法も改正されていたし、万景峰号の自由入港を制限できる特定船舶入港禁止特別措置法の制定も決まっていた時期である (特定船舶入港禁止特別措置法は平成16年6月14日に成立)。
小泉さんは、この時こそ、北朝鮮が不誠実な対応をとり続けるなら、経済制裁や万景峰号の入港制限も辞さないと相手方に圧力をかけるべきだった。
それなのに 逆に、小泉さんは経済制裁は 発動しないと わざわざ公言してしまった。
(小泉さんは、平壌宣言が遵守されている限りと言う条件をつけていると弁解しているが、北朝鮮は拉致問題に不誠実な態度をとり続け、平壌宣言が 既に北朝鮮側によって破られていることは 前回述べた通りである。経済制裁は 発動しないとわざわざ公言する必要はない。)
しかも25万トンの米支援と1,000万ドルの医薬品提供を約束するとは…お陰で北朝鮮側としては、拉致被害者の子供達を人質に取って外交カードに使った甲斐があったと言うものだ。
当時、小泉さんの訪朝は、子供の使いと言われたが、私に言わせると子供の使いより悪い。なぜなら、子供の使いなら言わずもがなのことは 言わないだろうから。
小泉さんは今年5月、日朝首脳会談からの帰国早々、朝鮮総連全体会議に祝意を伝えるメッセージを送った。
朝鮮総連と言えば、北朝鮮工作員の対日工作活動や拉致犯罪に協力した者が多数いるところだ。
また、万景峰号等を利用して、北朝鮮本国への不正送金や麻薬 覚醒剤の密輸、非合法な機材機器の持ち出し等に関与した在日朝鮮人のことは周知の事実だ。
このような朝鮮総連を、もっと厳しく取り締まってもらいたいと言うのが国民の心情だと思う。
去る11月27日にも 朝鮮総連は 機関紙「朝鮮新報」で、「ら致外交との決別が平和と安定の道」という見出しで、日本は拉致外交と決別して平壌宣言を本格的に履行すべきだとか、対北朝鮮経済制裁論を非難する主張をしている。
こんなところに祝意のメッセージを送った小泉さんは 一体何を考えているのだろう、こんな人に総理大臣を任せていいのだろうかとさえ思う。
政府は対話と圧力とは言うが、これまでの小泉さんの姿勢を見ると、これほど不誠実な態度をとり続ける北朝鮮に対しても、圧力をかける気は全くないようだ。
自民、公明、民主の議員立法で、外為法改正案や特定船舶入港禁止特別措置法が成立しただけでも、圧力になると期待されたのに、「経済制裁は発動しない」と公言する小泉さんの言動は、北朝鮮から益々甘く見られ、国益を害するものと言わざるを得ない。
何のための外為法改正だったのか、何のための特定船舶入港禁止特別措置法だったのかと言いたい。
小泉さんの姿勢は、両法案の成立に寄せた国民の期待を真っ向から裏切るものだ。
去る10月26日、イラクで発生した武装組織による日本人人質殺害事件について、小泉総理は 「何の罪もない者の尊い命を奪った残虐、非道な行為に強い憤りを覚える」と強い調子で非難している。
しかし、多くの日本人を拉致した北朝鮮の犯罪行為に対し、「残虐、非道な行為に強い憤りを覚える」と言ったことがあるか。北朝鮮のテロに対しては、小泉さんも外務省も まことに生ぬるい。
身近な国内で起きたテロ、即ち我国国民が多数 北朝鮮によって拉致されるという残虐、非道な国家犯罪、主権侵害に対して、毅然として立ち向かう姿勢は 小泉さんには見られない。
それは、小泉さんの目標が北朝鮮との国交正常化の実現にあるからだろう。
拉致問題が未解決であっても、世論の反対がなければ、小泉さんは金正日と手を結びかねない。
北朝鮮は日本との国交正常化を強く望んでいるが、当面 我国にとっては 国交正常化のメリットは 何もない。
北朝鮮との国交正常化は、相互間に懸案事項がなくなってから行えばよいのであって、急ぐ必要は微塵もない。
私は、金正日の独裁政権が続く限り、北朝鮮との国交正常化はすべきでないと思う。
田中角栄が中国との国交締結で名を挙げたように、小泉純一郎が北朝鮮との国交正常化の実績を残したいという思いがあるとすれば、総理としては失格だ。
国民は十分監視する必要がある。
(2004.12.01)
次回は(第92回)
「2004年を顧みて」(2004.12.15)
【出来事】
- 11月15日 日朝実務者協議交渉団 横田めぐみさんのものと言われる遺骨とコンテナ7個分の資料等をチャーター機で持ち帰る
- 11月16日 中国原潜の日本領海侵犯事件 中国側が侵犯を認め遺憾の意を表明
- 11月17日 大関武双山が引退
- 11月17日 アジア太平洋経済協力会議(APEC)閣僚会議が開幕(17〜18日 首脳会議20〜21日) 於チリのサンティアゴ
- 11月28日 大相撲九州場所千秋楽 横綱朝青龍が13勝2敗で優勝
- 11月29日未明 北海道東部で震度5強の地震(M 7.1)
- 11月29日〜30日 ASEAN(東南アジア諸国連合)プラス3(日、中、韓)首脳会議 於ラオス・ビエンチャン
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